デイリーレポート 2023年6月19日
June 19, 2023
【前日の為替概況】日銀の金融緩和長期化で円は全面安 対ドル 141.92 円、対ユーロ 155.26 円
16 日のニューヨーク外国為替市場でドル円は続伸。終値は 141.82 円と前営業日 NY 終値(140.29 円) と比べて 1 円 53 銭程度のドル高水準だった。日銀が今日まで開いた金融政策決定会合で、現行の大規模 な金融緩和策の維持を決めたほか、植田和男日銀総裁が会見で「2%物価安定目標の達成にはなお時間が かかる」「経済情勢などに応じ、機動的に対応しつつ粘り強く緩和継続」と述べ、金融緩和を継続してい く考えを示したため、NY 市場に入っても円安の流れが継続した。
米ミシガン大学が発表した 6 月消費者態度指数(速報値)が 63.9 と予想の 60.0 を上回ったことや、米 連邦準備理事会(FRB)高官のタカ派的な発言を手掛かりにドル買いも進み、5 時 30 分過ぎには一時 141.92 円と昨年 11 月以来 7 カ月ぶりの高値を更新した。
なお、ウォラーFRB 理事は「インフレ低下に向けた進展は遅く、幾分の追加引き締めが必要となる可能 性」と述べたほか、バーキン米リッチモンド連銀総裁は「インフレ鈍化がなければ、さらなる利上げを容 認」などと語った。
ユーロドルは 5 営業日ぶりに小反落。終値は 1.0937 ドルと前営業日 NY 終値(1.0945 ドル)と比べて 0.0008 ドル程度のユーロ安水準だった。欧州中央銀行(ECB)の利上げ継続を見込んだユーロ買い・ドル 売りが先行すると一時 1.0971 ドルと 5 月 11 日以来約 1 カ月ぶりの高値を付けたものの、予想を上回る米 消費者信頼感指数をきっかけに米長期金利が上昇すると一転下落した。24 時前には 1.0918 ドルと日通し 安値を付けた。
もっとも、引けにかけては下げ渋った。ユーロ円の上昇につれた買いなどが入り、1.0946 ドル付近ま で下げ幅を縮める場面があった。
ユーロ円は 5 日続伸。終値は 155.22 円と前営業日 NY 終値(153.55 円)と比べて 1 円 67 銭程度のユー ロ高水準。ECB は利上げを継続するとの見方が強まる一方、日銀は大規模な金融緩和策を維持しており、 日欧金融政策の方向性の違いに着目した円売り・ユーロ買いが進んだ。取引終了間際に一時 155.26 円と 2008 年 9 月以来 15 年ぶりの高値を付けた。
ユーロ円以外のクロス円も堅調だった。ポンド円は一時 182.05 円、豪ドル円は 97.58 円、NZ ドル円は 88.56 円、カナダドル円は 107.66 円、スイスフラン円は 158.81 円、メキシコペソ円は 8.33 円まで値を 上げた。
【本日の東京為替見通し】ドル円、ドル売り・円買い介入の可能性に要警戒か
本日の東京外国為替市場のドル円は、米連邦準備理事会(FRB)による年内 2 回の利上げ示唆と日銀の 大規模金融緩和の維持見通しという日米金融政策の乖離から底堅い展開が予想される。しかしながら、昨 年 9 月 22 日の再現の可能性には警戒しておきたい。
2022 年 9 月 22 日、米連邦公開市場委員会(FOMC)の後に開催された日銀金融政策決定会合で大規模金 融緩和の維持が決定された。ドル円は 145.90 円まで上昇し、ボリンジャー・バンド+2σの 146.12 円に迫 っていた時、本邦通貨当局がボラティリティー「過度な変動」抑制のためにドル売り・円買い介入を断行 した。本日のドル円のボリンジャー・バンド+2σは 140.87 円付近に位置しており、昨日、松野官房長官 が「為替市場の動向をしっかりと注視。必要があれば適切に対応していく考えに変わりはない」と述べて いることで警戒しておきたい。
昨日発表された日本の 5 月貿易赤字は 1 兆 3725 億円となり、1-5 月の合計赤字幅は 6 兆 9899 億円で、 過去最高を記録した 2022 年同時期の 6 兆 5968 億円の赤字を上回り、実需の円売り圧力の強さが確認され たことも、ドル円の下値を支える要因となっている。
ドル円のテクニカル分析では、140.93 円と 138.45 円を底辺とする「三角保ち合い」を上抜けており、 7 月 FOMC での利上げ観測や日銀会合での大規模金融緩和策の継続観測を背景にした上昇トレンドの再開 を示唆している。
ドル円の上値の目処は以下の通り。 ・142.51 円:151.95 円から 127.23 円までの下落幅の 61.8%戻し ・142.48 円;昨年 11 月 11 日の高値 ・142.21 円:三角保ち合い(底辺 2.48 円幅:140.93 円~138.45 円)
FOMC の政策金利見通し(ドット・チャート)では、2023 年末の予想中央値が 5.6%(※FF 金利 5.50-75%) へ引き上げられたことで、年内残り 4 回の FOMC 会合の内、2 回で 0.25%の利上げが示された。昨日のド ル円は、米 10 年債利回りが 3.84%台へ上昇したことで、一時 141.50 円まで上昇したものの、米 10 年債 利回りの 3.7%台への低下で 140 円台前半まで反落した。
「CMEグループ」が FF 金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」では、7 月 FOMC で 5.25-50%へ 利上げ、そして、9 月、11 月、12 月 FOMC では据え置き確率が高まっており、年内 1 回の利上げだけを示 唆している。
すなわち、パウエル FRB 議長が「過去 2 年、FOMC のインフレ予測は外れていた」と述べていたように、 市場は年内 2 回の利上げを信じておらず、米 CPI や PPI の下振れにより 1 回の利上げに留まると見越して いる。FRB は、2021 年までは「インフレ高進は一時的」との見立てから金融緩和策を続けるというミスを 犯し、2022 年から 2023 年にかけて 10 回の利上げによりインフレを抑制しつつあるものの、信用収縮を 見過ごすというミスを犯しつつあることを市場は見透かしているのかもしれない。
5 月の消費者物価指数(CPI)が前年比+4.0%まで低下していた米国の金利体系は、FF 金利が 5.00-25%、 2 年債利回りが 4.6%台、10 年債利回りが 3.7%台となっており、リセッション(景気後退)による利下 げを示唆しており、ドット・チャートが示している 2024 年利下げ見通しと整合的となっている。」
【本日の重要指標】
※時刻表示は日本時間
<国内>
特になし
<海外>
○17:00 ◎ シムカス・リトアニア中銀総裁、講演
○20:00 ◎ レーン欧州中央銀行(ECB)専務理事兼チーフ・エコノミスト、講演
○20:40 ◎ シュナーベル ECB 専務理事、講演
○21:30 ◇ 5 月カナダ鉱工業製品価格
○21:30 ◇ 5 月カナダ原料価格指数
○22:00 ◎ ビルロワドガロー仏中銀総裁、講演
○23:00 ◎ 6 月全米ホームビルダー協会(NAHB)住宅市場指数(予想:51)
○20 日 03:00 ◎ デギンドス ECB 副総裁、講演
○米国(ジューンティーンス独立記念日の振替休日)、休場
※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。
【前日までの要人発言】
15 日 11:06 松野官房長官
「為替はファンダメンタルズを反映して動くことが重要」
「為替市場の動向をしっかりと注視」
「必要があれば適切に対応していく考えに変わりはない」
15 日 21:23 欧州中央銀行(ECB)声明
「ECB のインフレ予測は 2023 年 5.4%、2024 年 3.0%、2025 年 2.2%」
「GDP 予測は 2023 年に 0.9%、2024 年に 1.5%、2025年に 1.6%の経済成長を見込んでいる」
「金利を十分に景気抑制的な水準にすることを確実にする」
「PEPP の再投資は少なくとも 2024 年末まで継続する」
「高すぎるインフレが長く続いている」
「物価上昇の基調を示す指標は依然として強いものの、一部には軟化の兆しも見られる」
「インフレ率が 2%の中期目標に適時に戻ることを確実にすることを決意」
15 日 21:56 ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁
「成長は年後半に強まる公算」
「基調的な価格圧力は依然強い」
「成長とインフレの見通しは極めて不確実」
「経済はここ数カ月停滞している」
「長期的なインフレ期待は警戒が必要」
「賃金の上昇がインフレ高の大きな要因に」
「今後もデータに基づいてアプローチ」
「労働市場は依然として強い」
「ECB、利上げでまだやるべきことがある」
「7 月に利上げの公算が極めて大きい」
「停止は考えていない」
「ターミナルレートについてはコメントしたくない」
「ECB はインフレ見通しに満足していない」
※時間は日本時間
【日足一目均衡表分析】
<ドル円=転換線を支持に押し目買いスタンス>
大陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線
を上回り、雲の上で引けており、三役好転の強い買いシグナ
ルが点灯中。昨年 11 月以来の 142 円台に迫った。2 手連続陽
線で転換線を大幅に上回って引けており続伸の可能性が示
唆されている。
本日は上昇中の転換線を支持に押し目買いスタンスで臨
み、同線を下抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス 2 145.18(2022/11/9 安値)
レジスタンス 1 142.48(2022/11/11 高値)
前日終値 141.82
サポート 1 140.34(日足一目均衡表・転換線)
サポート 2 139.85(6/16 安値)
<ユーロドル=雲上限を念頭、押し目買いスタンスは継続>
小陰線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線
を上回り、雲の中で引けているものの、買いシグナルが優勢
な展開となっている。雲の上限を上回った後、上抜けに失敗
して孕み線で反落したものの、転換線を上回って引けており
反発の可能性が示唆されている。
本日は、雲の上限 1.0966 ドルを念頭に置き、転換線を支
持に押し目買いスタンスで臨み、同線を下抜けた場合は手仕
舞い。
レジスタンス 1 1.1091(5/4 高値)
前日終値 1.0937
サポート 1 1.0820(日足一目均衡表・転換線)
<ユーロ円=6/15 高値を支持に押し目買い継続>
大陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線
を上回り、雲の上で引けており、三役好転の強い買いシグナ
ルが点灯中。5 手連続陽線で 5 円以上の上げ幅を記録。転換
線を大きく上回って引けており続伸の可能性が示唆されて
いる。
本日は、15 日の高値を支持に押し目買いスタンスで臨み、
同水準を下抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス 1 156.69(ピポット・レジスタンス 2)
前日終値 155.22
サポート 1 153.69(6/15 高値)
<豪ドル円=9 手連続の陽線、6/16 安値を支持に押し目買い>
陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を
上回り、雲の上で引けており、三役好転の強い買いシグナル
が点灯中。9 手連続陽線で転換線を上回って引けていること
で続伸の可能性が示唆されている。
本日は、16 日安値を支持に押し目買いスタンスで臨み、同
水準を下抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス 1 98.46(ピポット・レジスタンス 2)
前日終値 97.56
サポート 1 96.24(6/16 安値)