デイリーレポート 2023年6月29日
June 29, 2023
【前日の為替概況】ドル円、続伸 FRB 議長が 7 月・9 月連続利上げの可能性に言及
28 日のニューヨーク外国為替市場でドル円は続伸。終値は 144.48 円と前営業日 NY 終値(144.07 円) と比べて 41 銭程度のドル高水準だった。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長がポルトガルのシントラ で開催中の欧州中央銀行(ECB)フォーラムで「大半の当局者は年内にあと 2 回の利上げを見込んでいる」 「(7 月、9 月の)連続利上げの可能性を選択肢から排除しない」と述べた一方、植田日銀総裁は「基調的 インフレ率が目標の 2%を下回っているため、金融緩和を続けている」と述べ、緩和維持の正当性を主張。 日米金融政策の違いが改めて意識されると円売り・ドル買いが優勢となり、24 時前に一時 144.62 円と昨 年 11 月以来の高値を付けた。
ただ、買い一巡後はやや伸び悩んだ。政府・日銀が昨年 9 月、24 年ぶりに円買い介入を実施した水準 である 145 円に接近したことで介入への警戒感が強まった。市場では「チャート上で重要なポイントであ る 2022 年 10 月 27 日の安値 145.11 円がレジスタンスとして意識されている」との声も聞かれた。
ユーロ円は反落。終値は 157.67 円と前営業日 NY 終値(157.92 円)と比べて 25 銭程度のユーロ安水準。 日欧金融政策の方向性の違いに着目した円売り・ユーロ買いが先行すると、23 時前に 158.00 円と 2008 年 9 月以来 15 年ぶりの高値を付けたものの、その後失速した。政府・日銀による円買い介入への警戒か ら、一時本日安値となる 157.23 円まで値を下げた。ユーロドルの下落につれた売りも相場の重し。
なお、ラガルド ECB 総裁は ECB フォーラムで「基本シナリオ通りなら、7 月に利上げする可能性が高い」 「現時点では利上げ休止は考えていない」「コアインフレが低下している十分な証拠はない」などと発言 した。
ユーロドルは 3 営業日ぶりに反落。終値は 1.0913 ドルと前営業日 NY 終値(1.0961 ドル)と比べて 0.0048 ドル程度のユーロ安水準だった。欧州債利回りの低下などを手掛かりにユーロ売り・ドル買いが先行。市 場では「月末・四半期末を控える中、ロンドン 16 時(日本時間 24 時)のフィキシングに絡んだドル買い のフローが観測された」との指摘もあり、一時 1.0897 ドルと日通し安値を更新した。
ただ、フィキシング通過後は 1.09 ドル台前半で下げ渋った。米 10 年債利回りが 3.70%台まで低下し たことも相場を下支えした。
【本日の東京為替見通し】口先介入が絶好の円売り機会に、元・豪ドルの動きにも要注目
本日の東京時間も円安基調は変わらずか。昨日も神田財務官を始め、財務省関係者や政府要人から円安 けん制発言が伝わり、一時的に円が買い戻される場面があった。しかし、円が買い戻される場面は、むし ろ絶好の円売りの機会を与え、実弾介入が無い限りは円安の流れを止めることが難しくなっている。また、 本日の日経新聞にも指摘されているが、昨年 9 月の時とは日経平均の水準が違うこと、円安を利用したイ ンバウンド客の増加などもあり、実弾介入は当面行われないとの思惑もある。このこともあり、円売りが 遅れている投資家や企業は、市場の動きが円安に傾いたときの機会を狙っているとも伝わっている。
昨日は欧米中銀関係者が今後の利上げを示唆した半面、植田日銀総裁は「基調的なインフレは目標を下 回っている」と発言するなど、依然として利上げには慎重な姿勢を示していることも円安を根付かせてい る。もっとも、「刈り込み平均値」は加速方向となっていることもあり、植田総裁が見通しの修正を行う 可能性もあることには、注意をしておきたい。
円安方向は継続されそうだが、長期間為替介入が行われなった場合は、最初の介入は東京勢が参入して いる時間帯に行われる傾向があることや、昨年の最初に円買い介入が行われた 9 月 22 日のドル円の水準 が 145.90 円に到達した後だったことを考えると、145 円に近づいていることで東京時間は慎重にならざ るをえず、円安のスピードは緩やかなものになるだろう。
円以外の通貨では、人民元(CNH)と豪ドルの値動きに注目。昨日のドル CNH は一昨日の元買い介入の 水準を大きく上回り、元の年初来安値を更新している。本日は日本時間 10 時過ぎに中国人民銀行が発表 する基準値や、その後の元買い介入があるかなどが焦点になる。ドル CNH の値動きが他通貨にも影響を与 えることがここ最近は多くなっていることで、注意を怠らないように見ておく必要がありそうだ。
また、豪ドルは昨日発表された 5 月の消費者物価指数(CPI)が市場予想や前月から大幅に下回ったこ とで、欧米時間でも上値が重く推移した。豪ドルは元の動きにも敏感に反応するだけでなく、本日は豪州 の小売売上高も発表されることで、より神経質な動きになりそうだ。
【本日の重要指標】
※時刻表示は日本時間
<国内>
○08:50 ◇ 5 月商業販売統計速報(小売業販売額、予想:前年比 5.4%)
○08:50 ◇ 対外対内証券売買契約等の状況(週次・報告機関ベース)
○14:00 ◇ 6 月消費動向調査(消費者態度指数 一般世帯、予想:36.1)
<海外>
○10:00 ◇ 6 月 ANZ 企業信頼感
○10:30 ◎ 5 月豪小売売上高(予想:前月比 0.1%)
○15:30 ◎ パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、デコス・スペイン中銀総裁、スペイン中銀主催のイベントでパネル討議に参加
○16:30 ◎ スウェーデン中銀、政策金利発表(予想:3.75%に引き上げ)
○17:00 ◇ 4-6 月期南アフリカ経済研究所(BER)消費者信頼感指数
○17:30 ◇ 5 月英消費者信用残高(予想:15 億ポンド)
○17:30 ◇ 5 月英マネーサプライ M4
○18:00 ◎ 6 月ユーロ圏経済信頼感指数(予想:96.0)
○18:00 ◎ 6 月ユーロ圏消費者信頼感指数(確定値、予想:▲16.1)
○18:30 ◇ 5 月南アフリカ卸売物価指数(PPI、予想:前月比 0.5%/前年比 7.3%)
○21:00 ◎ 6 月独消費者物価指数(CPI)速報値(予想:前月比 0.2%/前年比 6.3%)
○21:30 ☆ 1-3 月期米国内総生産(GDP)確定値(予想:前期比年率 1.4%)
○21:30 ◎ 1-3 月期米個人消費(確定値、予想:前期比 3.8%)
○21:30 ◎ 1-3 月期米コア PCE(確定値、予想:前期比 5.0%)
○21:30 ◎ 前週分の米新規失業保険申請件数/失業保険継続受給者数(予想:26.5 万件/176.5 万人)
○23:00 ◎ 5 月米住宅販売保留指数(仮契約住宅販売指数、予想:前月比▲0.5%/前年比▲20.5%)
○30 日 01:30 ◎ テンレイロ英中銀金融政策委員会(MPC)委員、講演
○30 日 04:00 ◎ ボスティック米アトランタ連銀総裁、講演
○欧州連合(EU)首脳会議(ブリュッセル、30 日まで)
○シンガポール(ハリラヤハジ)、インド(イスラム教犠牲祭)、トルコ(犠牲祭)、休場
※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。
【前日までの要人発言】
28 日 08:00 神田財務官
「円安、過度な動きがあれば適切に対応」
「為替市場の動向を高い緊張感をもって注視」28 日 13:11 レーン欧州中央銀行(ECB)専務理事兼チーフ・エコノミスト
「7 月利上げは妥当、9 月は不透明」
「インフレが十分に鈍化するまではかなりの道のり」
28 日 14:57 鈴木財務相
「為替についてはコメントしない」
「安定した推移が望ましい」
「行き過ぎた動きには適切に対応」
「足元でやや一方的な動きがみられる」
28 日 16:18 デギンドス欧州中央銀行(ECB)副総裁
「金利についてはまだやるべきことがある」
「7 月の利上げは既定路線」
「9 月についてはデータ次第」
「景気減速は年後半も続く見込み」
28 日 16:52 ミュラー・エストニア中銀総裁
「我々が有するあらゆる手段を利用しなければならない」
「最終的な金利水準を話すのは時期尚早」
28 日 16:55 センテノ・ポルトガル中銀総裁
「ターミナルレートへと明らかに達しつつある」
「景気はすでに打撃を受けており、インフレも反応するだろう」
28 日 22:44 ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁
「基本シナリオ通りなら、7 月に利上げする可能性が高い」
「9 月にはさらなる多くの情報があるだろう」
「現時点では利上げ休止は考えていない」
「コアインフレが低下している十分な証拠はない」
28 日 22:44 ベイリー英中銀(BOE)総裁
「データはインフレが持続する兆しを示唆」
「英経済は予想よりも回復力があることを証明」
28 日 22:46 パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長
「あと 2 回の利上げが多数派」
「政策は制約的だが、十分ではない」
「連続利上げの可能性を選択肢から排除せず」
「景気後退(リセッション)の可能性は高まっているものの、最も可能性の高いケースではない」
28 日 22:50 植田日銀総裁
「基調的なインフレは目標を下回っている」
「円相場は多くの要因、グローバルな政策に影響される」
「円相場を注視していく」
「インフレ率は年内に向けて低下していくと予想」
「インフレ予測の後半部分についてかなりの確信が持てれば、政策変更を再考する十分な理由になる」
29 日 00:51 ストゥルナラス・ギリシャ中銀総裁
「7 月が最後の利上げと言うことはできない」
「基調的な価格ダイナミクスは持続的」
29 日 01:56 ビルロワドガロー仏中銀総裁
「金利は最終水準に近づいている」
「ECB は辛抱強く最終金利を維持する必要」
※時間は日本時間
【日足一目均衡表分析】
<ドル円=高値警戒感あるが転換線の上昇など安心材料も>
下影陽線引け。高値警戒感もあり 143.70 円前後で推移し
ていた 5 日線を割り込む場面もあった。しかし前日安値
143.29 円などその他の目先的な下値めどを下抜けることな
く深押しを回避。上向きの流れが続いた。144.62 円まで昨年
11 月以来の高値を更新している。引き続き高値警戒感がある
なか調整安で下振れるリスクもくすぶったまま。ただ、上昇
傾向が続く一目均衡表・転換線が 142.92 円まで切り上がり、
さらに水準を上げそう。下押し局面で下げ渋りそうなポイン
トが押し上がってきたことは安心感を誘う材料となる。
レジスタンス 2 145.68(2022/11/2 安値)
レジスタンス 1 145.11(2022/10/27 安値)
前日終値 144.48
サポート 1 143.73(6/28 安値)
<ユーロドル=転換線にらみ不安定に振れても底堅さ維持へ>
下影陰線引け。1.0929 ドルへ小幅に切り上がった転換線を
割り込む場面もあった。1.09 ドル割れまで下値を探ったもの
の 1.09 ドル台を回復して NY を引けている。転換線付近の上
下が続くか。現状レンジの相場推移なら同線は来週半ばにい
ったん低下する公算。相場展開も同線の振れが示唆するよう
に安定を欠く可能性も。だが、転換線はすぐさま上昇方向へ
いったん切り返す。相場も一定の底堅さを維持するとみる。
レジスタンス 1 1.0977(6/27 高値)
前日終値 1.0913
サポート 1 1.0845(6/23 安値)
<ポンド円=転換線が切り上がり、反落しても値幅限定しそう>
下影陰線引け。182 円台で上昇中の 5 日移動平均線を割り
込みつつも同線付近からの下放れを回避し、182 円台を維持
できている。いったん頭打ちの感も生じつつあるが、上昇傾
向を続けてきた一目均衡表・転換線が 181.85 円まで切り上
がった。同線付近で底堅さを示し、反落幅を限定することが
期待できる。
レジスタンス 1 183.15(6/27-28 下落幅の 61.8%戻し)
前日終値 182.56
サポート 1 181.85(日足一目均衡表・転換線)
<NZ ドル円=NY 終値で転換線を割り込む>
下影大陰線引け。先週末 23 日に下振れて以来の水準 87.61
円まで急落した。一目均衡表・転換線 87.92 円を下回って NY
を引けている。転換線はまだ上昇傾向継続が見込める。同線
を下回る現水準からの浮上も期待したいところ。だが、転換
線をしっかり割り込んだ感もあり反発が鈍る可能性も視野
に入れて臨みたい。戻すことができても転換線のじり高に沿
った緩慢なペースにとどまりそうだ。
レジスタンス 1 88.29(6/27-28 下落幅の半値戻し)
前日終値 87.74
サポート 1 87.12(6/21 安値)