ウィークリーレポート 2024年10月4日
週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円)
October 4, 2024
ドル円、日銀の利上げ期待後退で底堅い
◆ドル円、石破首相の発言を受けた買いの流れが来週も継続か
◆ドル円、大型連休明けの上海株の動向や米 CPI にも注目
◆ユーロドル、ECB の利下げ観測から上値重い
予想レンジ
ドル円 145.00-150.00 円
ユーロドル 1.0750-1.1150 ドル
10 月 7 日週の展望
ドル円は、日銀の早期利上げ観測後退から底堅い地合いが続きそうだ。石破首相は 2 日、植田 日銀総裁との会談後に「個人的には現在、追加の利上げをするような環境にあるとは考えていな い」と発言するなど、従来から主張していた考えを一変させたことで金融市場では円安・株高が 急速に進んだ。日銀の金融政策に対する国内外の金融市場に対する影響力が極めて高まるなかで、 27 日に控える解散総選挙を前に株価を下げさせない意図が含まれていることも考慮すると、市場 の混乱を避けるために配慮している姿勢が窺われる。来週も日銀の緩和維持を見越した円売り・ 株高の流れは続きそうだ。
また、8 日からは中国市場が大型連休明けとなり、上海株の動向にも注目が集まる。中国政府 が不動産市場のてこ入れ策として住宅購入の規制緩和を行ったことで中国の不動産株価指数が急 騰し、上海株の上昇期待が一段と高まっている。一部では「中国による景気支援策に対する株価 の反応が過剰すぎる」と警戒する声も聞かれており、株価動向が円相場にも影響を与えそうだ。 経済イベントとしては、米国では 10 日に 9 月消費者物価指数(CPI)が予定されている。11 月 6-7 日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ予想は 4 日時点で 0.25%が 6 割、0.50%が 4 割程度とまだ完全には織り込まれておらず、その結果に注目したい。
一方で、イスラエルとイランを巡る地政学リスクには警戒感が高まっている。「1 日にイランが イスラエルを攻撃した報復措置を数日以内に行われる可能性」と伝わるなか、バイデン米大統領 も「報復を議論している」と発言したことで現実味を帯びている。核施設攻撃という最悪の事態 は避けられそうだが、石油施設攻撃による原油先物相場のさらなる急騰には注意したい。
ユーロドルは、頭の重い動きが想定される。足元で発表されたユーロ圏の経済指標に弱い結果 が目立ってきたほか、ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁が「最近の物価指標はインフレ率が速や かに目標に戻るという我々の確信を強めるもの」「次回理事会でこれを考慮する」と発言したこと で 17 日会合での利下げ観測が急速に高まっている。カザークス・ラトビア中銀総裁も利下げに賛 同しており、徐々に追加利下げが市場で織り込まれつつあり、ユーロ売りが優勢となりそうだ。
9 月 30 日週の回顧
ドル円は週明けこそ 141.65 円まで下押ししたものの、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長 のタカ派発言を受けて買い戻しが優勢に。2 日には石破首相の発言で円が全面安の展開。翌 3 日 には一時 147.24 円まで買い上げられた。 ユーロドルは上値の重い動き。週明けは 1.1209 ドルまで上昇したが、その後は ECB の利下げ観 測や米長期金利の上昇に伴って売りが優勢に。週後半には一時 1.1008 ドルまで値を下げた。(了)
週間展望・回顧(豪ドル、南ア・ランド)
October 4, 2024
NZ ドル、RBNZ の金融政策に注目
◆豪ドル、RBA 議事要旨で中銀の姿勢を再確認
◆NZ ドル、RBNZ の金融政策に注目
◆NZ ドル、市場では年内 100bp の利下げ予想も
予想レンジ
豪ドル円 98.00-103.00 円
南ア・ランド円 8.10-8.60 円
10 月 7 日週の展望
豪ドルは神経質な展開となりそうだ。前週末から自民党総裁選での波乱の決着や石破新政権に よる日銀の追加利上げに対する見解、中東情勢を巡る地政学リスクなどが意識されて、豪ドルは 対ドル・対円で上下に振らされた。特に対ドルでは豪ドルの買い基調に一服感も見られており、 改めて豪ドル相場の方向性を確認する必要があるだろう。10 日には市場の注目を集める 9 月米消 費者物価指数(CPI)の発表が控えており、対ドルを中心とした豪ドルの推移を見極めたい。
また、豪州では 8 日に公表される豪準備銀行(RBA)理事会議事要旨(9 月 23-24 日開催分)に 注目。同理事会では政策金利が予想通り 4.35%で据え置かれ、声明文でもタカ派的な内容が維持 された一方、その後の会見でブロック RBA 総裁は「前回までと違って利上げを検討しなかった」 ことを明らかにした。市場では RBA の利下げは早くても来年前半と想定しており、こうした見方 を変化させるような材料となる可能性は低いと思われるが、利上げの検討がされなかった背景な どの細かな差異を確認しておく必要はあるだろう。その他では 8 日に 10 月ウエストパック消費者 信頼感指数や 9 月 NAB 企業景況感指数などが予定されているが、こちらは相場に対する影響も限 られそうだ。
隣国の NZ では 9 日に NZ 準備銀行(RBNZ)の金融政策公表が予定されている。今週に入って複 数の金融機関が 50bp の利下げを予想しているとのレポートを発表。さらに RBNZ の会合スケジュ ール上、11 月から 2 月まで日程が空くことを考慮して 10 月・11 月の両会合で 50bp の利下げを行 うといった予想も一部では台頭している。RBNZ の利下げペースを巡って様々な思惑が広がるなか、 金融政策の結果公表後は荒い値動きとなる可能性も高いため注意が必要となるだろう。 南アフリカ・ランド(ZAR)は上値の重い動きとなりそうだ。来週は南アフリカから主だった経 済指標の発表などが予定されておらず、豪ドルと同様に米 CPI を受けたドル相場など、外部要因 に左右されるだろう。
なお、南アフリカでは国営電力会社エスコムの値上げ申請を巡って政府との対立が深まってい る。エスコムはコスト増に対応するため、2025 年度に 36%の電気料金引き上げを申請。これに対 して政府は介入する姿勢を示した。これまで同国経済の大きな重しとなってきたエスコムの計画 停電は過去 6 カ月間ほど実施されていないが、今度は電気料金の引き上げによる消費者の負担増 が経済を圧迫しかねない要因として意識されているようだ。
9 月 30 日週の回顧
豪ドルは対円でしっかり。石破首相が日銀の追加利上げに慎重な姿勢を示したこともあり、全 般に円売りが進んだ流れに沿って一時 101 円台まで上値を伸ばした。ZAR も対円では下値の堅い 動き。ただ、対ドルでは節目の 17ZAR 手前で上値の重さを確認したこともあり、その後はやや ZAR 売りが進んだ。(了)
週間展望・回顧(ポンド、加ドル)
October 4, 2024
ポンド、中銀総裁発言の影響見極め
◆ポンド、BOE 総裁のハト派発言の影響を見極め
◆加ドル、失業率悪化に歯止めがかかるのか、9 月雇用統計に注目
◆週末までは米国発の材料で振らされる展開続く
予想レンジ
ポンド円 189.50-195.50 円
加ドル円 106.50-110.50 円
10 月 7 日週の展望
ポンドは 3 日に伝わったベイリー英中銀(BOE)総裁のハト派発言の影響がどの程度まで残るか 見極めながらの取引となりそうだ。英ガーディアン紙のインタビューで総裁は、インフレ抑制が 続けば BOE は利下げについて、「より積極的」かつ「さらに活動的」になる可能性に言及した。ま た、「中銀が危惧していたほど生活費圧力が長引いていないことに安心感を抱いている」とも述べ ている。総裁の見解が伝わると、市場ではポンド売りが一気に強まり、英金利も低下で反応した。 英国では来週、11 日に 8 月国内総生産(GDP)や同月鉱工業生産が発表されるものの、それまで 相場を動意付けるような経済データは予定されていない。そのため、ベイリーBOE 総裁のハト派 見解を巡る動向が一層注目される。総裁発言に対する英金融当局者の見方や総裁自身がインタビ ュー内容を補足する可能性などにも注意しておきたい。
なお、9 月英 GDP は前回の横ばいから持ち直すことができるかがポイント。鉱工業生産は、前 月・前年比ともにマイナスだった 8 月分からの回復度合いを測ることになる。
加ドルも、カナダ発の材料で動意付くには 11 日発表の 9 月雇用統計を待つ必要がある。そのた め、同国経済が頼るところが大きい米国の要因が目先の加ドルのすう勢を決めることになるだろ う。9 日(日本時間 10 日未明)には 9 月 17-18 日分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨、 翌 10 日には 9 月米消費者物価指数(CPI)、11 日に卸売物価指数(PPI)が発表される。先週、パ ウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は、一部で高まっていた大幅利下げ観測をけん制する発言を した。今のところ 11 月 FOMC で 0.25%利下げ織り込み度は 6 割強まで増加してきた。議事要旨の 内容や米インフレ指標の結果を確かめながら、加ドル相場は神経質な動きとなりそうだ。
9 月カナダ雇用統計では、前回 3 カ月ぶりに増加した新規雇用者数も重要だが、6.6%まで悪化 した失業率も注視したい。単純比較では 2021 年以来の高い水準ではあるものの、新型コロナ禍中 であり、コロナ要因を除くと 2017 年以来の水準まで失業率は上昇している。9 月分の新規雇用者 数は増加予想ではあるが、もし失業率の改善が見られない場合、翌週の 9 月 CPI の発表を待たず にカナダ中銀の大幅利下げ観測が高まることになるだろう。
9 月 30 日週の回顧
ポンド円は荒い値動き。石破新政権への警戒感から 189 円半ばまで売りが先行。反動で 193 円 台まで戻すも、イランとイスラエルを巡る地政学リスクの高まりで再び戻り売りに押された。そ の後に石破首相が早期利上げに否定的な見解を示すと 195 円前半まで急伸も、ベイリーBOE 総裁 のハト派発言で 192 円前半まで押し戻されている。ポンドドルは 1.34 ドル前半から 1.30 ドル後 半まで下落した。加ドル円は 104 円後半まで売られたところから、106 円後半まで反発。中東の 緊迫化は原油高に繋がり、産油国通貨・加ドルは底堅く推移した。週後半には 109 円手前まで更 に上昇している。加ドルは対ドルで 1.35 加ドルを挟み上下した。(了)