ウィークリーレポート 2024年8月16日
週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円)
August 16, 2024
植田総裁とパウエル議長の発言に注目
◆ドル円、23 日の植田日銀総裁とパウエル FRB 議長の発言に注目
◆日本の 7 月 CPI や貿易収支、中東の地政学リスクにも注意
◆ユーロ、8 月製造業・サービス業 PMI を見極め
予想レンジ
ドル円 146.00-152.00 円
ユーロドル 1.0700-1.1100 ドル
8 月 19 日週の展望
ドル円は、中東の地政学リスクに警戒しながら、23 日に予定されている植田日銀総裁の衆議院 財務金融委員会での発言やパウエル FRB 議長のジャクソンホール会合での講演を見極めることに なる。
21 日に予定されている米労働省の年次改定では、雇用者数が昨年のような下方修正(▲30.6 万 人)の可能性が警戒されている。もし大幅に下方修正された場合、米国の雇用情勢が公表されて きた数字よりも悪化していたことが判明するため、米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ幅 拡大への思惑が強まることになるだろう。また、23 日には「金融政策の有効性と伝達の再評価」 のテーマで開催されるジャクソンホール会合で、パウエル FRB 議長の講演が予定されている。7 月 FOMC 後の記者会見では、9 月 FOMC での利下げ開始方針を示唆しているが、利下げ幅などへの 言及などがあるのかどうか注目している。
日本国内では、21 日発表の 7 月貿易収支速報でドル円を下支えしている実需の円売り圧力を確 認することになる。また、23 日発表の 7 月コア消費者物価指数(CPI)では、5 月の前年比 2.5%、 6 月の 2.6%に続いて、伸び率の上昇基調が続くのかを見極めたいところだ。7 月の輸入物価指数 が 10.8%となり、植田日銀総裁が指摘している「第一の力」への警戒感が高まっている。 更に、23 日には衆議院財務金融委員会で植田日銀総裁に対する利上げや株価乱高下に関する意 見聴取が予定されている。5 日の過去最大の下げ幅を記録した日経平均株価の暴落や、岸田首相 の総裁選不出馬表明を受けて、植田日銀総裁の追加利上げ路線が変わらないのか否かに注目して おきたい。
ユーロドルは、8 月の製造業・サービス業 PMI 速報値を見極めつつ、ユーロ圏の景況感を確認 することになる。また、ウクライナ軍がロシアへの越境攻撃に踏み切ったが、ロシアが和平協議 に応じる可能性が高まるのか、それとも逆に戦術核の使用に踏み切ることになるのか、予断を許 さない状況が続いている。イランがイスラエルに対して報復攻撃に踏み切る可能性も高く、原油 価格の急騰リスクなども意識しておく必要がありそうだ。
8 月 12 日週の回顧
ドル円は、米 10 年債利回りが 3.96%台に上昇した局面で 148.22 円まで上昇したものの、低調 な米 7 月 PPI を受けて下落。岸田首相の総裁選不出馬表明なども売りを後押しすると 146.08 円ま で値を下げた。ただ、その後は好調な米 7 月小売売上高や米雇用指数を受けて 149.39 円まで再び 買戻されている。ユーロドルは米金利低下を受けて 1.0910 ドルから 1.1047 ドルまで上昇したが、 その後は再び 1.0950 ドルまで下押し。ユーロ円は 159.79 円から 163.89 円まで上昇した。(了)
週間展望・回顧(豪ドル、南ア・ランド)
August 16, 2024
豪ドル、雇用強く堅調維持
◆豪ドル、7 月雇用統計が強く他中銀との方向性の違いで堅調維持
◆NZ ドル、再利下げの可能性高く上値が重い
◆ZAR、リスク選好・回避で振り回され上下
予想レンジ
豪ドル円 96.00-103.00 円
南ア・ランド円 8.00-8.50 円
8 月 19 日週の展望
豪ドルは堅調地合いを維持しそうだ。隣国のニュージーランド(NZ)が利下げに踏み切り、米 連邦準備理事会(FRB)も 9 月の利下げが確実視されている。また、今週発表された英国のインフ レ指標が低下するなど、多くの国では利下げ圧力が優勢。一方で、豪州は執拗なインフレに悩ま されており、豪準備銀行(RBA)の利下げは程遠い状況。むしろ、利上げ圧力のほうが依然として 高い。中銀間の方向性の違いで、豪ドルは対ドル・対 NZ ドルを中心に堅調推移となると予想して いる。5-6 日に行われた RBA 理事会では「労働市場は依然としてひっ迫している」との見解が示 されたが、今週発表された 7 月の雇用統計でも常勤雇用者数を中心に新規雇用者数が予想を大幅 に上回った。雇用が強いことも豪ドルを支えるだろう。また、多くの国での利下げ圧力は同時に 株式市場の支えにもなっている。リスク選好の動きに敏感な豪ドルはその面でも買われやすい。 来週は 20 日に RBA 理事会の議事要旨が公表され、21 日には 7 月のウエストパック景気先行指数 が発表される。議事要旨が声明文よりも更にタカ派寄りの内容だった場合は、豪ドル買いにつな がるだろう。
一方で、NZ ドルは上値が重くなりそうだ。今週の金融政策委員会(MPC)では、据え置きと利 上げ予想が拮抗するなか、NZ 準備銀行(RBNZ)は約 4 年ぶりに 0.25%の利下げを決定した。また、 MPC では 0.50%の利下げについても話し合いが行われたことが明らかになっている。RBNZ のハト 派路線が NZ ドルの重しになりそうだ。なお、NZ からは 20 日に 7 月貿易収支、ホークスビーRBNZ 総裁補の講演が予定され、23 日には 4-6 月期の小売売上高が発表される。 南アフリカ・ランド(ZAR)は神経質な動きになりそうだ。株式市場が堅調地合いをみせている ことで、リスク選好の動きが ZAR を支えている。しかしながら、ウクライナを巡る戦争と悪化す る中東情勢がリスク要因として残っている。株高のセンチメントに変化が生じれば、リスク回避 に敏感な新興国通貨の ZAR が急落する可能性には注意しておきたい。 来週の経済指標では 21 日に 7 月の消費者物価指数(CPI)が発表される。南ア国内のエネルギ ー基準価格の引き下げなどもあり、インフレは低下傾向。次回の 9 月の MPC まではまだ日数があ るものの、CPI が引き続き大きく上振れない限りは南アフリカ準備銀行(SARB)の 9 月利下げ期 待が高まることになるだろう。
8 月 12 日週の回顧
豪ドルは小高く推移した。株式市場が堅調だったことや、豪雇用統計が好結果だったことが豪 ドル買いを促した。対円では 98 円後半まで上昇した。ZAR も株高が支えになり、対ドルで 1 カ月 ぶりに 17 ランド台まで、対円では 8 円前半まで買われた。南アでは、4-6 月期失業率は非常に 悪い結果だった一方、小売売上高は強かった。停電の停止、ガソリン価格の大幅値下げ、そして 国民統一政府(GNU)が左傾化しなかったことへの安心感が小売りの伸びにつながっている。(了)
週間展望・回顧(ポンド、加ドル)
August 16, 2024
加ドル、7 月 CPI に注目
◆英雇用・物価データはまちまち、英中銀に明確なメッセージ示せず
◆ポンド方向感出にくい、追加利下げをめぐりデータを確認
◆加ドル、7 月 CPI に注目
予想レンジ
ポンド円 187.50-194.50 円
加ドル円 106.00-110.50 円
8 月 19 日週の展望
イングランド銀行(英中銀、BOE)の追加利下げをめぐる不確実性はなお高い。今週発表の英経 済指標は、来月追加利下げに踏み切れるかどうか、当局を悩ませる内容となった。4-6 月の賃金 上昇率(除賞与)は予想通りの 5.4%と 3-5 月から伸びが鈍化したが、4-6 月失業率(ILO 方式) は 4.2%と予想外に低下し、労働市場の底堅さが示された。7 月英消費者物価指数(CPI)は前年 比 2.2%と上昇率は今年初めて加速したものの、予想を下回った。コア CPI も 3.3%と予想を下回 り、BOE が物価圧力の手がかりとして注目するサービス価格の上昇率は 5.2%と前月の 5.7%から 鈍化した。
BOE は 1 日に約 4 年ぶりの利下げに踏み切ったが、金融政策委員会(MPC)メンバー9 人のうち 5 人が利下げを支持、4 人が据え置き主張と、僅差で決定された。今週発表の雇用・物価データは 英中銀当局者による均衡を図った行動の難しさを裏付けている。BOE は年内に 9・11・12 月と後 3 回の政策会合を残しているが、市場参加者は年内に 0.25%ずつ 2 回の追加利下げを見込んでいる。 次回 9 月会合は 19 日に予定されているが、この会合で追加利下げに踏み切るかどうかはその前に 発表予定の 5-7 月雇用データや 8 月 CPI の結果に大きく左右されそうだ。金利見通しの不透明感 から、ポンドは方向感が出にくい。来週は 8 月製造業・サービス部門購買担当者景気指数(PMI) 速報値の発表が予定されている。
加ドルは対ドルで値動きが乏しいが、円相場の乱高下もいったん落ち着き対円でも小動きを予 想している。加ドル独自に買い材料が乏しいものの、ドルの重い動きが下支えとなっている。来 週は加国内で 7 月消費者物価指数(CPI)や 6 月小売売上高などの発表が予定されている。7 月 CPI は前月比で今年初めてマイナスとなった 6 月から再びプラスに転じるも、前年比では伸びが一段 と鈍化すると見込まれている。また、5 月小売売上高は前月比-0.8%と昨年 3 月以来の下げ幅を 記録したが、6 月は上昇に転じると予想。 9 日に発表された 7 月雇用統計では、失業率は 6.4%と前月からの悪化予想に反して横ばいとな るも、雇用者数は大幅増加予想に反して、パートタイムの減少が響き 0.28 万人減となった。また、 カナダ中銀(BOC)が注視する正規雇用の平均時給の伸びは 5.2%と 6 月から伸びが鈍化した。市 場では、引き続き BOC が 9 月会合で追加利下げに踏み切ると見込まれている。
8 月 12 日週の回顧
英経済指標を受けてポンドドルは売買が交錯。方向感は出ず、1.28 ドルを中心に小動きとなっ た。英中銀の追加利下げをめぐる不透明感が強く一方向に傾きにくい。ドル/加ドルは米経済指 標の強弱で振れるも、1.37 加ドル近辺で値動きは限定的。また、7 月米小売売上高や新規失業保 険申請件数の良好な結果を受けて米景気減速への懸念が和らいだことから、ドル円が大幅な上昇。 つれるかたちで、ポンド円は 192 円近辺、加ドル円は 108 円後半まで切り返した。(了)