ウィークリーレポート 2024年8月30日

週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円)

August 30, 2024

ドル円、米 8 月雇用統計に注目

◆ドル円、米 8 月雇用統計の失業率に注目

◆米 8 月 ISM 製造業・非製造業景気指数、とりわけ雇用指数を注視

◆ユーロドル、7 月ユーロ圏生産者物価指数や小売売上高などを見極め

予想レンジ

ドル円 143.00-148.00 円

ユーロドル 1.0900-1.1300 ドル

9 月 2 日週の展望

ドル円は、ウクライナ戦争や中東の地政学リスクに警戒しながら、米 8 月の雇用統計をはじめ、 ISM 製造業・非製造業景気指数などを見極めることになる。

米 8 月雇用統計の予想は、失業率が 7 月の 4.3%から低下して 4.2%。非農業部門雇用者数(NFP) は 7 月の 11.4 万人からは増加して 16.5 万人の増加が見込まれている。21 日に米労働省が公表し た雇用者数の年次ベンチマークの大幅下方修正や WSJ 紙が「NFP は雇用者数を過大評価している」 と報じているように、市場では NFP への信頼感が低下しており、失業率に注目したい。失業率が 予想より悪化して 4.3%以上だった場合は、9月米連邦公開市場委員会(FOMC)での FF金利の 0.50% 利下げ開始への観測が高まるだろう。また、予想通り 4.2%程度だった場合は、0.25%の利下げ 見通しのままだと思われる。

また、8 月 ISM 製造業・非製造業景気指数では、ヘッドラインの数字だけではなく、内訳の「物 価指数」や「雇用指数」にも注目しておきたい。7 月の ISM 製造業雇用指数は 43.3 で 6 月の 49.3 から低下、非製造業雇用指数は 51.1 で 6 月の 46.1 から上昇していた。なお、8 月の米消費者信 頼感指数では、職が「十分」と「就職困難」の回答から算出する労働市場格差に関する指数は 7 月の 17.1 から 16.4 となり、2021 年 3 月以来の水準に縮小している。 現在、CME が算出する「フェドウオッチ」では、年内の利下げ幅は 1.0%となり、年末の FF 金 利誘導目標は 4.25-4.50%まで低下すると見込まれている。 更には、地政学リスクの最悪のシナリオとして、ウクライナ戦争でロシアが戦術核の使用に踏 み切る可能性や、イランがイスラエルに対して再度の報復攻撃に踏み切る可能性などには引き続 き警戒しておきたい。

ユーロドルは、8 月ユーロ圏生産者物価指数や小売売上高を見極めつつ、9 月 12 日の欧州中央 銀行(ECB)理事会での利下げの可能性を探ることになる。また、ウクライナ戦争の地政学リスク にも当然警戒する必要があるだろう。

8 月 26 日週の回顧

ドル円は、23 日のジャクソンホール会議でパウエル FRB 議長が 9 月 FOMC での利下げ開始を示 唆したことが意識され週明には一時 143.45 円まで下落した。ただ、143 円台では本邦実需筋から のドル買い需要が根強かったほか、米 4-6 月期 GDP 改定値が年率 3.0%へ上方修正されたことな どから 145.55円まで反発した。ユーロドルは 2023年 7月以来の高値 1.1202ドルまで上昇した後、 独 8 月インフレ率の伸び率鈍化や米 10 年債利回りの 3.88%台への上昇などにより 1.1056 ドルま で反落している。(了)

週間展望・回顧(豪ドル、南ア・ランド)

August 30, 2024

豪ドル、対ドルで年初来高値更新も

◆豪ドル、インフレ指標の予想比上振れが支えに

◆豪ドル、GDP が予想を上回れば対ドルでは年初来高値更新も

◆ZAR、BER 公表予定の 7-9 月期企業信頼感とインフレ予想に注目

予想レンジ

豪ドル円 96.00-102.00 円

南ア・ランド円 7.90-8.30 円

9 月 2 日週の展望

豪ドルは堅調地合いを維持しそうだ。先週、カンザスシティー連銀主催の経済シンポジウム(ジ ャクソンホール会合)で、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が「米金融政策が転換点を迎え た」との見解を強調したことを受けて、豪ドルは対ドルで堅調推移となっている。 今週発表された 7 月の豪消費者物価指数(CPI)は前回の 3.8%から 3.5%へ低下したものの、 市場予想の 3.4%を上回り豪金利は上昇した。また、RBA が重要視しているトリム平均値も 4.1% から下がったものの 3.8%と依然として高い水準を維持。FRB が利下げに傾く中で、豪準備銀行 (RBA)は依然として高インフレに悩まされている。利下げに舵を切るのは当面先になると予想さ れていることが豪ドルの支え。更に米金利低下により、今週はダウ平均が一時史上最高値を更新 するなど、株上昇もリスク選好に敏感な豪ドルの支えになる。

また、来週も豪ドル/NZ ドルの動きにも注目したい。今週発表された 4-6 月期豪民間設備投資 はプラス予想に反してマイナスとなった反面、8 月ニュージーランド(NZ)ANZ 企業信頼感は強い 結果。豪ドル/NZ ドルは 6 月中旬の水準まで一時下落した。ただ、4 年ぶりに NZ 準備銀行(RBNZ) が利下げを開始した一方、依然として豪金利は高止まりしている。買い場探しとなりそうだ。 来週は豪州からは、9 月 2 日に 7 月住宅許可件数、9 月 3 日に 4-6 月期国際収支、9 月 4 日に 同期国内総生産(GDP)、9 月 5 日に 7 月貿易収支が発表される。GDP が市場予想を上回った場合に は、豪ドルは対ドルで更に上げ幅を拡大し、年初来高値を更新していく可能性が高まる。なお、9 月 5 日にブロック RBA 総裁の講演が予定されているが、思春期のうつ病と自殺に関する研究を支 援するためのアニカ財団での講演。経済問題などに言及することはほぼないと思われる。

南アフリカ・ランド(ZAR)は底堅く推移しそうだ。米金利の低下と堅調な株式市場の動きが ZAR を支え、対ドルでは今週も年初来高値に接近した。また、引き続き国民統一政府(GNU)への 期待も ZAR の買い要因となっている。来週は 9 月 3 日に 4-6 月期 GDP、9 月 5 日に同期経常収支 が発表される。ただ、GNU に対する評価は 4-6 月期の指標ではまだ現れない。指標に対する市場 の反応は限られそうだ。むしろ、日程は定まっていないが、南ア経済研究所(BER)が 9 月上旬に 7-9 月期の企業信頼感とインフレ予想を発表する予定。こちらの結果から GNU に対する評価等が 分かることになるため、市場への影響は大きくなるかもしれない。

8 月 26 日週の回顧

豪ドルは対ドルでは米金利の低下に支えられ、1 月以来となる 0.68 ドル台まで強含んだ。豪ド ル円はドル円が流動性の悪化で方向感ない動きとなったが、レンジは狭く 97 円台から 98 円台の 間で上下した。ZAR は対ドルでは米金利の低下や南ア経済への期待感の高まりで、一時年初来高 値に迫った。ZAR 円は上下の振幅を繰り返したが、レンジは限られたものだった。(了)

週間展望・回顧(ポンド、加ドル)

August 30, 2024

加ドル、中銀の声明に注目

◆相場全体としては週末の米雇用統計に注目

◆ポンド、主要国のなかでは利下げペースが鈍いとの見方が支え

◆加ドル、追加利下げが確実視されるなか中銀の声明内容に注目

予想レンジ

ポンド円 187.50-194.50 円

加ドル円 105.50-109.50 円

9 月 2 日週の展望

為替相場全体としては週末の米 8 月雇用統計が注目される。パウエル米連邦準備理事会(FRB) 議長のジャクソンホール会議での発言などを受けて、9 月連邦公開市場委員会(FOMC)での利下 げはほぼ確実視されている。市場の目線は 9 月 FOMC で利下げ幅が 0.25%になるかそれとも 0.50% になるかに向けられている。FRB の政策はインフレとの戦いから「雇用を守る」局面に変わりつ つあり、雇用統計の結果は FRB の政策判断に一層影響を与えることになる。結果次第ではドル相 場だけではなくドル円主導でクロス円も値幅を伴った動きが見込まれる。

今週、ポンド独自の手がかりが乏しかったが、来週も英経済指標は 8 月製造業・サービス部門 購買担当者景気(PMI)・改定値や 8 月建設業 PMI 程度で材料難。ドルや円相場に振らされる展開 となりそうだ。イングランド銀行(英中銀、BOE)が FRB より先に利下げに踏み切ったが、追加利 下げをめぐる不透明感が高く、主要国のなかで利下げペースは鈍いとの見方が強いことがポンド の下支えとなっている。ベイリーBOE 総裁はジャクソンホール会議の講演で、「長期的な物価圧力 は緩和しつつある」としながらも、「インフレが抑制されたと確信するにはまだ早い」と述べた。 発言に対する市場の反応は、「追加利下げに慎重」と「追加利下げに前向き」との見方に分かれて いる。追加利下げの有無や時期は結局、今後のデータ次第ということになるだろう。 加ドルは、来週のカナダ中銀(BOC)会合の声明内容に注目。BOC は 6 月会合で主要 7 カ国の先 頭に立って利下げに踏み切り、7 月会合で追加利下げを実施した。来週の会合では 3 会合連続で 利下げを決断し、政策金利を 4.25%に引き下げることが確実視されている。

7 月会合後に発表された経済指標では、7 月雇用者数が予想を大幅に下回る 0.28 万人減、失業 率は前月から横ばいの 6.4%、BOC が注視する正規雇用の平均時給の伸びは 5.2%と 6 月の 5.6% から鈍化した。また、7 月消費者物価指数(CPI)は前年比 2.5%と予想と一致するも、伸びはコ ロナ禍を経て物価が上昇し始めた 2021 年 3 月以来の低水準となった。BOC は来週の会合を含め年 内に 3 回の会合を残しているが、インフレ圧力が弱まりつつあることや労働市場の鈍化に対する 懸念の高まりを受けて、短期金融市場では 0.25%×3 回の利下げを見込んでいる。声明内容で BOC の追加利下げへの積極性を見極めたい。

8 月 26 日週の回顧

先週末のパウエル FRB 議長のハト派発言を背景としたドル売りの流れが先行し、ポンドドルは 1.3260 ドル台まで 2022 年 3 月以来の高値をつけたが、米 4-6 月期 GDP・個人消費の上昇修正を受 けてドルに買い戻しが入り 1.31 ドル半ばまで押し戻された。また、ドル/加ドルは 1.34 加ドル 半ばで加ドル高が一服した。加 6 月週平均賃金は前年比 3.99%と前回の 4.11%(修正値)から伸 びが鈍化したが反応は見られなかった。ポンド円は 189 円半ば、加ドル円は 106 円前半で下げ渋 り、買い戻しが入るなどドル円同様に方向感は限られた。(了)