デイリーレポート 2023年6月30日

30 June, 2023

【前日の為替概況】ドル円、3 日続伸 米 GDP など予想より強く米金利上昇・ドル買い先行

29 日のニューヨーク外国為替市場でドル円は 3 日続伸。終値は 144.76 円と前営業日 NY 終値(144.48 円)と比べて 28 銭程度のドル高水準だった。1-3 月期米国内総生産(GDP)確定値や前週分の米新規失 業保険申請件数が予想より強い内容だったことが分かると、米金利の上昇とともに全般ドル買いが先行。 23 時頃には一時 144.90 円と昨年 11 月以来の高値を更新した。その後の下押しも 144.53 円付近にとどま り、引けにかけては 144.89 円まで再び強含んだ。日米金融政策の違いが意識される中、押し目買い意欲 も旺盛だ。

なお、米 10 年債利回りは一時 3.8658%前後と 3 月 10 日以来の高水準を付けた。

ユーロドルは続落。終値は 1.0865 ドルと前営業日 NY 終値(1.0913 ドル)と比べて 0.0048 ドル程度の ユーロ安水準だった。21 時発表の 6 月独消費者物価指数(CPI)速報値が予想を上回ったことを受けてユ ーロ買い・ドル売りが先行。一時 1.0941 ドルと日通し高値を付けた。ただ、その後発表された米経済指 標が良好な内容だったことが伝わると、全般ドル買いが優勢となり一時 1.0860 ドルと日通し安値を更新 した。

ユーロ円も続落。終値は 157.28 円と前営業日 NY 終値(157.67 円)と比べて 39 銭程度のユーロ安水準。 ユーロドルの下落につれた売りが先行し一時 157.28 円付近まで値を下げたものの、アジア時間に付けた 日通し安値 157.25 円がサポートとして意識されると下げ渋った。

【本日の東京為替見通し】円安基調変わらず、東京都区部CPI・期末・中国PMIなど注目材料豊富

本日も円安基調は変わらずか。本日まず注目されるのが、6 月の東京都区部消費者物価指数(CPI)。植 田日銀総裁は 28 日にポルトガル・シントラで行われた欧州中央銀行(ECB)の中央銀行フォーラムで「基 調的なインフレは目標を下回っている」と発言した。しかしながら、表面的なインフレ率だけでなく、刈 り込み平均値も 5 月は 3.1%まで上昇し、2001 年 1 月以降で過去最高に並んでいる。6 月の東京都区部の インフレがさらに加速し、6 月の全国 CPI も同様な結果になれば、日銀が重い腰を持ち上げイールドカー ブコントロール(YCC)の上限拡大などを行う可能性もあるだろう。なお、植田総裁は「見通しの修正が 必要になれば速やかに行動したい」「YCC、ある程度のサプライズが発生することはやむを得ない」と述べ ていることもあり、今後のサプライズには備えておく必要がありそうだ。

円安地合いが続くと思われるが、長期間為替介入が行われなった場合は、最初の介入は東京勢が参入し ている時間帯に行われる傾向があることや、昨年の最初に円買い介入が 9 月 22 日は、ドル円が現行水準 から離れていない 145.90 円に到達した後だったことを考えると、東京時間は円安のスピードは緩やかな ものになるだろう。

もっとも、現時点では日本と中国以外の中央銀行は、今後も金融引き締めを継続する傾向は変わらず、 日米、日欧中銀などとの方向性の違いは鮮明で、円売りが弱まる流れでもないことは確かだ。なお、本日 は月末・半期末・5・10 日(ゴトー日)が重なっていることもあり、東京仲値やロンドンフィキシングに かけて、通常以上に大きなオーダーが入ってくることが予想される。当該時間には相場が急転することに は注意したい。

円以外の通貨では、昨日同様に人民元(CNH)と豪ドルの値動きに注目したい。昨日はドル CNH の基準 値が市場予想よりも大幅にドル安・元高で決定されたことを受けて、オフショア市場でも CNH 買い・ドル 売りが強まり、豪ドルを始め複数の通貨でもドル安に連れた。本日も CNH の基準値と、その後に発表され る 6 月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)の結果が市場を動意づけるきっかけになるかもしれない。 なお、中国製造業 PMI は 5 月に続き、景況の強弱を判断する節目 50 を割り込む 49.0 との予想になってい る。

【本日の重要指標】

※時刻表示は日本時間

<国内>

○08:30 ◎ 6 月東京都区部消費者物価指数(CPI、生鮮食料品除く総合予想:前年比 3.4%)

○08:30 ◎ 5 月完全失業率(予想:2.6%)

○08:30 ◎ 5 月有効求人倍率(予想:1.32 倍)

○08:50 ◎ 5 月鉱工業生産速報(予想:前月比▲1.0%/前年比 4.3%)

○14:00 ◇ 5 月新設住宅着工戸数(予想:前年比▲2.7%)

○19:00 ◇ 外国為替平衡操作の実施状況(介入実績)

<海外>

○10:30 ◎ 6 月中国製造業購買担当者景気指数(PMI、予想:49.0)

○15:00 ◇ 5 月独輸入物価指数(予想:前月比▲1.5%/前年比▲9.2%)

○15:00 ◎ 5 月独小売売上高(予想:前月比横ばい/前年比▲4.9%)

○15:00 ◇ 6 月英ネーションワイド住宅価格指数(予想:前月比▲0.2%)

○15:00 ☆ 1-3 月期英国内総生産(GDP)改定値(予想:前期比 0.1%/前年比 0.2%)

○15:00 ◇ 1-3 月期英経常収支(予想:85 億ポンドの赤字)

○15:30 ◇ 5 月スイス小売売上高

○15:45 ◇ 6 月仏消費者物価指数(CPI)速報値(予想:前月比 0.2%/前年比 4.6%)

○15:45 ◇ 5 月仏卸売物価指数(PPI)

○15:45 ◇ 5 月仏消費支出(予想:前月比 0.7%)

○16:00 ◇ 6 月スイス KOF 景気先行指数(予想:89.0)

○16:55 ◎ 6 月独雇用統計(予想:失業率 5.6%/失業者数変化 1.40 万人)

○18:00 ☆ 6 月ユーロ圏消費者物価指数(HICP)速報値(予想:前年比 5.6%)

○18:00 ☆ 6 月ユーロ圏 HICP コア速報値(予想:前年比 5.5%)

○18:00 ◎ 5 月ユーロ圏失業率(予想:6.5%)

○21:00 ◎ 5 月南アフリカ貿易収支(予想:60 億ランドの黒字)

○21:00 ◇ 5 月メキシコ失業率(季節調整前、予想:2.80%)

○21:30 ☆ 4 月カナダ GDP(予想:前月比 0.2%/前年比 1.9%)

○21:30 ◎ 5 月米個人消費支出(PCE、予想:前月比 0.2%)

◎ 5 月米個人所得(予想:前月比 0.3%)

☆ 5 月米 PCE デフレーター(予想:前年比 3.8%)

☆ 5 月米 PCE コアデフレーター(予想:前月比 0.3%/前年比 4.7%)

○22:45 ◎ 6 月米シカゴ購買部協会景気指数(予想:43.8)

○23:00 ◎ 6 月米消費者態度指数(ミシガン大調べ、確報値、予想:63.9)

○トルコ(犠牲祭)、休場

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。

※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。

※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

【前日までの要人発言】

27 日 11:54 李強中国首相

「第 2 四半期の経済成長、第 1 四半期を上回る見通し」27 日 12:05 鈴木財務相

「為替、急速で一方的な動きが見られる」

「強い緊張感を持って注視、行き過ぎた動きに適切に対応」

「円安、プラス・マイナス両方の様々な影響」

27 日 12:15 ロバートソン・ニュージーランド(NZ)財務相

「金融政策委員会(MPC)の権限と憲章が更新された」

「MPC の枠組みの変更は僅か」

「MPC はインフレ率を 1%から 3%の間にすることを達成し、維持することをこれから必要とする」

「MPC は、金融リスクに関する決定の主な考慮事項を伝えなければならない」

27 日 14:05 カザークス・ラトビア中銀総裁

「金利は 7 月以降に引き上げられると予想」

「(市場関係者が)2024 年の初めの利下げにかけているのは間違え」

27 日 17:05 ラガルド ECB 総裁

「昨年からの利上げの累積的効果は未確認」

「ターミナルレート(利上げの最終到達点)に到達した兆候はない」

「ユーロ圏のインフレは高すぎる、賃金上昇からの影響が最近増加」

27 日 18:23 シムカス・リトアニア中銀総裁

「利上げサイクルはまだ終わっていない」

「インフレ目標 2%を達成するため、制約的な金利水準まで引き上げる必要」

「9月理事会での利上げの選択肢は排除されるべきではない」

28 日 02:05 ウンシュ・ベルギー中銀総裁

「スタグフレーションは基本シナリオではない」

「コアインフレが緩やかにならなければさらなる行動が必要」

「利上げ休止にはコアインフレの減速が著しく示されることが必要」

※時間は日本時間

【日足一目均衡表分析】

<ドル円=すう勢を示す 5 日線は 144 円台へ上昇>

下影小陽線引け。目先のすう勢を示す 5日移動平均線は 144円台まで上昇した。同線付近の底堅さを維持し、144.90 円まで昨年 11 月以来の高値更新が続いている。5 日線は本日 144.32 円前後へ切り上がって推移。下押しを同線や昨日安値 144.14 円付近にとどめ、堅調な推移を続けるとみる。高値圏の調整で反落しても、現水準 143.06 円から来週中にも 144 円台への上昇が見込まれる一目均衡表・転換線が支えとなり大きな崩れを防ぐとみる。

レジスタンス 2 145.68(2022/11/2 安値)
レジスタンス 1 145.11(2022/10/27 安値)
前日終値 144.76
サポート 1 144.14(6/29 安値)

<ユーロドル=雲のねじれに差し掛かり神経質な状態>

上影陰線引け。1.08 ドル半ばで低下中の一目均衡表・雲の上限の動きへ沿うように下値を探った。週をまたいで相場の潮目変化も生じやすい雲のねじれが発生する。1.0836 ドル前後で推移する 90 日移動平均線や一目・基準線 1.0824 ドルといった水準付近で底堅さを示し、雲のねじれ部分から下放れる展開は回避したいところ。昨日まで 1.0806 ドルに位置していた雲の下限にも近い 15 日安値 1.0804 ドルや 1.08 ドルの節目を維持できるかもポイントになる。

レジスタンス 1 1.0919(6/27-29 下落幅の半値戻し)
前日終値 1.0865
サポート 1 1.0804(6/15 安値)

<ユーロ円=5 日線を下回り推移、転換線が支えに>

陰線引け。28 日に 2008 年以来の高値を 158.00 円まで更新して以降、高値圏で一定の底堅さを維持してきた。本日は朝方から 157.34 円前後へ切り上がった 5 日移動平均線を下回って推移。調整の反落が進む展開も想定しておきたい。ただ、来週には 157 円台までの上昇も予想される一目均衡表・転換線 156.03 円がサポートとして機能しそう。大きな下振れは回避できるだろう。

レジスタンス 1 158.00(6/28 高値=年初来高値)
前日終値 157.28
サポート 1 156.81(ピボット・サポート 2)

<豪ドル円=低下傾向の転換線付近が引き続き重そう>

陽線引け。一目均衡表・転換線を下回る水準で一時 96 円台を回復した。しかし、本日 96.29 円へ低下する転換線付近が引き続き重そう。戻すことができても 27 日高値 96.50 円や 23 日高値 96.85 円といった節目が抵抗になるだろう。95.16円前後で上昇中の 21日移動平均線付近の底堅さを維持できるか注視したい。

レジスタンス 1 96.29(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 95.80
サポート 1 95.16(21 日移動平均線)