ウィークリーレポート 2024年9月6日
週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円)
September 6, 2024
ドル円、米 CPI に注目
◆ドル円、米 CPI の結果次第で利下げ幅予想に大きく影響
◆日銀の追加利上げについては時期尚早との声も
◆ユーロドル、賃金鈍化から利下げはほぼ確実視
予想レンジ
ドル円 141.00-148.00 円
ユーロドル 1.0900-1.1300 ドル
9 月 9 日週の展望
ドル円は、日米の金融政策に対する思惑から不安定な展開が想定される。まず、米金利見通し については、7 月雇用動態調査(JOLTS)求人件数が 2021 年 1 月以来の低調な内容だったことか ら 17-18 日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での 0.25%と 0.50%利下げ確率が 6 日時点で拮抗し ている。来週は 11 日に市場が注目する 8 月消費者物価指数(CPI)の発表があり、利下げ幅が織 り込まれていない状況のなか、結果次第ではドルが大きく上下する可能性は高いだろう。なお、 今週末からブラックアウト期間に入る為、FOMC メンバーからの見解は期待できないが、FED ウォ ッチャーである WSJ のニックティミラオス氏のコメントには十分に警戒したほうがよいだろう。
日銀の金利見通しについては、植田日銀総裁が 3 日の経済財政諮問会議で「物価の見通しが実 現していくとすれば引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整する」と発言したほ か、7 月の毎月勤労統計調査で実質賃金が 2 カ月連続でプラスとなったことを背景に追加利上げ への思惑が再び高まっているが、これについては時期尚早との声が多い。日銀総裁の発言は以前 から主張していた内容。また、実質賃金についても 6 月から 7 月にかけて夏季賞与を支払う企業 が増えたことが大きく影響を与えた可能性が高く、「8 月以降はプラスを維持するのは難しい」と の見方もある。タカ派寄りとされる高田日銀審議委員も 5 日の講演で「利上げには十分な時間を かけて影響を検証」「当面は株式・為替の変動を十分注視」と金融市場への影響に配慮した見解を 示しており、追加利上げを材料に更に円買いを進めるのは難しそうだ。
ユーロドルは、米 CPI の結果を受けたドルの動向に大きく影響を受けつつ、12 日の欧州中央銀 行(ECB)理事会を待つ展開となる。ユーロ圏の 4-6 月期・妥結賃金上昇率が前年同期比 3.6%と 1-3 月期の 4.7%から大きく鈍化したことを受けて、市場では利下げがほぼ確実視されている。利 下げに慎重姿勢だったラガルド ECB 総裁の記者会見での発言に注目が集まっており、ハト派寄り の見解が示されるかどうかに警戒したい。
9 月 2 日週の回顧
ドル円は、週明けに限れば底堅く推移し 3 日には一時 147.21 円まで上昇する場面があったが、 その後は一転して売りが優勢に。3 連休明けの米国株式相場が急落し、米長期金利も大きく低下 すると売りが加速した。米労働指標が低調な内容だったことも売りを促し、一時 142.85 円まで下 値を広げている。 ユーロドルは下値が堅い。米国株安でリスクオフムードが高まると一時 1.1026 ドルまで下げた が、低調な米労働指標が相次いだことを受けてドル売りが優勢となると 1.1120 ドルまで反発した。 (了)
週間展望・回顧(豪ドル、南ア・ランド)
September 6, 2024
ZAR、年金制度改革が好材料
◆豪ドル、米インフレ指標を受けた一時的な振れに注意
◆豪ドル、米ハイテク株の変調による株安が重しとなる可能性
◆ZAR、南アの年金制度改革が好材料
予想レンジ
豪ドル円 94.00-100.00 円
南ア・ランド円 7.80-8.30 円
9 月 9 日週の展望
豪ドルは上値の重い展開となりそうだ。来週は豪州から 10 日に 9 月ウエストパック消費者信頼 感指数や 8 月 NAB 企業景況感指数などが発表されるものの、豪ドル相場への影響は限られると予 想される。今週と同じくドル相場や投資家のリスク志向の行方など外部要因に振らされる展開と なりそうだ。
注目は 11-12 日に公表される米国のインフレ指標。翌週(17-18 日)に米連邦公開市場委員会 (FOMC)を控えるなか、インフレ指標を巡って市場も神経質にならざるを得ないだろう。9 月 FOMC で利下げが見込まれている一方、インフレの高止まりが続く豪州では利下げ開始が遅れると予想 されているため、金利先高観という点では豪ドルが相対的に優位な立場にあるものの、米消費者 物価指数(CPI)発表直後の一時的な相場の振れには注意が必要だ。
また、株式市場の動向も豪ドルにとってリスク要因になる。米国株式市場は前週末までダウ平 均が連日で過去最高値を更新するなど堅調推移を続けていたが、連休明け 3 日の取引から急変。 半導体大手エヌビディアの株価下落をきっかけに米ハイテク株が軒並み安となり、日経平均株価 を始めとして世界的な株安へと波及した。相場の変動リスクが高い局面では、投資家のリスク志 向に敏感な豪ドルなどオセアニア通貨は避けられやすい傾向にあるため、株式市場の動揺が落ち 着くまでは豪ドル買いを進めにくい状態が続くだろう。
隣国の NZ も 10 日に 4-6 月期製造業売上高の発表がある程度で、基本的に手掛かり材料は乏し い。ただ、対円では 7 月の相場急落を経て、足もとで進んでいた買い戻し基調が調整局面を迎え た可能性があるだけに、今後調整が一段と強まるか慎重に見極めたいところだ。
南アフリカ・ランド(ZAR)は神経質な展開となりそうだ。来週は南アフリカから特段のイベン トなどが予定されておらず、短期的にはドル相場の動向などに振らされるだろう。もっとも、南 アの経済情勢を巡っては好材料が増えつつある。今週公表された 4-6 月期国内総生産(GDP)は市 場予想こそ下回ったもののプラス成長となり、懸念されていたリセッション(景気後退)は回避 された。今後についても今月から開始された年金制度改革によって退職前に基金の一部引き出し が可能となり、これらの資金が消費に向かうことで GDP を押し上げると予想されている。また、 南アフリカ準備銀行(SARB)が今月 19 日の金融政策決定委員会(MPC)で利下げを開始する可能 性が高いことも、同国の景気改善に寄与することになりそうだ。
9 月 2 日週の回顧
豪ドルは 3 日以降に世界的な株安が進む中でリスク回避の売りに押された。対円では 100 円の 大台手前から 96 円台まで失速。対ドルでも 0.67 ドル割れ水準まで押し戻される場面があった。 ZAR は対ドルでは方向感を欠いた動きとなったが、対円では株安やドル円の下落につれて 8.20 円 台から 8.00 円手前まで上値を切り下げた。(了)
週間展望・回顧(ポンド、加ドル)
September 6, 2024
ポンド、雇用や景気指標に注目
◆ポンド、雇用や景気指標に注目
◆ポンド、賃金インフレ次第で英当局内のパワーバランスに変化も
◆加ドル、BOC の追加利下げ余地広がる
予想レンジ
ポンド円 185.50-192.50 円
加ドル円 104.50-108.50 円
9 月 9 日週の展望
ポンドは 10 日発表の英雇用データや翌 11 日の月次国内総生産(GDP)などでイングランド銀行 (英中銀、BOE)の利下げペースを探りながらの値動きとなりそうだ。
前回発表された 4-6 月英失業率(ILO 方式)は、4.5%までの悪化見込みのところ、結果は 4.2% に改善。労働市場の底堅さが示された。一方、賃金上昇率(除賞与)は予想通り 5.4%と 3-5 月 分から減速し、2022 年 8 月以来の低い伸び率を記録した。先月 1 日に英中銀が約 4 年ぶりの政策 金利引き下げを決定した際、ベイリー総裁は緩やかになりつつある賃金上昇ペースを前向きに評 価した。総裁の期待通り、賃金インフレ鈍化が利下げ決定後も確認されたことになる。
しかしながら、先日、民間会社が求人広告データをもとに割り出した英賃金の伸びは、これま で続いていた鈍化基調から反転して再加速していることが明らかになった。これらのデータが公 式統計にすぐに反映される訳ではないだろうが、多数の事業者が引き続き、労働力を確保するた めに大幅な報酬アップ提示を余儀なくされている。今後、賃金インフレ持続に対する懸念が高ま るとなれば、前回の英金融政策委員会(MPC)でやや優勢だった利下げ支持派と据え置き主張派の パワーバランスがあっさり逆転してしまうかもしれない。 その他、7 月 GDP(前月比)は前回横ばいから持ち直せるか、また、鉱工業生産(前年比)は前 回マイナスからの回復度合いが注目される。
加ドルは、週前半は 8 月雇用統計の結果を受けた流れが続きそうだ。ただし、カナダ中銀(BOC) による追加利下げ余地が大きく広がるなか、加ドルを積極的に買い進む地合いにはなり難そうだ。 BOC は 4 日、市場予想通り政策金利を 4.50%から 4.25%に引き下げた。3 会合連続の利下げを決 定した声明では、「引き続き慎重に政策運営を進める」考えを示している。ただ、マックレム BOC 総裁は会見で「経済が減速し過ぎてインフレ率が下がり過ぎるリスクに一層警戒する必要がある」 と言及。今後必要に応じて大幅な金融緩和策を講じる可能性があるとの見解を示した。短期金融 市場では、BOC の今年残り 2 会合(10 月と 12 月)はもとより、来年前半の 2 会合(1 月と 3 月) まで 0.25%利下げ継続が織り込まれつつある。
9 月 2 日週の回顧
先週末のパウエル FRB 議長のハト派発言を背景としたドル売りの流れが先行し、ポンドドルは 1.3260 ドル台まで 2022 年 3 月以来の高値をつけたが、米 4-6 月期 GDP・個人消費の上昇修正を受 けてドルに買い戻しが入り 1.31 ドル半ばまで押し戻された。また、ドル/加ドルは 1.34 加ドル 半ばで加ドル高が一服した。加 6 月週平均賃金は前年比 3.99%と前回の 4.11%(修正値)から伸 びが鈍化したが反応は見られなかった。ポンド円は 189 円半ば、加ドル円は 106 円前半で下げ渋 り、買い戻しが入るなどドル円同様に方向感は限られた。(了)