デイリーレポート 2024年8月27日
August 27, 2024
【前日の為替概況】】ドル円、反発NY市場でポジション調整目的のドル買い戻しが優勢に
26日のニューヨーク外国為替市場でドル円は反発。終値は144.53円と前営業日NY終値(144.37円) と比べて16銭程度のドル高水準だった。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が前週末23日にジャク ソンホール会議で講演し、9月米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ開始をほぼ明言。本日のアジア 市場でもドル売りが継続し、一時143.45円と5日以来の安値を付けた。
ただ、NY市場ではポジション調整目的のドル買い戻しが優勢に。7月米耐久財受注額が予想を上回った ことや米長期金利の上昇に転じたことも円売り・ドル買いを促し、3時30分過ぎには一時144.65円と日 通し高値を更新した。
なお、FOMCで投票権を有するデイリー米サンフランシスコ連銀総裁は大手ベンターとのインタビュー で「政策を調整する時期が来ている」「9月の利下げが軌道から外れる事態は考えにくい」などと述べた と伝わった。
ユーロドルは反落。終値は1.1161ドルと前営業日NY終値(1.1192ドル)と比べて0.0031ドル程度の ユーロ安水準だった。アジア市場では一時1.1202ドルと昨年7月20日以来約1年1カ月ぶりの高値を付 けたものの、欧米市場に入るとポジション調整目的の売りが優勢となり弱含んだ。22時過ぎには一時 1.1150ドルと日通し安値を更新した。
ただ、本日はサマーバンクホリデーの祝日で英国市場が休場となったことから市場参加者も少なく、値 動きは限定的だった。24時前には1.1179ドル付近まで下げ渋った。
ユーロ円は続落。終値は161.31円と前営業日NY終値(161.58円)と比べて27銭程度のユーロ安水準。 22時過ぎに一時本日安値となる160.51円まで値を下げたものの、売り一巡後は買い戻しが優勢となり 161.48円付近まで持ち直した。ただ、アジア時間に付けた日通し高値161.55円を上抜けることは出来な かった。
【本日の東京為替見通し】ドル売りの流れは変わらずか、ロシア過去最大の空爆なども注目
本日のドル円も上値の重さは変わらないか。昨日は143.45円まで下落後は買い戻しが優勢になり、小 幅に反発して引けたが、ドル売りのトレンドが変わったと考えるのは難しいだろう。先週カンザスシティ ー連銀主催の年次シンポジウム(通称・ジャクソンホール会合)でパウエル米連邦準備理事会(FRB)議 長は米金融政策が転換点を迎えたことを強調したが、今年の米連邦公開市場委員会(FOMC)の投票メンバ ーの一人でもある、デイリー米サンフランシスコ連銀総裁も昨日は政策を調整する時期が来ていると同様 の見解を示した。デイリー総裁は「労働市場が予想以上に弱まる場合、より積極的になる必要がある」と も発言している。昨日の米長期債利回りは小幅に上昇して引けたが、市場では9月の25ベーシスポイン ト(bp)の利下げ予想は変わらないが、11月には25bpと50bpの更なる利下げ予想が拮抗している。米債 券市場はこれまでのような過熱感はないものの、着実に米金利が低下する予想は変わらず、今後発表され る米経済指標(30日の7月米個人消費支出(PCE)、6日の8月雇用統計等)を見定めて利下げ幅を確認し ていくことになるだろう。
米金利低下のドル売りは、欧州通貨や対円だけではなくアジア通貨に対しても進行していることは、ド ル円の重しになる。海外投資家はアジア通貨に対して、前回7月のFOMCの結果発表まではドルロング・ アジア通貨ショートにしていたものが、FOMC後のパウエルFRB議長の会見を境にドルショート・アジア 通貨ロングに転じた。円だけではなくアジア通貨ショートのポートフォリオの変換が、今後もドル円の上 値を抑えそうだ。
シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)でのIMM通貨先物ポジションは、円ショートからロングに転じ たとはいえ、ほぼスクエアに近い状態にある。本邦勢の中ではIMMがほぼスクエアになったことで、円キ ャリートレードの巻き戻しを期待している声もある。しかし、日米の金融政策の方向性の違いで、すぐに 円キャリートレードに海外投資家が戻るとは考えにくく、むしろまだまだ今後は円を買う余地があるとの 声が海外勢の中では多い。
また、引き続き地政学リスクの動向にも目を向けておきたい。昨日ロシアがウクライナに対して過去最 大となる空爆を実施している。ロシアは、長期的戦略の一つであるウクライナのエネルギーインフラへの 攻撃を開始したことを認め、すべての標的が攻撃されたと発表した。ウクライナ情勢だけではなく、ヒズ ボラとイスラエルの応戦などもあり、地政学リスクの変化も相場に影響を与えそうだ。
なお、本日のアジア時間では本邦の7月企業向けサービス価格指数が発表される以外は、市場を動意づ ける経済指標の発表は予定されていない。しかしながら、依然として流動性は悪化したままでもあり、金 利や株式市場の動向次第で大きな値幅をもって動く可能性もある。
【本日の重要指標】※時刻表示は日本時間
<国内>
○08:50 ◇ 7 月企業向けサービス価格指数(予想:前年比2.9%)
<海外>
○15:00 ◇ 9 月独消費者信頼感指数(Gfk 調査、予想:▲18.2)
○15:00 ☆ 4-6 月期独国内総生産(GDP)改定値(季節調整済、予想:前期比▲0.1%/前年同期比▲0.1%)
○15:00 ☆ 4-6 月期独GDP 改定値(季節調整前、予想:前年同期比0.3%)
○19:45 ◎ クノット・オランダ中銀総裁、講演
○21:00 ◇ 7 月メキシコ貿易収支(予想:14.74 億ドルの赤字)
○22:00 ◇ 6 月米住宅価格指数(予想:前月比0.1%)
◇ 4-6 月期米住宅価格指数
○22:00 ◎ 6 月米ケース・シラー住宅価格指数(予想:前年比6.0%)
○23:00 ◎ ナーゲル独連銀総裁、講演
○23:00 ◎ 8 月米消費者信頼感指数(予想:100.7)
○23:00 ◎ 8 月米リッチモンド連銀製造業景気指数
○28 日02:00 ◎ 米財務省、2 年債入札
※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。
【前日までの要人発言】
27日03:20デイリー米サンフランシスコ連銀総裁
「FRBはインフレ率を目標の2%まで引き下げる必要」
「労働市場は完全に均衡している」
「9月の利下げを阻むようなことは考えにくい」
「政策を調整する時期が来ている」
「インフレが低下しているのに、政策を引き締め続ける のは望まない」
「目標に対するリスクは今や均衡」
「労働市場が予想以上に弱まる場合、より積極的になる 必要がある」
※時間は日本時間
【日足一目均衡表分析】
<ドル円=目先底堅さ示す可能性も転換線がやがて抵抗に>
下影陽線引け。低下傾向の一目均衡表・転換線が示唆する
さえない推移が先行した。5 日以来の安値143.45 円まで一時
下落している。
しかし同水準を目先の底に、144 円半ばへ戻して引ける底
堅さもあった。本日145 円近辺で推移する5 日移動平均線を
上回る場面もあるか。ただ、本日の146.42 円から明日にも
低下を再開する転換線がやがて抵抗になりそう。
レジスタンス1 145.72(8/15-26 下落幅の38.2%戻し)
前日終値 144.53
サポート1 143.45(8/26 安値)
サポート2 143.01(ピボット・サポート1)
<ユーロドル=調整入るも5 日線を下回る動きにならず>
陰線引け。先週末に昨年7 月以来の1.12 ドル台回復を果
たした後を受けて調整が入った。しかし安値は1.1150 ドル
までと、上昇中の5 日移動平均線1.1149 ドルを下回る動き
にはならなかった。本日1.1155 ドル前後へ切り上がった同
線を下回る場面も出てきそうだが、大きく下抜ける動きまで
には発展しにくいとみる。
レジスタンス1 1.1223(ピボット・レジスタンス2)
前日終値 1.1161
サポート1 1.1105(8/23 安値)
<ポンド円=転換線前後の攻防が続くこと想定>
小陽線引け。一目均衡表・転換線189.95 円を割り込む場
面もあったが189.51 円を安値に折り返した。190 円台を回復
してNY の取引を終えている。転換線は本日190.14 円へ切り
上がった。引き続き同線前後の攻防が続くことを想定。ただ、
下支えされても192.08 円前後で上昇中の200 日移動平均線
の動きに沿った緩やかな上昇ペースにとどまりやすいだろ
う。
レジスタンス1 191.58(ピボット・レジスタンス2)
前日終値 190.60
サポート1 188.95(8/21 安値)
<NZ ドル円=転換線前後で底堅さ示す展開が続くか>
下影陰線引け。下押しが先行したものの安値は89.13 円と、
一目均衡表・転換線89.14 円付近にとどまった。本日89.23
円へ切り上がる転換線前後で引き続き底堅さを示す展開が
期待できる。一方で基準線88.50 円の低下が続く見込みであ
る点には注意。同線の動きに引っ張られる流れへ転じるリス
クも警戒しておきたい。
レジスタンス1 90.27(8/23 高値)
前日終値 89.65
サポート1 89.13(8/26 安値)