デイリーレポート 2024年7月18日
July 18, 2024
【前日の為替概況】ドル円156.07円まで下落、河野デジタル相やトランプ前大統領の発言で
17日のニューヨーク外国為替市場でドル円は3営業日ぶりに反落。終値は156.20円と前営業日NY終 値(158.35円)と比べて2円15銭程度のドル安水準だった。米大統領選の共和党候補に指名されたトラ ンプ前大統領が通信社とのインタビューで「米国はドル高により大きな問題を抱えている」と述べ、足も とのドル高をけん制したほか、河野太郎デジタル相が円安是正のため、日銀に政策金利を引き上げるよう 求めたと伝わると、円買い・ドル売りが優勢となった。
また、ウィリアムズ米ニューヨーク連銀総裁が「今後数カ月以内に金利引き下げが正当化される可能性 がある」と述べたほか、ウォラー米連邦準備理事会(FRB)理事が「最近のデータで2%の物価目標達成 にさらに自信が持つことができた」「利下げが正当化される時期に近づいている」と発言したこともドル 売りを促し、4時過ぎには一時156.07円と6月12日以来の安値を付けた。
なお、FRBはこの日公表した米地区連銀経済報告(ベージュブック)で「米経済活動は大多数の地域で 小幅から控えめなペースで拡大を維持した」との認識を示した。また、今後6カ月の見通しについては「大 統領選や地政学的要因、インフレを巡る不確実性により活動が鈍化する」と予想した。
ユーロドルは続伸。終値は1.0939ドルと前営業日NY終値(1.0899ドル)と比べて0.0040ドル程度の ユーロ高水準だった。トランプ前米大統領が足もとのドル高をけん制したことを手掛かりに全般ドル売り が進行。FRB高官からハト派的な発言が相次いだこともドル売りを促し、22時30分過ぎに一時1.0948 ドルと3月14日以来約4カ月ぶりの高値を付けた。その後の下押しも1.0924ドル付近にとどまった。
ユーロ円は3日ぶりに反落。終値は170.88円と前営業日NY終値(172.59円)と比べて1円71銭程度 のユーロ安水準。河野デジタル相が日銀に利上げを求めたことで円買いが入ったほか、日米株価指数の軟 調推移がリスク回避の円買いを促した。2時前には一時170.71円と6月25日以来の安値を更新した。
ユーロ円以外のクロス円も軟調だった。ポンド円は203.03円、豪ドル円は104.98円、NZドル円は94.78 円、カナダドル円は114.02円、南アフリカ円は8.56円、トルコリラ円は4.71円まで値を下げた。
【本日の東京為替見通し】ドル円、日銀利上げ懸念とトランプ第2次政権でのドル安政策懸念で弱
含みか
本日の東京外国為替市場のドル円は、月末の日銀金融政策決定会合での利上げ警戒やトランプ第2次政 権でのドル安政策懸念などから軟調な展開が予想される。
昨日は、河野デジタル相が円安是正のため日本銀行に利上げを要求した、との報道を受けて、30-31日 の日銀金融政策決定会合での国債買い入れ減額や利上げ懸念が高まり、円高要因となった。
トランプ前大統領の銃撃事件を受けて、トランプ氏が11月の大統領選に勝利する可能性が高まったこ とで、減税や関税引き上げという公約が実施された場合、インフレ圧力が高まるとの見通しからトランプ トレード(ドル買い・米国債売り)への警戒感が高まりつつあった。しかし、トランプ前米大統領は「ト ランプノミクスは低金利と関税」と述べ、米国がドル高により「大きな問題を抱えている(bigcurrency problem)」と述べたことがドル売り要因となった。
7月16日、トランプ氏は、足元の外国為替相場に関し「対ドルでの円安や人民元安がはなはだしい」 と指摘して、米国の輸出企業にとってすさまじい負担だとの懸念を示した。その上で、米国製自動車の輸 入が進まず、対米貿易黒字を抱える日本に対して不作法だと不満を漏らした。
4月23日には、トランプ氏は、ドルが対円で34年ぶりの高値を付けたことについて、米国の製造業に とって「大惨事だ(disaster)」と批判していた。そして、円安・ドル高の進行により米企業がビジネスを 失い、外国での工場建設を余儀なくされると指摘し、こうした為替相場はバイデン大統領が事態を放置し ている証拠であり、日本や中国などの国々は今や米国をばらばらにする、と批判していた。
また、トランプ第2次政権が誕生した場合に、財務長官候補に挙がっているライトハイザー前通商代表 部(USTR)代表は、第1次政権の時に、「プラザ合意」のようなドルの切り下げを主張していたドル安論 者であり、今後もトランプ前大統領やライトハイザー前USTR代表の発言には注目しておきたい。
8時50分に発表される日本の6月貿易統計(通関ベース)では、6月の実需の円売り圧力と為替報告書 で監視リスト入りの要因になった対米貿易黒字を確認することになる。 実需の1-6月期の円売りとしては、投資信託を通じた家計の円売り(新NISA少額投資非課税制度)が 約6.1兆円となっており、貿易赤字が約4兆円前後なので、約10兆円規模となる。
投機筋の円売り圧力は、7月9日時点のIMM通貨先物の非商業(投機)部門取組の円の売り持ちポジシ ョン(182033枚×1250万円=約2.3兆円)に示されているように過去最大規模となっており、神田財務 官が円安の要因を投機的と指摘する根拠になっている。
また、日銀が公表する外国銀行在日支店の本支店勘定は円キャリートレード残高を示唆しているが、4 月時点で10.8兆円規模となっている。
すなわち、海外投機筋の円売り持ち残高は、公表されている金額だけで、約13兆円となっており、ド ルの下落トレンドが進めば、円買い圧力に転換するため注視していきたい。
10時30分の6月豪雇用統計では、失業率は4.0%と予想されており、5月と変わらず、新規雇用者数 は2.00万人の増加と予想されており、5月の+3.97万人からの増加幅の減少が見込まれている。5月のよ うに常勤雇用者が増えていた場合は、インフレ傾向が続いていることで、8月5-6日の豪準備銀行(RBA) 理事会で利上げに舵を切る可能性もあるため、要注目となる。
【本日の重要指標】
<国内> ○08:50 ◎ 6 月貿易統計(通関ベース、予想:季節調整前2400 億円の赤字、季節調整済8267 億円の赤字)
<海外>
○10:30 ◎ 6 月豪雇用統計(予想:失業率4.0%/新規雇用者数2.00 万人)
○15:00 ◎ 6 月英雇用統計(失業率/失業保険申請件数推移)
○15:00 ◎ 3-5 月英失業率(ILO 方式、予想:4.4%)
○18:00 ◇ 5 月ユーロ圏建設支出
○21:15 ☆ 欧州中央銀行(ECB)定例理事会、終了後政策金利発表(予想:4.25%で据え置き)
○21:30 ◎ 7 月米フィラデルフィア連銀製造業景気指数(予想:2.9)
○21:30 ◎ 前週分の米新規失業保険申請件数/失業保険継続受給者数(予想:23.0 万件/185.5 万人)
○21:45 ☆ ラガルドECB 総裁、定例記者会見
○未定 ☆ 南アフリカ準備銀行(SARB)、政策金利発表(予想:8.25%で据え置き)
○23:00 ◎ 6 月米景気先行指標総合指数(予想:前月比▲0.3%)
○19 日02:45 ◎ ローガン米ダラス連銀総裁、あいさつ
○19 日05:00 ◎ 5 月対米証券投資動向
○欧州連合(EU)議会、欧州委員長の再任採決
○トランプ前米大統領、米大統領選候補者指名受諾演説
※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。
【前日までの要人発言】
17日06:13トランプ前米大統領
「パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長を解任する予 定はない」
「トランプノミクスは低金利と関税」
「FRBは11月の選挙前に金利を引き下げるべきではな い」
17日09:05アジア開発銀行(ADB)
「2024年のアジア経済成長率見通しを4.9%から5.0%に 上方修正」
「2024年・2025年の中国経済成長見通しはいずれも据 え置き」
17日17:27神田財務官
「投機による過度な変動あれば、適切に対応していくし かない」
17日17:27ウィリアムズ米ニューヨーク連銀総裁
「今後数カ月以内に金利引き下げが正当化される可能 性がある」
「インフレ率を2%に戻すのはこれまで以上に困難になる だろうという懸念に反論」
「過去3カ月のインフレデータは我々が求めているディス インフレ傾向に近づいている」
17日22:19バーキン米リッチモンド連銀総裁
「消費者支出が依然として堅調であることは注目に値す る」
「企業は従業員の解雇に消極的であり、一部の業界で は依然として労働力が不足している」
「前四半期のインフレ率は低下した」
17日22:35ウォラー米連邦準備理事会(FRB)理事
「データが不均衡な場合、近い将来の利下げはより不確 実」
「シナリオではそう遠くない将来に利下げが行われる可 能性がある」
「6月のCPIデータは2カ月連続で非常に良いニュース となった」
「今後2カ月、データを注視する」
「最近のデータで2%の物価目標達成にさらに自信が持 つことができた」
「利下げが正当化される時期に近づいている」
「情報にはもう少し証拠が必要。進展は続いている」
18日03:00米地区連銀経済報告(ベージュブック)
「米経済活動は大半の地区で緩やかな成長が続いた」
「7地区がある程度の成長を報告した一方、5地区は横 ばいまたは減速を報告」
「賃金はほとんどの地区で引き続き緩やかなペースで増 加し、物価は概して小幅に上昇した」
「ほとんどの地区で、消費者ローンや企業ローンの需要 が低迷した」
「住宅および商業用不動産市場に関する報告はまちま ちだった」
「今後の経済見通しは、選挙、国内政策、地政学的紛争、 インフレをめぐる不確実性により、今後6カ月間の成長 は鈍化すると予想されている」
「全体として、雇用は直近の報告期間にわずかなペース で増加した」
「いくつかの地区は、新規受注の減速により製造業の雇 用が減少したと報告」
「ほとんどの地区で賃金は緩やかなペースで増加した」
「ただし、いくつかの地区は賃金の伸びがいくらか鈍化し たと報告」
「物価は全体的に緩やかなペースで上昇した」
「いくつかの地区ではわずかな上昇にとどまった」
「ほとんどの地区は投入コストが安定し始めていると指 摘したが、アトランタ地区は銅や電気製品などの製品が この期間に顕著な上昇を見せていると指摘」
※時間は日本時間
【日足一目均衡表分析】
<ドル円=7/15 安値を抵抗に戻り売りスタンス>
大陰線引け。転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線
を下回り、雲の上で引けているものの、売りシグナルが優勢
な展開となっている。抱き線で転換線を下回って引けている
ことで続落の可能性が示唆されている。
本日は15 日の安値を抵抗に戻り売りスタンスで臨み、同
水準を上抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス2 158.94(日足一目均衡表・転換線)
レジスタンス1 157.19(7/15 安値)
前日終値 156.20
サポート1 155.83(日足一目均衡表・雲の上限)
サポート2 155.49(日足一目均衡表・雲の下限)
<ユーロドル=転換線を支持に押し目買いスタンス>
陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を
上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買いシ
グナルが点灯中。2 手連続陽線で依然として転換線を上回っ
て引けており続伸の可能性が示唆されている。
本日は転換線を支持に押し目買いスタンスで臨み、同線を
下抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス1 1.0981(3/8 高値)
前日終値 1.0939
サポート1 1.0875(日足一目均衡表・転換線)
<ユーロ円=7/17 高値を抵抗に戻り売りスタンス>
大陰線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線
を上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買い
シグナルが点灯中。しかし、抱き線で反落して転換線を下回
って引けていることで続落の可能性が示唆されている。
本日は17 日の高値を抵抗に戻り売りスタンスで臨み、同
水準を上抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス1 205.99(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 205.45
サポート1 203.52(日足一目均衡表・基準線)
<豪ドル円=基準線を抵抗に戻り売りスタンス>
大陰線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線
を上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買い
シグナルが点灯している。しかし、5 手連続陰線で転換線を
下回って引けていることで続落の可能性が示唆されている。
本日は基準線を抵抗に戻り売りスタンスで臨み、同線を上
抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス1 106.48(日足一目均衡表・基準線)
前日終値 105.11
サポート1 103.56(日足一目均衡表・雲の上限)