デイリーレポート 2023年4月17日

April 17, 2023

【前日の為替概況】ドル円、3 日ぶり反発 FRB 理事発言や期待インフレ率を受けてドル買い

14 日のニューヨーク外国為替市場でドル円は 3 営業日ぶりに反発。終値は 133.79 円と前営業日 NY 終 値(132.58 円)と比べて 1 円 21 銭程度のドル高水準だった。3 月米小売売上高や 3 月米輸入物価指数が 予想を大きく下回ったことが伝わると全般ドル売りが先行し一時 132.21 円付近まで下げたものの、日本 時間夕刻に付けた日通し安値 132.17 円がサポートとして働くと買い戻しが優勢に。ウォラー米連邦準備 理事会(FRB)理事が「インフレ率は依然として高すぎる」「金融政策はかなりの期間、市場の予想よりも 長い期間、引き締まった状態に維持される必要がある」と発言したこともドル買いを誘った。 米ミシガン大学が発表した 4 月消費者態度指数(速報値)が 63.5 と予想の 62.0 を上回り、併せて発表 した消費者の期待インフレ率が予想を上回ったことが伝わるとドル買いが加速。2 時前に一時 133.84 円 と日通し高値を更新した。

なお、ミシガン大が発表した消費者の期待インフレ率は 1 年先が 4.6%と前月の 3.6%から大幅に上昇 し、予想の 3.7%を大きく上回った。5 年先は 2.9%と市場予想通りの結果だった。 ユーロドルは 4 日ぶりに反落。終値は 1.0992 ドルと前営業日 NY 終値(1.1046 ドル)と比べて 0.0054 ドル程度のユーロ安水準だった。低調な米小売指標をきっかけにユーロ買い・ドル売りが先行すると一時 1.1073 ドル付近まで値を上げたものの、アジア時間に付けた約 1 年ぶりの高値 1.1076 ドルがレジスタン スとして意識されると失速した。ウォラーFRB 理事のタカ派的な発言やミシガン期待インフレ率の上振れ でドル買いが活発化すると一時 1.0972 ドルと日通し安値を更新した。

市場では「欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーからは利上げ継続の主張が相次いで伝わり、1 年ぶり のユーロ高水準を記録していただけに、週末を控えたポジション調整目的の売りが出た」との声が聞かれ た。ユーロ円は 7 日続伸。終値は 147.04 円と前営業日 NY 終値(146.46 円)と比べて 58 銭程度のユーロ 高水準。ドル円の上昇につれた買いが入り一時 147.16 円と昨年 10 月 31 日以来の高値を付けた。ただ、 ユーロドルの下落につれた売りも出たため上昇のスピードは緩やかだった。

【本日の東京為替見通し】ドル円の方向感は出にくい、米金利相場から日銀動向に注目変わるか

先週、米国から発表された 3 月消費者物価指数(CPI)、同月卸売物価指数(PPI)などは、軒並み市場 予想よりも弱い結果となった。米金利動向は、発表直後は金利が低下したものの、一日を通すと発表前の 水準まで戻している。為替市場関係者の中では、3 月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でのドット・プロ ットが、昨年末との変化がほぼなかったことで、米連邦準備理事会(FRB)が継続して利上げするのでは、 と判断する傾向もあった。しかしながら、CME グループが FF 金利先物の動向に基づき算出する「フェド ウォッチ」では、金融危機が起こった 3 月上旬から、すでに今年中旬に米金利はピークに達し、年末には 利下げに転じると予想されていた。そして、先月の弱い米経済指標の結果は、金利サイドからすると予想 通りの結果になったといえそうだ。また、FOMC が 3 月のドット・プロットを変更しなかったのは、立場 上「金融危機がさらに深刻化し、年後半から利下げに転じる」と予測を立てられなかったから、との声も あった。

このような状況下の中で、本日のドル円は、方向感が出にくい動きとなりそうだ。米金利動向がドット・ プロットではなく、フェドウォッチ通りの結果通りとなりそうなことで、ここから米金利が大きく振幅す るのが難しくなるのかもしれない。今後も米経済指標の結果次第で、多少は米金利が振れてドル円は上下 するだろうが、アジア時間では方向感は出にくそうだ。また、大きなトレンドを形成するのは米金利動向 から、本邦の金融政策に変わる可能性もあるだろう。

本邦の金融政策に関しては、注目されるのが来週 4 月 27-28 日に予定されている日銀政策決定会合にな る。植田日銀新総裁は、現行の大規模金融緩和策について「継続することが適当」と述べているが、この 見解に多少でも変化が生じた場合には要警戒となる。今週は、21 日に本邦の CPI が発表されることもあ り、今月末にかけては日銀政策決定会合を前に様々な憶測が市場を動意づけるようになりそうだ。

なお、週末にイエレン米財務長官が CNN「Fareed Zakaria GPS」のインタビューで「最近の銀行の破綻 を受けて、銀行はより慎重になる可能性が高く、融資をさらに引き締める可能性がある。FRB のさらなる 利上げの必要性を否定する可能性がある」と述べている。市場は現時点では、この発言への反応は限られ ているが、欧米市場では反応する可能性もあることで、注意を払いたい。

【本日の重要指標】

※時刻表示は日本時間

<国内>

特になし

<海外>

○21:30 ◇ 2 月対カナダ証券投資

○21:30 ◇ 2 月カナダ卸売売上高(予想:前月比▲1.6%)

○21:30 ◎ 4 月米ニューヨーク連銀製造業景気指数(予想:▲18.0)

○22:00 ◎ カンリフ・イングランド銀行(英中銀、BOE)副総裁、講演

○23:00 ◎ 4 月全米ホームビルダー協会(NAHB)住宅市場指数(予想:44)

○24:00 ◎ ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁、講演

○18 日 05:00 ◎ 2 月対米証券投資動向

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。

※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。

※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

【前日までの要人発言】

14 日 09:49 易綱・中国人民銀行(PBOC)総裁 「今年の中国の GDP 伸び率、5%程度と予想」 「中国経済は安定しつつ回復している、インフレは低水 準」

14 日 10:22 植田日銀総裁

「世界経済が厳しい不況になるとの見方は日銀の見通 しのベースラインではない」

「G20 で海外当局者との関係構築、ある程度の成果得ら れた」

「4 月決定会合への対応は、日本に帰国してからゆっくり 考えたい」

「G20 では、コア CPI は今年度後半に向けて 2%以下に 下がる見通し、物価目標の実現へ現在の金融緩和維持 する姿勢と説明」

「欧米の金融不安でいったん荒れた市場が沈静化した 状況というのは共通の認識だったと思う」

14 日 10:25 鈴木財務相

「G20 では、一連の金融危機への議論が有意義に行わ れた」

「G20 では、議長国インドはもともと成果文書発出の予 定なかった」

「成果文書よりも一堂に会すること重要」

「スリランカ債務救済では、中国にも参加して協議に加 わってほしい」

「G20 が機能不全に陥っているとは考えていない」

14 日 19:08 ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁 「ユーロ圏のインフレは低下し続ける見通し」 「現在の市場状況を注視」

14 日 19:12 ボスティック米アトランタ連銀総裁 「最近の動向は 1 回以上の利上げと矛盾しない」 「不必要な経済的ダメージを避けるため、経済、インフレ 経路を評価する必要」

「過去 1 年間の利上げの影響には時間がかかる可能 性」

4 日 21:45 グールズビー米シカゴ連銀総裁 「今回の小売売上高の数字で、政策金利のラグが見え てきたかもしれない」

「インフレ率は下がってきていると思う」

「政策決定会合で私がどうするかはまだコメントしたくな い、もう少しデータを精査したい」

「PPI と小売売上高の結果は、我々が正しい方向に進ん でいることを表している」

「5 月の会合まで、まだ何週間もある」

14 日 21:50 ウォラー米連邦準備理事会(FRB)理事 「インフレはまだ高すぎる、我々の仕事はまだ終わって いない」

「コアインフレはあまり改善されていない」

「金融政策はかなりの期間、引き締めを維持する必要」 「金利をさらに引き上げる必要」

15 日 00:45 シムカス・リトアニア中銀総裁 「5 月の利上げ幅はデータ次第」

「利上げ幅は 0.25%または 0.50%になる可能性」 「コアインフレは来月、またはその直後にピークに達する 可能性」

15 日 03:05 マックレム・カナダ銀行(中央銀行、BOC)総 裁

「量的引き締め(QT)は継続」

「緩和が必要な場合、QT はより早く終了する可能性」 「BOC が利下げを検討するのは時期尚早」 「BOC 当局者は潜在的な利上げの必要性について議論 した」

※時間は日本時間

〔日足一目均衡表分析〕

<ドル円=雲の下限や転換線付近で底堅さ示せるか見定め> 下影陽線引け。先週末は 132.17 円まで下落が先行した。 しかし、その前日 13 日の安値 132.02 円を割り込まず反発。 133 円後半まで上昇して週の取引を終えた。

ここからは、一目均衡表・雲の下限 132.57 円や、一目・ 転換線 132.35 円付近で底堅さを示すことができるか見定め る局面。雲を一時的に割り込んでも 133 円台への切り上がり が見込まれる転換線付近では下げ渋りそう。下回っても、先 週末安値や 13 日安値がサポートになるだろう

レジスタンス 2 135.11(3/15 高値)

レジスタンス 1 134.48(日足一目均衡表・雲の上限) 前日終値 133.79

サポート 1 132.02(4/13 安値)

<ユーロドル=売り示唆のトレンド系指標まだ見当たらず> 陰線引け。一時 1.1076 ドルと、昨年 4 月 1 日高値に面合 わせした。約 1 年ぶりの同水準に達してからは売りが優位。 1.1 ドル割れ水準へ押し下げられて週引けとなった。もう少 し下押しが進んだ場合に、上昇傾向の一目均衡表・転換線 1.0954 ドル前後で下げ渋ることができるか注目したい。高値

警戒感はあるものの、明確に売りを示唆するトレンド系テク

ニカル指標はまだ見当たらない。下振れても、まずは 1.08

ドル台で上昇中の 21 日移動平均線が支えとなるか。

レジスタンス 1 1.1076(4/14 高値)

前日終値 1.0992

サポート 1 1.0925(4/10-14 上昇幅の 61.8%押し)

<ユーロ円=高値圏での調整も想定しておきたい> 陽線引け。昨年 10 月 31 日以来の高値 147.16 円まで上昇 した。147 円台を維持して週を引ける底堅さを示したが、高 値警戒感もある。週明け 146.56 円前後へ上昇して推移して

いる 5 日移動平均線を下回って調整が進む展開も想定してお

きたい。14 日安値 146.24 円や 13 日安値 146.08 円前後まで

の下押しを視野に入れておくべきか。

レジスタンス 1 147.75(2022/10/31 高値)

前日終値 147.04

サポート 1 146.24(4/14 安値)

<豪ドル円=潮目が変化しやすい雲のねじれに差し掛かる> 下影小陰線引け。相場の潮目が変化しやすい一目均衡表・ 雲のねじれ部分に差し掛かっている。90.28 円前後で低下中 の 90 日移動平均線が目先の重し。同線をこなし、ねじれ部 分を突破して雲の上に抜けて上昇トレンドに乗れるかどう か注視したい。しくじった場合は、上昇が予想される一目均

衡表・転換線 88.89 円が支えとなるか。
レジスタンス 1 90.28(90 日移動平均線) 前日終値 89.76

サポート 1 88.89(日足一目均衡表・転換線)