ウィークリーレポート 2024年10月11日

週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円)

October 11, 2024

ドル円、日米指標を見極め

◆ドル円、中東情勢に警戒しつつ米 9 月小売売上高などに注目

◆日本の 9 月 CPI や本邦通貨当局の円安抑制にも注意

◆ユーロドル、ECB 理事会での利下げを見極め

予想レンジ

ドル円 147.00-151.00 円

ユーロドル 1.0700-1.1100 ドル

10 月 14 日週の展望

ドル円は、米連邦公開市場委員会(FOMC)の年内大幅利下げ観測の後退と日銀の早期利上げ観 測の後退から底堅い地合いが予想される。ただ、上値を抑える要因としては、予期せぬ衝突の激 化など、中東の地政学リスクの突然の高まりや、衆院選の争点が物価高対策となっていることも あり、本邦通貨当局による円安抑制の動きが高まる可能性を念頭に置いておきたい。

米国では、アトランタ連銀の「GDP ナウ」によると、第 3 四半期 GDP 予測は 8 日時点で 3.2%と なっており、第 2 四半期の 3.0%からの改善が見込まれている。また、9 月の FOMC 議事要旨では、 「米経済は景気抑制的政策にも関わらず顕著な底堅さを維持している」と言及された。来週は 9 月小売売上高や 10 月 NY 連銀景況指数、10 月フィラデルフィア連銀景況指数などを確認すること になる。

日本では、9 月のコア CPI は前年比 2.3%と予想されている。8 月の 2.8%からは伸び率の鈍化 が見込まれており、予想通りならば日銀の早期利上げ観測が後退することになりそうだ。石破首 相が「個人的には現在、追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」と発言したこ とから、総選挙後の日銀金融政策決定会合(30‐31 日)では金融政策の現状維持が見込まれてい る。ただ、三村財務官は現状の為替市場に対して「投機的な動きを含めて為替市場の動向を注視 する」と述べているほか、神田内閣官房参与(前財務官)も「為替市場、引き続き高い緊張感持 って警戒続けていく」と発言。物価高対策が選挙の争点となっているため、ドル円が 150 円台の 大台に乗せた局面での本邦通貨当局による円安抑制の可能性には注意が必要だろう。

ユーロドルは、17 日の ECB 理事会での 0.25%の追加利下げ観測が高まっており、下値リスクに 警戒しておきたい。バスレ・スロベニア中銀総裁が「10 月に 0.25%利下げしても、12 月の利下 げを保証するものではない」と釘を刺していることもあり、声明文にも注目。更に、11 月 5 日の 米大統領選に向けて、イスラエルとイランの軍事衝突の激化への警戒感も高まっており、最悪の シナリオとして、第 5 次中東戦争の勃発やホルムズ海峡封鎖による原油価格の急騰なども想定し ておくべきだろう。

10 月 7 日週の回顧

ドル円は、8 日に一時 147.35 円まで値を下げたが、9 月 FOMC 議事要旨で一部の委員が 0.25% の利下げを支持していたことが判明。米長期金利の上昇に連れて 149.55 円まで上昇した。ただ、 9 月米 CPI が予想を上回ったものの、新規失業保険申請件数が大幅な悪化を示す内容となると 148 円台前半まで反落した。ユーロドルは、9 月 ECB 理事会議事要旨がハト派的だったことや米 10 年 債利回りが 4.11%台まで上昇したことで、1.0997 ドルから 1.0900 ドルまで下落した。(了)

週間展望・回顧(豪ドル、南ア・ランド)

October 11, 2024

豪・NZ、中銀の方向性の違いが明白に

◆豪ドル、RBA のタカ派スタンス変わらず堅調地合い

◆豪ドル、週末発表予定の中国財政政策に警戒

◆NZ ドル、CPI の結果次第では更なる大幅利下げの可能性も

予想レンジ

豪ドル円 98.00-103.00 円

南ア・ランド円 8.20-8.70 円

10 月 14 日週の展望

豪ドルは底堅い展開となりそうだ。9 月に行われた豪準備銀行(RBA)理事会の議事要旨が公表 されたが、「他国の金利と同調して動く必要はない」と記された。RBA は他の主要中央銀行が利下 げサイクルに乗り出しているが、同調した利下げ期待を弱めようとしている。ハウザーRBA 副総 裁も講演で「コアインフレは目標に達する」と予想する反面で「インフレは持続する」と予想し、 「インフレとの戦いで RBA は強固な姿勢を維持すべき。インフレ率が高止まりした時には行動す るだろう」と引き続きタカ派姿勢を堅持した。米国をはじめ他国と比較すると RBA の利下げは遅 れ、早くても年末か年始との予想が多く、金融政策の方向性の違いが豪ドルの支えとなるだろう。 来週は豪・NZ 投資コンフェレンスでハンターRBA 総裁補佐が講演を行う予定。経済指標では 17 日に注目度の高い 9 月の雇用統計が発表される。8 月の雇用統計は新規雇用者が市場予想を上回 ったが、非正規雇用の大幅増に支えられたものだった。正規雇用が増加するかに注目したい。

また、中国の株式市場の動向にも注目だろう。国慶節の大型連休前に発表された様々な景気刺 激策を受けて大幅に上昇していた中国株式市場だが、徐々に上値が限られてきている。経済政策 全般の立案を担う国家発展改革委員会(発改委)が 8 日に公表した景気対策は期待外れとなった が、財政政策に関して 12 日に記者会見が開かれる予定。追加景気対策への期待が残されている。 結果次第では、リスク許容度に敏感に反応する豪ドルが週初から大きく動く可能性が高い。

NZ ドルの動きも目が離せない。今週 50bp の利下げを行ったことを受けて大幅安になったが、 16 日に発表される 7-9 月期消費者物価指数(CPI)に要注目。また、14 日にはオア RBNZ 総裁、 15 日にはホークスビーRBNZ 副総裁、16 日にはシルク RBNZ 総裁補佐がそれぞれ講演を予定してい る。市場では既に 11 月会合でも 50bp の利下げ予想が出ているが、CPI の結果や当局の発言次第 では、NZ ドルは更に下げ幅を探る展開もありそうだ。特に RBA と RBNZ の両中銀の方向性の違い は明白。豪ドル買い・NZ ドル売りがさらに進むことになるのかを注視している。

南アフリカ・ランド(ZAR)は底堅い動きとなるか。米金利の上昇でドル買い・ランド売りが進 んでいるが、南アの政治や経済への期待感が高い。対円では今週も 7 月中旬以来の水準まで強含 んでいる。来週は南アからは 16 日に 8 月の小売売上高が発表される程度と、市場を積極的に動意 づける材料に欠けていることで、株式市場や米国などの経済指標に左右される展開になりそうだ。

10 月 7 日週の回顧

豪ドルは方向感のない動き。週初には豪ドル円は 7 月後半以来の 101 円台まで強含んだが、徐々 に伸び悩んだ。豪ドル/ドルは米金利の上昇で上値が抑えられた。一方、RBNZ の大幅利下げを受 けて、豪ドル/NZ ドルでは堅調な動きだった。ZAR は対円では一時 7 月中旬以来となる 8.55 円ま で強含んだ。ただ、米金利の上昇を受け、対ドルでは 9 月後半以来となるドル買い・ZAR 売りが 進んだこともあり、ZAR 円の上値も抑えられた。(了)

週間展望・回顧(ポンド、加ドル)

October 11, 2024

ポンド、雇用・物価データ見極め

◆ポンド、9 月雇用・物価データで追加利下げを見極め

◆ポンド、月末に予算案公表を控え関連のヘッドラインにも注意

◆加ドル、9 月 CPI 次第では大幅利下げを織り込む動きにも

予想レンジ

ポンド円 190.50-196.50 円

加ドル円 106.50-110.50 円

10 月 14 日週の展望

ポンドは来週発表予定の 9 月雇用・物価データが注目される。イングランド中銀(BOE、英中銀) の次回会合は 11 月 7 日に予定されており、9 月雇用・物価データは金融政策委員会(MPC)メン バーにとって政策判断の大きな手がかりとなる。8 月消費者物価指数(CPI)は前年比 2.2%と横 ばいだったが、同コアは 3.3%から 3.6%へ、サービスは 5.2%から 5.6%に伸びが加速し、これ が 9 月会合で追加利下げを見送った大きな一因となった。もっともベイリーBOE 総裁は先週、イ ンフレに関する良好なニュースが続けば中銀は利下げのアプローチで「もう少し積極的に、かつ、 もう少し活動的になることが可能だ」と述べた。

9 月英購買担当者景気指数(PMI)は製造業・サービス業ともに前月から悪化したが、依然とし て景気判断の分岐点とされる 50 を上回っている。英国経済は勢いこそ鈍りつつあるものの回復が 続いており、景気は欧州内で堅調な部類に入っている。ただ、英政府は 30 日に発表する予算案で の増税を示唆しており、税負担の拡大による景気下振れリスクが高まっている。増税規模次第で は、財政赤字を巡る懸念が高まる恐れや、消費にも陰りが出てくる可能性があり、予算案関連の ヘッドラインにも注目したい。

加ドルもカナダの 9 月 CPI に注目。23 日のカナダ中銀(BOC)会合では、4 会合連続での利下げ が確実視されている。11 日の 9 月雇用統計や 15 日の同月 CPI がさえない結果となれば、0.50% の大幅利下げへの思惑が強まり、加ドルは売りに押されそうだ。予想より強い結果になっても、 大きく上振れしない限り加ドル買いは限られ、どちらかと言うとネガティブな結果が警戒される。 8 月 CPI は前年比 2.0%と 2021 年 2 月以来の低水準となり、BOC が目標とする 2%に達した。9 月の予想は 1.9%と伸びの鈍化が続くと見込まれている。物価上昇が落ち着いていることで、BOC は積極的な利下げ姿勢継続を示唆し、経済の刺激と失業率の上昇を抑えることに注力することに なりそうだ。

また、加ドルは産油国通貨という側面をもっており、中東情勢には引き続き注目が必要。イス ラエルとイランの対立などを巡る中東情勢の悪化を受け、原油相場は値幅を伴った動きが続いて いる。中東の地政学リスクと中国当局の景気刺激策が原油相場の支えとなっているが、中東情勢 への過度な警戒感や中国景気回復への期待感が和らぐと、「原油需要の低迷・過剰供給」をテーマ に再び売り圧力が強まり、加ドルの上値圧迫の要因となる可能性がある。

10 月 7 日週の回顧

ポンドは前週のベイリーBOE 総裁のハト派寄り発言が重しとなるも、対ドルでは 1.30 ドル前半、 対円は 192 円後半で下げ渋って値動きは限られた。加ドルは BOC の追加利下げへの思惑が上値を 圧迫するなか、8 月の貿易収支が予想を上回る赤字額となったことも嫌気された。ドル/加ドル は 1.37 加ドル後半、加ドル円は 108 円割れまで加ドル安となった。(了)