デイリーレポート 2024年8月23日

August 23, 2024

【前日の為替概況】ドル円146.53円まで上昇、米10年債利回りが3.87%台へ上昇

22日のニューヨーク外国為替市場でドル円は5営業日ぶりに反発。終値は146.29円と前営業日NY終 値(145.21円)と比べて1円08銭程度のドル高水準だった。シュミッド米カンザスシティー連銀総裁が

「利下げを支持する前にさらなるデータを見る必要がある」と発言したことなどを手掛かりに全般ドル買 いが先行。7月米中古住宅販売件数が予想を上回ったこともドル買いを促すと、23時30分前に一時146.53 円と日通し高値を更新した。米長期金利の指標となる米10年債利回りが3.87%台まで上昇したことも相 場の支援材料。前日の高値146.77円がレジスタンスとして意識されると、伸び悩む場面もあったが、下 押しは145.88円付近にとどまった。

なお、コリンズ米ボストン連銀総裁は「データが利下げのペースを導く」「雇用統計の修正にもかかわ らず、労働市場は健全」「段階的な利下げが適切になるだろう」と述べたほか、ハーカー米フィラデルフ ィア連銀総裁は「データが予想通りなら9月利下げを支持する」と語った。

ユーロドルは5日ぶりに反落。終値は1.1112ドルと前営業日NY終値(1.1150ドル)と比べて0.0038 ドル程度のユーロ安水準だった。シュミッド米カンザスシティー連銀総裁の発言や米長期金利の上昇など を手掛かりに全般ドル買いが進行。前日の安値1.1100ドルを下抜けて一時1.1098ドルまで値を下げた。 主要通貨に対するドルの値動きを示すドルインデックスは一時101.63まで上昇した。

カンザスシティー連銀主催の経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」でパウエルFRB議長が講演す るのを明日23日に控えて、ポジション調整目的のユーロ売り・ドル買いも出やすかった。

ユーロ円は続伸。終値は162.56円と前営業日NY終値(161.95円)と比べて61銭程度のユーロ高水準。 ただ、NY市場に限れば162円台でのもみ合いに終始した。ドル円とユーロドルの値動きの影響を同時に 受けたため、相場は大きな方向感が出なかった。

【本日の東京為替見通し】ドル円、植田日銀総裁の発言に要注目か

本日の東京外国為替市場のドル円は、植田日銀総裁の閉会中審査での発言に注目する展開となるが、今 夜のパウエルFRB議長の講演を控えて上値は限定的だと思われる。

8時30分に発表される7月全国消費者物価指数(CPI、生鮮食品を除く総合)は前年比+2.7%と予想さ れており、6月の同比+2.6%からの上昇が見込まれている。本日の東京市場でのメインイベントは植田日 銀総裁の閉会中審査であり、予想から大幅に外れることがない限り、市場への影響はないと思われる。 本日は、7月31日にタカ派発言をした植田日銀総裁とハト派発言をしたパウエルFRB議長の発言機会 が予定されており、両者のスタンスが変わっていないのか否かを見極めることになる。

植田日銀総裁は、本日、衆参両院での閉会中審査(午前9時半から衆院財務金融委員会、午後1時から 参院財政金融委員会)で、利上げに関する意見聴取が予定されている。

植田日銀総裁は、7月31日の日銀金融政策決定会合での政策金利0.25%への引き上げの後の記者会見 で、金利の壁と見なされている0.50%を超えて、中立金利水準と見なされている1.00%に向けた追加利 上げを示唆したことで、8月5日の日経平均株価の過去最大の下落、世界的な金融市場の混乱を引き起こ したと見なされている。

植田日銀総裁は、本来ならば、避暑地で開催されるジャクソンホール会合(8月22-24日)に参加して、 主要中銀が史上初めて共同で量的引き締め(QT)に動く局面に関する意見交換などを行う予定だったと思 われる。しかし、国会が閉会中にも関わらず、日銀に説明を求める議員らが開催を要請したことで、異例 の審査が行われることになった。

8月7日には、内田日銀副総裁が、株価や為替相場が不安定な状況で利上げは行わず、当面は現行の金 融緩和を維持するとの考えを示したことで、ドル円も日経平均株価も底堅く推移している。内田日銀副総 裁は、「植田総裁と自分との考えの違いはない。経済や物価が見通しに沿って展開していくのであれば、 それに応じて金融緩和の度合いを調整していくことが適切」とも述べている。

ドル円が146円台、日経平均株価が38000円台で推移している状況での植田日銀総裁のタカ派路線の維 持、あるいは変更の可能性に要注目となる。昨日のオプション市場では、植田日銀総裁のタカ派発言の再 現に備えて、円急騰への対応措置が取引されていた。

植田日銀総裁は、タカ派的な見解による市場混乱に対する閉会中審査の場で、タカ派的な見解を繰り返 してボラティリティーを高める発言は控えて、おそらく、内田日銀副総裁と同じく、金融市場が不安定な 状況で利上げはしないと安心感を与えようとする可能性が高い。

ドル円は、買戻しが続くことが予想されるものの、今夜23時からジャクソンホール会合でのパウエル FRB議長の基調講演を控えていることで、上値は限定的だと思われる。パウエルFRB議長は、7月31日の FOMC後の記者会見で、労働市場の下振れリスクは「現在、現実のものとなっている」と述べていた。そ の後、8月2日に発表された米7月失業率は4.3%へ上昇し、FRBが完全雇用と見なす4.2%をわずかに上 回っていた。さらに21日に米労働省が発表した年次ベンチマーク改定の速報値では、2024年3月までの 1年間の雇用者増は81万8000人下方修正されており、パウエルFRB議長が懸念を示していた労働市場の 下振れリスクが高まっている。

【本日の重要指標】※時刻表示は日本時間

<国内>

○08:30 ☆ 7 月全国消費者物価指数(CPI、生鮮食品を除く総合、予想:前年比2.7%)

○08:30 ☆ 7 月全国CPI(生鮮食料品・エネルギー除く、予想:前年比1.9%)

○植田和男日銀総裁、衆参両院の閉会中審査で意見聴取

<海外>

○07:45 ◎ 4-6 月期ニュージーランド(NZ)小売売上高(予想:前期比▲0.9%)

○08:01 ◇ 8 月英消費者信頼感指数(Gfk 調査、予想:▲12)

○14:00 ◎ 7 月シンガポールCPI(予想:前年比2.5%)

○15:45 ◇ 8 月仏企業景況感指数(予想:96)

○21:30 ◎ 6 月カナダ小売売上高(予想:前月比▲0.3%/自動車を除く前月比▲0.2%)

○23:00 ☆ 7 月米新築住宅販売件数(予想:前月比1.0%/62.3 万件)

○23:00 ☆ パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、ジャクソンホール会議で講演

○24:00 ◎ ベイリー英中銀(BOE)総裁、講演

○24 日01:30 ◎ グールズビー米シカゴ連銀総裁、講演

○米カンザスシティー連銀主催の経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)、テーマは「金融政策の有効性 と伝達の再評価」(ワイオミング州ジャクソンホール、24 日まで)

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。

※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。

※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

【前日までの要人発言】

22日20:30欧州中央銀行(ECB)理事会議事要旨(7月 18日分)

「労働コストの動向は引き続き主要な懸念事項」

「基調的インフレの様々な指標からのサインは依然とし て混在」

「ヘッドラインインフレは、年内は現在のレベル辺りで変 動すると予想」

「理事会の政策対応は慎重であるべき」

「9月の会合はオープンな姿勢で臨むべき」

「9月は政策を見直すのに適した時期だと広く認識」

22日20:33シュミッド米カンザスシティー連銀総裁

「利下げを支持する前に、さらなるデータを見る必要が ある」

「雇用統計の年次改定は私の考え方を変えるものでは ない」

22日21:51コリンズ米ボストン連銀総裁

「データが利下げのペースを導く」

「雇用統計の修正にもかかわらず、労働市場は健全」

「段階的な利下げが適切になるだろう」

22日22:58ハーカー米フィラデルフィア連銀総裁

「データが予想通りなら9月利下げを支持」

※時間は日本時間

【日足一目均衡表分析】

<ドル円=転換線を抵抗に戻り売りスタンス>

陽線引け。転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線を 下回り、雲の下で引けていることで、三役逆転の強い売りシ グナルが点灯している。4 手連続陰線の後、抱き線で反発し たものの、依然として転換線を下回って引けており反落の可 能性が示唆されている。 本日は転換線を抵抗に戻り売りスタンスで臨み、同線を上 抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス2 147.35(8/20 高値)
レジスタンス1 146.93(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 146.29
サポート1 144.85(8/22 安値)
サポート2 144.46(8/21 安値)

<ユーロドル=上昇中の転換線を支持に押し目買いスタンス>

陰線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を 上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買いシ グナルが点灯中。4 手連続陽線の後、抱き線で反落したもの の、依然として転換線を上回って引けており反発の可能性が 示唆されている。 本日は上昇中の転換線を支持に押し目買いスタンスで臨 み、同線を下抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス1 1.1191(ピポット・レジスタンス2)
前日終値 1.1112
サポート1 1.1044(日足一目均衡表・転換線)

<ユーロ円=8/22 安値を支持に押し目買いスタンス>

陽線引け。転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線を 下回り、雲の下で引けていることで、三役逆転の強い売りシ グナルが点灯している。しかし、2 手連続陽線で転換線を上 回って引けており、続伸の可能性が示唆されている。 本日は22 日の安値を支持に押し目買いスタンスで臨み、 同水準を下抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス1 163.15(日足一目均衡表・基準線)
前日終値 162.56
サポート1 161.48(8/22 安値)

<豪ドル円=8/22 安値を支持に押し目買いスタンス>

小陽線引け。転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線 を下回り、雲の下で引けていることで、三役逆転の強い売り シグナルが点灯中。しかし、抱き線で反発して転換線を上回 って引けており続伸の可能性が示唆されている。 本日は転換線97.88 円を念頭に置き、22 日安値を支持に押 し目買いスタンスで臨み、同水準を下抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス1 99.04(8/20 高値)
前日終値 98.09
サポート1 97.60(8/22 安値)