ウィークリーレポート 2024年8月9日
週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円)
August 9, 2024
ドル円、米 7 月 CPI に注目
◆米 7 月 CPI が予想を大幅に下回った場合、緊急 FOMC の可能性も
◆日本の 4-6 月期国内総生産(GDP)や中東の地政学リスクにも注意
◆ユーロ、8 月 ZEW 景況指数や 6 月鉱工業生産を見極め
予想レンジ
ドル円 143.50-149.50 円
ユーロドル 1.0650-1.1100 ドル
8 月 12 日週の展望
ドル円は、米 7 月消費者物価指数(CPI)の伸び率が予想よりも鈍化していた場合、緊急米連邦 公開市場委員会(FOMC)による利下げの可能性に警戒しておきたい。また、ウクライナ戦争や中 東での地政学リスクの高まりには、引き続き注意が必要だろう。
14 日に発表される米 7 月 CPI の予想は前年比 2.9%で 6 月の 3.0%からの鈍化へ、コア CPI の 予想も 3.2%で 6 月の 3.3%からの鈍化が見込まれている。米 7 月の雇用統計のネガティブサプラ イズを受けて、9 月の FOMC での 0.50%の利下げの可能性が高まっている。過去 50 年間の 7 回の リセッション(景気後退)を的確に予想してきた「サームルール」が 0.53%となり、1 年以内の リセッション入りを警告しているほか、21 日に公表予定の年次改定で雇用者数が下方修正される 可能性のあることなども、0.50%の利下げ見通しの背景になっている。
ドル円は、植田日銀総裁が政策金利を 0.25%まで引き上げた後の定例記者会見で、これまで金 利の壁と見なされてきた 0.50%を超えて中立金利水準の 1.0%に向けた追加利上げを暗に示唆し たことなどをきっかけに、円キャリートレードの巻き戻しが急速に進んだ。今週に入って、内田 日銀副総裁は「金融資本市場が不安定な状況で利上げをすることはない」とハト派的な見解を述 べたものの、「植田総裁と自分との考えの違いはない。経済や物価が見通しに沿って展開していく のであれば、それに応じて金融緩和の度合いを調整していくことが適切」とも述べており、利上 げ路線を否定したわけではない。日本株やドル円の上値を抑える要因となっている。
また、15 日に発表される日本の 4-6 月期実質国内総生産(GDP)は、前期比年率 2.3%と予想され ており、1-3 月期の-2.9%からの大幅改善が見込まれている。もし GDP がプラス圏に改善した場 合、6 月の実質賃金が前年同月より 1.1%増加して 2022 年 3 月以来 27 カ月ぶりにプラスに転じて いることもあり、追加利上げ観測が再び高まることになりそうだ。 ユーロドルは、米 7 月 CPI の伸び率鈍化が見込まれていることから、底堅い展開が予想される。 ただ、ウクライナや中東の地政学リスクへの警戒感も強く、上値は限定的となりそうだ。8 月 ZEW 景況指数や 6 月ユーロ圏鉱工業生産などを見極めることになるだろう。
8 月 5 日週の回顧
ドル円は、日銀の追加利上げ観測を受けた円キャリートレードの手仕舞いで 141.70 円まで急落 したが、内田日銀副総裁のハト派発言を受けて 147.90 円まで買戻されている。なお、日経平均株 価は、5 日に 1987 年 10 月のブラックマンデーの時の下落幅を上回る過去最大の下落幅(▲4451 円)を記録した後、翌 6 日には過去最大の上昇幅(+3217 円)を記録するなど乱高下となった。 ユーロドルは週初の 1.1008 ドルから 1.0882 ドルまで下落している。(了)
週間展望・回顧(豪ドル、南ア・ランド)
August 9, 2024
NZ ドル、RBNZ 利下げの可能性も
◆豪ドル、株式市場に翻弄される展開は変わらず
◆NZ ドル、期待インフレの引き下げ受け利下げの可能性も
◆ZAR、国内環境は良好もリスク回避姿勢が継続され上値は重い
予想レンジ
豪ドル円 93.00-100.00 円
南ア・ランド円 7.60-8.20 円
8 月 12 日週の展望
豪ドルは引き続き荒い値動きとなりそうだ。日経平均をはじめ株式市場が連日大きく上下して いることで、来週もリスク度合いに敏感なオセアニア通貨は株式市場の動きに左右され、荒い値 動きを繰り返すことになるだろう。特に新 NISA 導入後から始まった日本株の買いの勢いが完全に 削がれてしまったことで、株式市場のダウンサイドリスクには警戒したい。もっとも、株式市場 が落ち着きを取り戻せば、豪州と米国の金融政策の方向性の違いが引き続き豪ドルの支えになる だろう。
来週の豪州からの経済指標では、13 日に 4-6 月期の賃金指数と 15 日の 7 月雇用統計に注目。 5-6 日に行われた豪準備銀行(RBA)理事会では、賃金の伸びの高さが指摘された。また、失業 率に関しては上昇を予想しているが、労働市場は依然としてひっ迫しているとの見解を示した。8 日に行われた講演でブロック RBA 総裁は「単一の経済指標で判断することはない」と述べたが、 賃金指数が高まり、雇用情勢が予想よりも強い結果となった場合は 9 月の理事会に向けて利上げ 期待が高まる可能性もありそうだ。なお、13 日には 7 月の NAB 企業信頼感・景況感も発表される。 隣国の NZ では 14 日に NZ 準備銀行(RBNZ)の金融政策委員会(MPC)が控えている。8 日に発 表された期待インフレは 2 年後を 2.33%から 2.03%まで、1 年先を 2.73%から 2.40%まで引き 下げた。当初は政策金利の据え置き予想が優勢だったが、期待インフレの引き下げを受けて利下 げ予想も高まっている。予想が拮抗するなかで、RBNZ の動向を見極めることになるが、今回は四 半期に一度発表される声明文(MPS)にも注目している。
南アフリカ・ランド(ZAR)は上値が重そうだ。南アの国内情勢は、国民統一政府(GNU)の発 足で政治基盤が安定するなど、ポジティブ要素は多い。また、南ア経済研究所(BER)は南アの成 長見通しを南ア準備銀行(SARB)の 1.5%や国際通貨基金(IMF)の 1.2%を大きく上回る 2.2% に引き上げている。国内環境は良好になっているものの、米中の景気鈍化懸念が高まっているこ とで引き続きリスク回避の動きになりやすく、ZAR の上値を抑えそうだ。なお、経済指標では 13 日に 4-6 月期失業率、14 日に 6 月小売売上高が発表される。
8 月 5 日週の回顧
豪ドルは乱高下した。先週発表された米雇用統計の悪化により、米国のリセッション懸念で週 初から株式市場が大幅な下落となると、リスク回避の動きに敏感な豪ドルは対ドルで年初来安値 となる 0.6350 ドルまで、対円では昨年 5 月以来となる 90.15 円まで急落した。もっとも、その後 は株安に一定の歯止めがかかるなか、RBA がタカ派姿勢を維持したほか、内田日銀副総裁のハト 派発言などを受けて、それぞれ 0.66 ドル手前、97 円台まで戻す大相場となった。ZAR も株安によ るリスク回避により、週初は対円で 8 円台から 7.60 円まで急落した。その後は、ドル円が下げ幅 を縮小すると 8 円台まで値を戻すなど流動性が悪化するなかで乱高下した。(了)
週間展望・回顧(ポンド、加ドル)
August 9, 2024
ポンド、追加利下げを見極め
◆日本株・円相場、不安定な動きに警戒
◆ポンド、指標で追加利下げを見極め
◆加ドル、追加利下げ観測が重しも円とドルの動きに左右
予想レンジ
ポンド円 183.00-191.00 円
加ドル円 104.00-109.50 円
8 月 12 日週の展望
来週も神経質な動きが続く円相場の動きが注目される。7 月末の日銀金融政策決定会合後、慎 重派とされた植田日銀総裁のタカ派寄り発言が円高・日本株安の大きな一因となったが、今週は タカ派とされた内田日銀副総裁のハト派発言が市場を驚かせた。日銀の要人らが久々に存在感を 示しているが、不本意にもその発言は金融市場の不安定化につながっている。米景気減速懸念や 中東リスクなども加わり、金融市場の不安定な動き、円相場の値幅を伴った動きの継続に注意。
来週は英国内で、7 月の雇用・物価データや同月小売売上高、4-6 月期 GDP・速報値など複数の 注目指標の発表が予定されている。イングランド銀行(英中銀、BOE)は 8 月会合で利下げに踏み 切ったが、5 対 4 の僅差での決定であり、利下げを支持した一部委員の判断も「微妙なバランス だった」と伝わっている。またベイリーBOE 総裁は、「今後は慎重に動く」とし、「急速な利下げ を確約しているわけではない」と強調した。利下げ決定は景気回復を目指すスターマー新政権に 追い風となるも、インフレリスクは根強く残されている。市場では次回 9 月会合での追加利下げ と据え置き予想が拮抗しており、今週の経済指標の結果は金利見通しにつながる可能性が高い。 なお、今週発表された 7 月サービス部門購買担当者景気指数(PMI)改定値は 52.5 と速報値か らやや上方修正され、7 月建設業 PMI は 55.3 と 2022 年 5 月以来の高水準となった。7 月初旬の英 総選挙での政権交代を受けて景況感は改善している。
加ドルは、国内で加ドルの動意につながりそうな経済指標や注目イベントは乏しく、神経質な 動きが続いている円相場や、米 7 月 CPI を受けたドルの動きなどに左右されそうだ。 カナダ中銀(BOC)は主要国のなかで先頭を切って 2 会合連続で利下げを実施しているが、次回 9 月会合での追加利下げ観測の高まりが引き続き加ドルの重しとなるか。今週公表の 7 月会合議 事要旨では、BOC が「来年と 26 年の個人消費の大幅下振れへの懸念と、物価上昇率が想定通り減 速し続ければさらなる利下げが適切」との考えを明確にし、利下げによる消費のてこ入れを期待 していることが明らかになった。市場は 9 月会合での追加利下げを完全に織り込み、年内にあと 2 回の利下げを想定している。
8 月 5 日週の回顧
今週も為替相場は円の動きが目立つ展開となった。週明けから連日で日経平均が過去最大の下 げと上げ幅を記録し、円相場は乱高下。円はリスク回避の買いが先行したが、株の持ち直しと内 田日銀副総裁のハト派発言を手がかりに円が売り戻された。ポンド円は 180 円前半まで下押し後 188 円台まで切り返し。加ドル円は 101 円後半を安値に 107 円半ばまで反発した。 対ドルでは動意は限られた。ポンドドルは 1.26 ドル後半に押し戻された後 1.27 ドル半ばまで 買戻された。ドル/加ドルは一時 1.39 加ドル半ばまで加ドル安が進んだが 1.37 加ドル前半まで 下押しした。(了)