デイリーレポート 2023年6月28日

June 28, 2023

【前日の為替概況】ドル円、反発 米経済指標が軒並み予想を上回る

27 日のニューヨーク外国為替市場でドル円は反発。終値は 144.07 円と前営業日 NY 終値(143.51 円) と比べて 56 銭程度のドル高水準だった。米 10 年債利回りが 3.69%台まで低下したことなどを手掛かり に円買い・ドル売りが先行。22 時 30 分過ぎに 143.30 円付近まで下押しした。

ただ、アジア時間に付けた日通し安値 143.29 円が目先サポートとして働くと買い戻しが優勢に。23 時 発表の 6 月米消費者信頼感指数や 5 月米新築住宅販売件数、6 月米リッチモンド連銀製造業景気指数が軒 並み予想を上回ったことが分かると、米 10 年債利回りの上昇とともに円売り・ドル買いが活発化した。 24 時過ぎには 144.17 円と昨年 11 月以来 7 カ月ぶりの高値を更新した。

ユーロドルは続伸。終値は 1.0961 ドルと前営業日 NY 終値(1.0906 ドル)と比べて 0.0055 ドル程度の ユーロ高水準だった。ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁がポルトガルのシントラで開催中の ECB フォー ラムで「ターミナルレート(利上げの最終到達点)に到達した兆候はない」「見通しに大きな変化がない 限り、7 月も利上げを続ける」などと発言すると、ECB の利上げ継続観測が改めて意識されてユーロ買い・ ドル売りが進んだ。22 時 30 分過ぎに一時 1.0977 ドルと日通し高値を更新した。

ただ、22 日の高値 1.1012 ドルが目先レジスタンスとして意識されると伸び悩んだ。この日発表の米経 済指標が良好な内容となったことも相場の重しとなり、一時 1.0942 ドル付近まで下押しする場面があっ た。

ユーロ円は 3 営業日ぶりに反発。終値は 157.92 円と前営業日 NY 終値(156.52 円)と比べて 1 円 40 銭 程度のユーロ高水準。大規模な金融緩和を維持する日銀と、利上げ継続方針を示す ECB との金融政策の違 いが意識されて、円売り・ユーロ買いが進行。米国株相場が反発したことも投資家心理の改善につながり、 相場の追い風となった。4 時 30 分過ぎには一時 157.94 円と 2008 年 9 月以来約 15 年ぶりの高値を付けた。

なお、ポンド円は一時 183.76 円と 15 年 12 月以来の高値を付けたほか、スイスフラン円は 161.30 円と 史上最高値を更新した。

【本日の東京為替見通し】口先介入の効果薄れ円安継続か、豪ドルは CPI 次第で乱高下も

本日の東京市場も円安地合いを維持するか。先週から財務省関係者や政府要人から円安けん制発言が出 ているものの、すでに市場参加者や人工知能(AI)取引も口先介入へは反応が鈍くなってきている。実弾 が伴う為替介入が無い限りは、円安の進行を止めるのは難しそうだ。もっとも、長期間為替介入が行われ なった場合は、最初の介入は東京勢が参入している時間帯に行われる傾向があることで、東京時間では介 入への一定の警戒感があることで、円売りは緩やかなものにしかならないだろう。また、昨年の円買い介 入は 9 月 22 日から行われたが、ドル円が 145.90 円に到達した後に行われていることで、現行水準からの 円売りは慎重にならざるをえない。

なお、本日は本邦から主だった経済指標の発表が無く、要人の講演なども予定されていないことで、円 は株式市場の値動き、日米の金利動向、実需勢のフローなどが左右する相場展開になると思われる。

ドル円以外では、本日は豪ドルの値動きに注目したい。先週 20 日に発表された豪準備銀行(RBA)議事 要旨で「利上げ決定は微妙なバランスであった」ことが明らかになって以来、豪ドルは軟調な動きを見せ ていた。しかし、昨日は中国人民銀行(中央銀行)による元買い介入で元安が一服し、中国・香港株式市 場が急反発したことを支えに、リスク志向に敏感な豪ドル売りも収まった。

本日の豪ドルも、元や中国の株式市場の値動きで上下するだろうが、豪州からは 5 月の消費者物価指数 (CPI)が発表されることで、更に値動きが神経質になる可能性が高い。月次の数字は昨年 12 月の+8.4% をピークに今年 3 月には+6.3%まで低下したが、4 月になると燃料価格の高騰と住宅価格の大幅上昇を受 けて+6.8%まで再び上昇に転じた。しかし、5 月は+6.1%まで急低下するとの予想になっている。予想通 りインフレが抑えられていれば豪ドルは重くなるだろう。一方で、5 月の豪雇用統計が好結果だったこと もあり、5 月のインフレ率も高止まりするようなことになれば、7 月 4 日に行われる RBA 理事会では、6 月に続き利上げを決定する可能性が高まり、豪ドルは強含みそうだ。

【本日の重要指標】

※時刻表示は日本時間

<国内>

特になし

<海外>

○10:30 ◎ 5 月豪消費者物価指数(CPI、予想:前年比 6.1%)

○15:00 ◇ 7 月独消費者信頼感指数(Gfk 調査、予想:▲23.0)

○15:45 ◇ 6 月仏消費者信頼感指数(予想:84)

○19:30 ◎ ピル英中銀金融政策委員会(MPC)委員兼チーフエコノミスト、欧州中央銀行(ECB)フォーラムで講演

○20:00 ◇ MBA 住宅ローン申請指数

○21:30 ◇ 5 月米卸売在庫(予想:前月比▲0.1%)

○22:30 ☆ パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、ラガルド ECB 総裁、ベイリー英中銀(BOE)総裁、植田和男日銀総裁、ECB フォーラムでパネル討議に参加

○23:30 ◇ EIA 週間在庫統計

○29 日 01:00 ◎ 5 月ロシア失業率(予想:3.5%)

○29 日 01:00 ◎ ビルロワドガロー仏中銀総裁、講演

○29 日 02:00 ◎ 米財務省、7 年債入札

○ECB 中央銀行フォーラム(ポルトガル・シントラ、最終日)

○夏季ダボス会議(中国・天津、29 日まで)

○トルコ(犠牲祭)、インド(イスラム教犠牲祭)、休場

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。

※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。

※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

【前日までの要人発言】

27 日 11:54 李強中国首相

「第 2 四半期の経済成長、第 1 四半期を上回る見通し」

27 日 12:05 鈴木財務相

「為替、急速で一方的な動きが見られる」

「強い緊張感を持って注視、行き過ぎた動きに適切に対応」

「円安、プラス・マイナス両方の様々な影響」

27 日 12:15 ロバートソン・ニュージーランド(NZ)財務相

「金融政策委員会(MPC)の権限と憲章が更新された」

「MPC の枠組みの変更は僅か」

「MPC はインフレ率を 1%から 3%の間にすることを達成し、維持することをこれから必要とする」

「MPC は、金融リスクに関する決定の主な考慮事項を伝えなければならない」

27 日 14:05 カザークス・ラトビア中銀総裁

「金利は 7 月以降に引き上げられると予想」

「(市場関係者が)2024 年の初めの利下げにかけているのは間違え」

27 日 17:05 ラガルド ECB 総裁

「昨年からの利上げの累積的効果は未確認」

「ターミナルレート(利上げの最終到達点)に到達した兆候はない」

「ユーロ圏のインフレは高すぎる、賃金上昇からの影響が最近増加」

27 日 18:23 シムカス・リトアニア中銀総裁

「利上げサイクルはまだ終わっていない」

「インフレ目標 2%を達成するため、制約的な金利水準まで引き上げる必要」

「9月理事会での利上げの選択肢は排除されるべきではない」

28 日 02:05 ウンシュ・ベルギー中銀総裁

「スタグフレーションは基本シナリオではない」

「コアインフレが緩やかにならなければさらなる行動が必要」

「利上げ休止にはコアインフレの減速が著しく示されることが必要」

※時間は日本時間

【日足一目均衡表分析】

<ドル円=高値警戒感あるものの上向きの流れ継続へ>

陽線引け。143.25 円に位置していた 5 日移動平均線を上回 る堅調な推移が続き、144.17 円まで昨年 11 月以来 7 カ月ぶ りの高値を更新した。 高値警戒感もあり本日 143.69 円前後に切り上がって推移 する 5 日線を割り込む場面もありそう。しかし昨日安値 143.29 円などを下値めどに深押しを回避し、上向きの流れが 続くとみる。

レジスタンス 2 145.11(2022/10/27 安値)
レジスタンス 1 144.72(ピボット・レジスタンス 2)
前日終値 144.07
サポート 1 143.29(6/27 安値)

<ユーロドル=雲付近から上放れ>

上影陽線引け。1.09 ドル付近で低下中だった一目均衡表・ 雲の上限から上放れ、1.0977 ドルまで上昇した。雲を上回る 推移となって、一目・転換線が基準線を上回り、一目・遅行 スパンが実線を上回っていることと合わせ、一目均衡表の主 要指標が軒並み買い示唆へ転換。1.0929 ドルへ小幅に切り上 がった転換線付近で底堅い推移が続くと予想する。

レジスタンス 1 1.1012(6/22 高値)
前日終値 1.0961
サポート 1 1.0902(6/27 安値)

<ユーロ円=5 日線割れ挟みつつも底堅く、高値更新>

大陽線引け。5 日移動平均線を下回る場面も挟みつつも、 上昇中の同線を割り込んだ水準では底堅さを示し、157.94 円 まで 2008 年 9 月以来の高値を更新した。高値警戒感が高ま るなか 157.16 前後へ切り上がった 5 日線からやや上方へか い離したため、調整の反落が大きめになる場面もありそう。 しかし上向きの流れを否定するトレンド系テクニカル指標 やチャートパターンが確認されるまでは上向きの流れを追 うことになる。

レジスタンス 1 158.44(ピボット・レジスタンス 1)
前日終値 157.92
サポート 1 157.17(6/27 レンジ半値水準)

<豪ドル円=転換線付近で伸び悩む可能性も>

陽線引け。一目均衡表・転換線付近で 96.50 円まで戻りを 試した。ただ、転換線は現状レンジの推移を前提とすれば本 日 96.47 円へ小幅に切り上がったところで頭打ちとなる公算。 同線の低下に沿うような伸び悩みも想定しておきたい。下押 しが入った場合、23・26 日と週をまたいで下ひげを形成して 下げ渋った 95 円前半で再び底堅さを示すことができるかが ポイントになるだろう。

レジスタンス 1 96.85(6/23 高値)
前日終値 96.33
サポート 1 95.67(6/27 安値)