デイリーレポート 2023年6月21日
June 21, 2023
【前日の為替概況】ドル円 141.21 円まで下落、NY 株安と 10 年物国債利回りの低下で
20 日のニューヨーク外国為替市場でドル円は 4 営業日ぶりに反落。終値は 141.47 円と前営業日 NY 終 値(141.98 円)と比べて 51 銭程度のドル安水準だった。5 月米住宅着工件数や 5 月米建設許可件数が予 想を上回ったことが伝わると 141.75 円付近まで買い戻される場面もあったが、戻りは鈍かった。米長期 金利の低下に伴う円買い・ドル売りが入ったほか、米国株安に伴うクロス円の下落につれた売りが出て一 時 141.21 円と日通し安値を更新した。
市場では「明日のパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の米下院金融サービス委員会での議会証言を 前に、ポジション調整目的の売りが出た」との声も聞かれた。
ユーロドルは小幅ながら 3 日続落。終値は 1.0918 ドルと前営業日 NY 終値(1.0921 ドル)と比べて 0.0003 ドル程度のユーロ安水準だった。欧州債利回りの低下などを手掛かりにユーロ売り・ドル買いが先行。米 国株相場の下落を背景にリスク・オフのドル買いも入り一時 1.0893 ドルと日通し安値を更新した。ただ、 米長期金利の低下に伴うユーロ買い・ドル売りが入ると 1.0919 ドル付近まで下げ渋った。
オセアニア通貨は軟調だった。ダウ平均が一時 380 ドル超下落するなど、米株式相場が軟調に推移する とリスクセンチメントに敏感なオセアニア通貨に売りが出た。豪ドル米ドルは 0.6753 米ドル、NZ ドル米 ドルは 0.6134 米ドルまで下げ、豪ドル円は 95.57 円、NZ ドル円は 86.86 円と日通し安値を更新した。
ユーロ円は続落。終値は 154.44 円と前営業日 NY 終値(155.09 円)と比べて 65 銭程度のユーロ安水準。 米株価の下落を背景にリスク回避の円買い・ユーロ売りが入ると、一時 154.05 円と本日安値を付けた。
【本日の東京為替見通し】ドル円、上値重い展開か 本日から FRB 議長の議会証言控えて
本日の東京外国為替市場のドル円は、本日と明日に予定されているパウエル FRB 議長の議会証言を控え て米 10 年債利回りが 3.7%台に低下していることで、上値が重い展開が予想される。
ドル円は昨日 142.25 円まで続伸し、三角保ち合いの最小上値目標値である 142.21 円を上回り、昨年 11 月 21 日の高値に面合わせした。この上の抵抗水準は、昨年 11 月 11 日の高値 142.48 円、151.95 円(2022 年 10 月 21 日高値)から 127.23 円(2023 年 1 月 16 日安値)までの下落幅のフィボナッチ・リトレース メント 61.8%戻しの 142.51 円が目安となっている。
本邦通貨当局は、昨年 9 月と 10 月にボラティリティー(過度な変動)を抑制するという名目で、ボリ ンジャー・バンド+2σ付近でドル売り・円買い介入を断行しており、本日(※+2σは 141.94 円付近)も 引き続き警戒していくことになる。昨日の 142 円台では、鈴木財務相が「為替動向を注視。必要であれば 適切に対応」と述べ、西村経産相が「過度な変動・投機的な動きはしっかりと注視」と述べ、「注視」の 段階に留まっている。本邦通貨当局がドル売り・円買い介入に踏み切る場合は、「断固たる措置」という 警告が発せられるため、鈴木財務相や神田財務官の発言内容を見極めつつ、「神田シーリング」を探って いくことになる。
パウエル FRB 議長は、本日、米下院金融サービス委員会で金融政策に関する半期に一度の証言を行い、 金利の道筋を巡る米連邦準備理事会(FRB)と市場の乖離を明確化することになる。注目ポイントは、ド ット・プロット(金利予測分布図)が示唆する年内 2 回(0.25%x2)の利上げ見通しと「フェドウオッ チ」が示唆する 7 月 FOMC での 5.25-50%へ利上げのみの乖離に対する見解となる。
米国 5 月の消費者物価指数(CPI)は前年比+4.0%まで伸び率が鈍化しているが、前月比+0.1%が 12 月まで続いたと仮定した場合、12 月の CPI は前年比+2.2%まで低下していく。ドット・プロットが 2023 年末の FF 金利の予想中央値を 5.60%(※FF 金利:5.50-75%)まで引き上げているにも関わらず、米 2 年債利回りは 4.7%弱、米 10 年債利回りは 3.7%強で低迷している。市場は、2 回の利上げ見通しを信じ ず、長短金利逆転(逆イールド)を続けることで、リセッション(景気後退)到来による FED ピボット(FRB の利下げ転換)に賭けているように思われる。
現状の金利とインフレ動向は以下の通りになっている。 ・FF 金利誘導目標:5.00-25%(2023 年末の見通しは 5.50-75%) ・米 2 年債利回り:4.7%弱 ・米 5 月消費者物価指数(CPI):4.0% ・米 10 年債利回り:3.7%強
米 2 年債と 10 年債の逆イールドは、過去 40 年にわたり常に景気後退の前兆となってきた。 10 年物国債と 3 カ月物財務省証券(TB)の逆イールドで 12 カ月先の景気後退入りを予測するニューヨ ーク連銀のモデルは、その確率が 1980 年代以来初めて 70%になった、と警鐘を鳴らしている。
【本日の重要指標】
※時刻表示は日本時間
<国内>
○08:50 ☆ 4 月 27-28 日分の日銀金融政策決定会合議事要旨
○10:30 ◇ 安達誠司日銀審議委員、あいさつ
○夕刻 ◎ 岸田文雄首相が記者会見
<海外>
○15:00 ◎ 5 月英消費者物価指数(CPI、予想:前月比 0.5%/前年比 8.4%)
○15:00 ◎ 5 月英 CPI コア指数(予想:前年比 6.8%)
○15:00 ◇ 5 月英小売物価指数(RPI、予想:前月比 0.5%/前年比 11.2%)
○17:00 ◎ 5 月南アフリカ CPI(予想:前月比 0.4%/前年比 6.5%)
○17:00 ◎ カジミール・スロバキア中銀総裁、講演
○20:00 ◇ MBA 住宅ローン申請指数
○21:30 ◎ 4 月カナダ小売売上高(予想:前月比 0.2%/自動車を除く前月比 0.4%)
○22:45 ◎ シュナーベル欧州中央銀行(ECB)専務理事、ナーゲル独連銀総裁、講演
○23:00 ☆ パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、米下院金融サービス委員会で金融政策に関する半期に一度の証言
○22 日 01:25 ◎ グールズビー米シカゴ連銀総裁、講演
○22 日 02:00 ◎ 米財務省、20 年債入札
○22 日 06:30 ☆ ブラジル中銀、政策金利発表(予想:13.75%で据え置き)
○英中銀金融政策委員会(MPC)
※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。
【前日までの要人発言】
20 日 09:47 鈴木財務相
「為替、安定的に推移することが望ましい」
「日々、為替の動向について注視している」
「為替の水準は市場において決定される」
「為替の水準にはコメントしない」
「為替政策、必要であれば適切に対応する」
20 日 10:35 豪準備銀行(RBA)議事要旨
「6 月の利上げの決定は微妙なバランスではあったが、高いインフレが賃金や物価の期待に根付かないようにするために必要と判断」
「消費支出が明らかに減速していることから、金利を据え置くことも検討したものの、インフレリスクは上方にシフトしているとの見通しから利上げを決定」
「5 月の雇用統計が驚くほど強かったことから、タカ派的な見通しが強調された」
「直ちに利上げを行う理由として、上昇する電力料金、高い家賃、頑固なサービスインフレ、全国的な住宅価格の回復などが挙げられた」
「インフレを目標に戻すために必要な措置を講じる決意を再確認」
「インフレが目標範囲に戻るまでには合理的な期間が必要」
20 日 11:07 西村経産相
「為替は安定することが重要、過度な変動・投機的な動きはしっかりと注視しなければならない」
20 日 12:25 ブロック RBA(豪準備銀行)副総裁
「豪州はここ数十年で初めて完全雇用の推定値に達するか、それ以上の水準にある」
「雇用はインフレ目標との整合性を考慮した水準を超えている」
「インフレが定着すれば、金利の上昇、深刻な景気後退や失業率の上昇を招くだろう」
20 日 14:54 シムシェキ・トルコ財務相
「より標準的な政策へ段階的に移行する方針」
21 日 01:09 ビルロワドガロー仏中銀総裁
「最終金利の水準よりも持続期間の方が重要」
「将来の金利決定はインフレデータに依存」
21 日 06:01 クーグラー次期米連邦準備理事会(FRB)
理事
「物価の抑制に強くコミット」
「インフレ率を 2%に戻すことが重要」
※時間は日本時間
【日足一目均衡表分析】
<ドル円=上昇中の転換線を支持に押し目買いスタンス>
陰線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を
上回り、雲の上で引けており、三役好転の強い買いシグナル
が点灯中。3 手連続陽線の後に抱き線で反落したものの、転
換線を上回って引けており反発の可能性が示唆されている。
本日は、転換線を支持に押し目買いスタンスで臨み、同線
を下抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス 2 142.48(2022/11/11 高値)
レジスタンス 1 142.25(6/20 高値)
前日終値 141.47
サポート 1 140.51(日足一目均衡表・転換線)
サポート 2 139.28(日足一目均衡表・基準線)
<ユーロドル=低下が見込まれる雲上限を念頭に置いた取引>
陰線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を
上回り、雲の中で引けているものの、買いシグナルが優勢な
展開となっている。雲の上限の手前で、3 手連続陰線で伸び
悩んでいるものの、転換線を上回って引けており反発の可能
性が示唆されている。
本日も低下が見込まれる雲の上限 1.0942 ドルを念頭に置
き、転換線を支持に押し目買いスタンスで臨み、同線を下抜
けた場合は手仕舞い。
レジスタンス 1 1.0971(6/16 高値)
前日終値 1.0918
サポート 1 1.0852(日足一目均衡表・転換線)
<ユーロ円=6/16 安値を支持に押し目買いスタンス>
陰線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を
上回り、雲の上で引けており、三役好転の強い買いシグナル
が点灯中。6 手連続陽線の後に抱き線で反落したものの、転
換線を上回って引けており反発の可能性が示唆されている。
本日は 153 円前半の 16 日安値を支持に押し目買いスタン
スで臨み、同水準を下抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス 1 155.38(6/20 高値)
前日終値 154.44
サポート 1 153.09(6/16 安値)
<豪ドル円=転換線を支持に押し目買いスタンス>
大陰線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線
を上回り、雲の上で引けており、三役好転の強い買いシグナ
ルが点灯中。9 手連続陽線の後に 2 手連続陰線で反落したも
のの、転換線を上回って引けており反発の可能性が示唆され
ている。本日は 95 円台で上向きの転換線を支持に押し目買
いスタンスで臨み、同線を下抜けた場合は手仕舞い。
注意点としては「三川宵の明星」的なパターンが出現して
いること。
レジスタンス 1 97.68(6/19 高値)
前日終値 95.99
サポート 1 95.42(日足一目均衡表・転換線)