ウィークリーレポート 2024年7月26日

週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円)

July 26, 2024

日銀会合への警戒感一段と高まる

◆円、日銀の金融政策発表に注目

◆ドル、FOMC 以外にも米重要指標が目白押し

◆ユーロ、最新のインフレ指標に注目

予想レンジ

ドル円 149.50-157.00 円

ユーロドル 1.0650-1.1000 ドル

7 月 29 日週の展望

ドル円は、日本と米国の金融政策発表を控えて荒い値動きとなることが想定される。特に注目 されるのが 30-31 日の日銀金融政策決定会合。17 日には河野デジタル相が「円安是正のため、日 銀に利上げするように要求したと発言した」と伝わったことがきっかけとなり、日銀の早期利上 げ観測が急速に高まった。河野氏はその後「日銀に直接利上げを求めたわけではない」と火消し に走ったものの、思惑は拭えないまま。さらには、茂木自民党幹事長が「金融政策を正常化させ る方向性を明確にすべきだ」と異例の発言。これにより、日本の金融政策が転換期を迎えたとの 見方から海外ヘッジファンドを中心にこれまで積み上げてきた円キャリートレードを巻き戻す動 きが活発化している。

日銀が実際に来週の会合で利上げを決定した場合、円相場の行方は植田日銀総裁の記者会見で の発言次第になるだろう。今後も積極的に正常化へ向けた姿勢を示せばドル円の一段安が見込ま れる一方で、利上げに慎重な態度を見せれば一転して反発もあり得る。また、仮に利上げが見送 られた場合には、すでに今週、利上げを織り込む動きを急速に見せていることもあり、ドル円が 一転して急騰する可能性も考慮しておきたい。いずれにしても、日銀会合後は円相場が荒い値動 きとなることは確実だろう。

また、米連邦公開市場委員会(FOMC)では政策金利の据え置きが予想されている。次回 9 月会 合では利下げが完全に織り込まれており、今回の声明ではハト派色の強い内容となることが想定 される。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が記者会見で次回の利下げについて示唆するかど うかが注目となりそうだ。なお、FOMC の他にも米国では、30 日に 6 月 JOLTS 求人件数や 7 月消費 者信頼感指数、31 日に 7 月 ADP 雇用統計、8 月 1 日に 7 月 ISM 製造業景況指数、8 月 2 日には 7 月雇用統計など、重要指標が目白押しとなっている。

ユーロドルは、ドル相場に振らされながらも 7 月ユーロ圏消費者物価指数(HICP)速報値に注 目したい。先日の欧州中央銀行(ECB)理事会では「金融政策は今後のデータ次第」が強調された ため、最新のインフレ指標で手掛かりを見出したいところ。ただ、来週は重要な米指標が相次い で発表されるため、基本的にはドルの動きが大きく影響を与えそうだ。

7 月 22 日週の回顧

ドル円は日銀の早期利上げ観測の高まりを背景に週明けから円が全面高の展開となり、週後半 には一時 151.94 円と 5 月 3 日以来の安値まで売り込まれた。一方、急ピッチで下げた反動から一 巡後は 154 円台まで反発している。ユーロドルは世界的な株安を受けてリスクオフムードが高ま るなか一時 1.0826 ドルまで下げたが、円相場が主導したため大きな方向感は出なかった。(了)

週間展望・回顧(豪ドル、南ア・ランド)

July 26, 2024

豪ドル、日米金融政策に大きく左右

◆豪ドル、日米金融政策に大きく左右

◆豪ドル、物価統計に注目

◆ZAR、6 月 CPI は 6 カ月ぶりの水準まで伸び鈍化

予想レンジ

豪ドル円 97.00-104.00 円

南ア・ランド円 8.00-8.60 円

7 月 29 日週の展望

豪ドルは荒い値動きに注意が必要となりそうだ。30-31 日に日米の金融政策決定会合が控えて いるが、市場では 9 月米連邦公開市場委員会(FOMC)からの利下げ開始をほぼ織り込んでいるほ か、日銀については政府与党から利上げを求める声が相次いで伝わっており、日米の金融政策が 期待通り、もしくは期待に反する結果となった場合のどちらとなっても、円・ドル相場は大きく 動意づくことが予想される。豪ドルも対ドル・対円でともに振らされる可能性が高く、ポジショ ン管理を徹底する必要があるだろう。

特に対円ではこれまで円売りが続いた反動による調整が急ピッチで進み、11 日につけた年初来 高値 109.37 円からはすでに 10 円超の調整が入っている。日銀の追加利上げ観測などを手掛かり にした円買いも調整を後押しした面があるため、日銀金融政策決定会合を通過すると再び相場展 開が大きく変化する可能性もありそうだ。

また、来週は豪州の経済指標にも注目。31 日に 6 月および 4-6 月期の消費者物価指数(CPI)、 8 月 2 日には 4-6 月期の卸売物価指数(PPI)が予定されている。豪州では足もとでインフレ再加 速の兆候が見られており、5 月の CPI は前年比 4.0%の上昇と昨年 11 月以来の高水準を記録。豪 準備銀行(RBA)のインフレ目標(2-3%)から遠ざかりつつある。RBA は前回の理事会でも利上 げについて議論していたが、金利先物市場では利上げを織り込む動きはまだ進んでいない。来週 の物価統計がさらにインフレ加速を示唆するような結果となれば、豪ドル相場にも相応のインパ クトを与えるだろう。なお、その他では 30 日に 6 月住宅建設許可件数、31 日に 6 月小売売上高、 8 月 1 日に 4-6 月期輸入物価指数や 6 月貿易収支の発表が予定されている。

南アフリカ・ランド(ZAR)はさえない動きとなりそうだ。豪ドルと同じく日米の金融政策をに らみながらの展開となりそうだ。今週に公表された 6 月 CPI は前年比 5.1%の上昇となり、6 カ月 ぶりの水準まで鈍化。市場では 9 月 19 日に予定されている南アフリカ準備銀行(SARB)の次回金 融政策決定委員会(MPC)で利下げ転換を予想する向きも増え始めた。SARB の金融緩和は景気低 迷に悩む南アフリカにとってプラスとの見方もあるが、現在の為替市場の流れを考慮すれば追加 利上げ期待の高まる日銀との金利差縮小を意識した円買い・ZAR 売り圧力をより意識しておくべ きだろう。

7 月 22 日週の回顧

豪ドルは対円を中心に売り優位。週明けからポジション解消目的の円買いが目立ったほか、日 銀の追加利上げ観測も円買い・豪ドル売りを促した。中国人民銀行(中央銀行)が予想外の金利 引き下げを決定するなど、中国経済の低迷に対する懸念が生じたことも同国と資源貿易関係の深 い豪ドルの重しとなり、豪ドル円は 4 月 22 日以来の安値となる 99.22 円まで下押し。ZAR も円全 面高の流れに沿って、対円では一時 6 月 7 日以来の安値を更新した。(了)

週間展望・回顧(ポンド、加ドル)

July 26, 2024

英中銀、据え置きも僅差の可能性

◆日米の金融政策にまず注目

◆ポンド、英中銀 MPC は据え置きも僅差の可能性

◆加ドル、中銀の追加利下げ示唆受け上値の重い展開

予想レンジ

ポンド円 195.50.00-200.50 円

加ドル円 109.50-113.50 円

7 月 29 日週の展望

ポンドと加ドルともに、31 日に公表される日米の金融政策にまず注目。特に今回は、日銀金融 政策決定会合と植田日銀総裁の定例会見がいつも以上に材料視されそうだ。というのも今週、「日 銀の金融正常化」に対する観測の高まりを受け、溜まっていた円キャリートレードポジションの 巻き戻しが一気に進んだからだ。与党・自民党幹部から日銀への圧力とも受けとれる発言や、「追 加利上げ検討」との一部報道が思惑を高めた。ただ、日銀会合がタカ派一色になるとは考えづら く、追加利上げを決定した場合でも小幅に留まる可能性がある。正常化に向けてはまだ慎重とい う姿勢であると市場が認識した場合は、円売り再燃という展開となってもおかしくない。また、 米連邦公開市場委員会(FOMC)に関しては、次回 9 月に利下げするための地ならし的な会合とな りそうだ。声明内容を変えてくることが予想され、タカ派的な文言が削除される可能性が高い。

8 月 1 日には英中銀が金融政策委員会(MPC)の結果を公表する。6 月消費者物価指数(CPI)の 結果から、市場では早期利下げ観測が一時大きく後退した。しかしその後、平均賃金の鈍化や労 働市場の冷え込みが確認されると再び緩和期待が浮上。前回の議事要旨では、複数の MPC 委員に とって利下げ見送りの決定は「微妙なバランス」と指摘されており、今回の投票結果は前回の 7 対 2 より僅差となる可能性もある。足もとの短期金融市場では据え置きがやや優勢となっている。 加ドルは、カナダ金利先安観の高まりが重しとなりそうだ。カナダ中銀(BOC)は 24 日、政策 金利を市場予想通り 0.25%引き下げて 4.50%とした。利下げは 2 会合連続。声明では、「重視す るコア指数が数カ月間 3%を下回っている」ことを指摘。その上で、「CPI を構成する複数品目の 物価上昇度合いは過去の平均水準に近づいている」と述べた。「インフレが来年後半に目標の 2% に向け持続的に低下する」という予測を強調。マックレム BOC 総裁も「インフレを目標に回帰さ せる材料は整っているとの確信を強めている」と言及したほか、「インフレが予想通りに緩和すれ ば、追加利下げが可能」との見解を示している。市場では、BOC が今年残り 3 会合(9、10、12 月) で 2 回の 0.25%利下げを織り込みつつある。今後もカナダのインフレ指標を精査しながらの判断 となるだろうが、経済成長見通しも下方修正したなかで金利は上がりづらいままとなる可能性が 高い。加ドルの上値も限られそうだ。

7 月 22 日週の回顧

ポンド円は 203 円台から下落し始め、5 月半ば以来の 196 円割れまで売り込まれた。日銀会合 への警戒感から全般円高が進んだ流れに沿った。軟調な株式市場もリスク回避の円買いを誘って いる。ポンドドルは 1.29 ドル台で伸び悩み、1.28 ドル半ばまで弱含んだ。 加ドル円は 114 円後半から約 4 カ月ぶりに一時 110 円を下回った。キャリートレード解消の動 きが進んだことや、BOC のハト派スタンスが加ドル売り圧力を高めた。加ドルは対ドルでは、1.38 加ドル半ばまで加ドル売りが進行した。(了)