ウィークリーレポート 2024年10月18日
週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円)
October 18, 2024
ドル円、当局の円安牽制に注意
◆ドル円、底堅い動きも衆院選期間中の当局の円安牽制に注意
◆米指標で 11 月 FOMC での米金融政策を見極め
◆ユーロドル、ユーロ圏 10 月製造業・サービス業 PMI 速報値に注目
予想レンジ
ドル円 147.00-152.00 円
ユーロドル 1.0600-1.0950 ドル
10 月 21 日週の展望
ドル円は、米連邦公開市場委員会(FOMC)の年内大幅利下げ観測の後退と日銀の早期利上げ観 測の後退から、引き続き底堅い地合いが予想される。ただ、27 日投開票の衆院選の争点が物価高 対策となっていることもあり、本邦通貨当局による円安抑制や、三村財務官にとってのデビュー 戦となるドル売り・円買い介入の可能性には警戒しておきたい。三村財務官は、149 円台の為替 市場に対して「投機的な動きを含めて為替市場の動向を注視する」と述べており、神田内閣官房 参与(前財務官)も「為替市場、引き続き高い緊張感持って警戒続けていく」と警告している。
日本国内では、23 日に植田日銀総裁の講演が予定されているが、衆院選の最中でもあるため、金 融政策に関する言及は控えられると思われる。また、25 日に発表される 10 月の東京都区部の消 費者物価指数(CPI)は、10 月全国 CPI の先行指標となるため、日本の物価情勢を見極める上で 重要視されるだろう。米国の経済指標では、9 月景気先行指数や耐久財受注、そして 11 月の FOMC での判断材料となる地区連銀経済報告(ベージュブック)などで、政策金利据え置きの可能性を 見極めることになりそうだ。
また、イスラエルによるイランの石油関連、核開発関連施設への報復攻撃の可能性には、引き 続き警戒しておきたい。バイデン米政権は、石油や核関連施設への攻撃を自制するように求めた が、イスラエル首相府は「イランによるミサイル攻撃への報復計画については米政府の意見を考 慮に入れるが、最終決定は国益に基づいて下す」と表明しており、一部では「イスラエルの攻撃 はイランの軍事施設になる」ことが報じられてはいるものの、予断を許さない状況が続いている。 米国防総省はイスラエルの防空態勢を支援するため、米軍の終末高高度防衛(THAAD)ミサイル部 隊約 100 人を駐留させると発表した。イランが反撃した場合、米軍も攻撃を受けてイスラエルと イランの戦争に巻き込まれることになる。有事のドル買いではなく、湾岸戦争時のようなドル売 りになる可能性もあるだろう。
ユーロドルは、欧州中央銀行(ECB)理事会で追加利下げが決定されたが、12 月理事会でも追 加利下げの可能性が高まっている。10 月のユーロ圏製造業・サービス業 PMI 速報値を見極めるこ とになる。ラガルド ECB 総裁は ECB 理事会後の会見で、「経済成長のリスクは依然として下方に傾 いている。最新のデータは、一段の成長鈍化を示唆している」と景況感の悪化を警戒している。
10 月 14 日週の回顧
ドル円は、好調な米 9 月小売売上高などを受けて、米金利が上昇。週末にかけては一時 150.32 円まで買われている。ユーロドルは、ECB 利下げ後も総裁発言や追加利下げへの思惑から下落幅 を拡大。一時 1.0811 ドルまで売り込まれた。(了)
週間展望・回顧(豪ドル、南ア・ランド)
October 18, 2024
NZ ドル、インフレ率低下で上値重い
◆豪ドル、株安が重しも雇用情勢好調で底堅い
◆NZ ドル、インフレ率低下受け大幅利下げの予測も
◆ZAR、GNU への期待高く下値は限定的
予想レンジ
豪ドル円 99.00-103.00 円
南ア・ランド円 8.35-8.70 円
10 月 21 日週の展望
豪ドルは底堅い動きを予想。今週は中国株式市場が軟調に動くと、リスク回避の動きに敏感な 豪ドルの重しになった。ただ、豪準備銀行(RBA)は他国と比較すると利下げに対しては前向きで なく、一方的に豪ドルを売り込むような地合いにはなりにくい。また、今週発表された 9 月の雇 用統計は失業率が予想より低く、新規雇用者数も増加した。さらに、新規雇用の内訳をみても常 勤雇用者数が大幅に伸びるなど、雇用情勢が好結果だったことも豪ドルの支えになりそうだ。 来週は豪州からは市場を動意づけるような主だった経済指標の発表予定がないことで、中国の 景気浮揚対策で動意づく中国株式市場や、米国の雇用指標、購買担当者景気指数(PMI)、ミシガ ン大学調査の期待インフレなどの経済指標など、国外の動向が豪ドルを左右する展開になるだろ う。なお、来週は経済指標の発表はないが、21 日にハウザーRBA 副総裁が講演を行う予定。24 日 には RBA の年次レポートが公表される。
NZ ドルは上値が重い。7-9 月期の消費者物価指数(CPI)は前期比で予想を下回ったほか、前 年比では予想通りながらも 2021 年 1-3 月期以来の低水準を記録した。市場ではすでに来月の利下 げは 50bp になるとの予想だったが、一部では 75bp まで引き下げる可能性も指摘されている。こ れまで、50bp を超える利下げはコロナウイルスのパンデミック時と 2008 年のリーマンショック から起こった信用不安以来行われていないが、更に弱い経済指標などが明らかになると大幅利下 げが現実味を帯びる。なお、NZ からは 22 日に 9 月貿易収支、25 日に 10 月の ANZ 消費者信頼感指 数が発表されるほか、22 日にはシルク NZ 準備銀行(RBNZ)副総裁、23 日(日本時間 24 日未明) にはオア RBNZ 総裁が金融政策について講演を行う予定。インフレ率低下について正副総裁がどの ような見解を示すかで NZ ドルは大きく動意づく可能性がある。
ZAR は底堅く推移しそうだ。オセアニア通貨同様に、株安を嫌気し今週は上値が抑えられた。 しかし、今週発表された企業信頼感指数が持ち直すなど、国民統一政府(GNU)に対する期待感が 根強い。通商政策に厳しいトランプ氏が再選した場合のリスクはあるが、南アへの投資意欲が強 いことが ZAR の支えになるだろう。来週は 23 日に 9 月 CPI が発表される。8 月の CPI は前年比で 4.4%、コア指数が 4.1%まで低下した、9 月は原油価格が低下し、ZAR も対ドルで年初来高値の 水準を記録していたこともあり、インフレ率はさらに下がる可能性が高い。
10 月 14 日週の回顧
豪ドルはもみ合い。豪ドル/ドルは、週前半は中国株安などを嫌気し約 1 カ月ぶりに 0.66 ドル 半ばまで下押しした。ただ、その後は好結果の雇用統計を受けて 0.67 ドル台を回復。下げ止まり を見せている。豪ドル円は 100 円を挟んで上下した。ZAR は対ドルでは 17ZAR 半ばから後半、対 円では 8 円半ばを中心に上下を繰り返した。ダウ平均が最高値を更新したが、リスク選考の動き には反応が限られている。(了)
週間展望・回顧(ポンド、加ドル)
October 18, 2024
加ドル、中銀の利下げ幅や声明に注目
◆ポンド、直近の雇用・物価データ受けた利下げ観測の高まりが重し
◆ポンド、引き続き月末の政府予算案関連のヘッドラインに注意
◆加ドル、23 日の中銀会合での利下げ幅や声明内容に注目
予想レンジ
ポンド円 191.50-197.50 円
加ドル円 107.00-111.00 円
10 月 21 日週の展望
今週発表の英雇用・物価データを受けて利下げ観測が高まっている。ポンドは来週も上値の重 い動きが見込まれる。6-8 月期賃金上昇率(ボーナスを除く)は前年比 4.9%と約 2 年ぶりの低水 準となった。求人数も引き続き減少し、インフレ圧力の緩和を示す内容となった。賃金の伸び率 は依然としてイングランド銀行(英中銀、BOE)の許容水準を上回っているが、賃金の鈍化ペース は金利を景気抑制的な水準から動かし始めるに朗報と言えそうだ。 9 月消費者物価指数(CPI)は前年比 1.7%と前月の 2.2%から予想以上に大幅鈍化し、2021 年 4 月以来の低い伸びとなった。BOE が注視するサービス価格の上昇率も 4.9%と 2022 年 5 月以来 の低水準。BOE の直近の予測では、サービス価格の上昇率が年内に 5%を割り込まないと判断して いた。中東紛争に伴う原油高と国内エネルギー料金の値上げを受け、インフレ率は今後上昇する 可能性が高いものの、市場は 11 月会合での 0.25%利下げを完全に織り込み、12 月会合での追加 利下げを見込んでいる。
今月 30 日発表予定の政府予算案関連のヘッドラインには引き続き注目したい。220 億ポンドに 上る政府の「ブラックホール」を埋めるために増税が見込まれている。現在最高 28%のキャピタ ルゲイン税が 39%に引き上げられるとの報道も出ているが、これについてスターマー首相は「的 外れ」だと否定している。約 2 年前に当時のトラス首相が財源の裏付けがない大型減税を打ち出 し、国債売りの殺到とポンド暴落を招いたこともあり、スターマー英首相が率いる労働党新政権 が投資家を不安に陥れる予算案を発表する公算は低いとみている。来週は 10 月 PMI 速報値の発表 が予定されている。9 月の PMI は製造業・サービス業ともに 3 カ月ぶりに前月から悪化したが、 依然として景気の縮小・拡大の分岐点とされる 50 を上回っている。
加ドルは、23 日のカナダ中銀(BOC)の政策会合に注目。11 日に発表された 9 月雇用統計では、 新規雇用者数変化が予想以上に増加。失業率は予想外に前月から低下したが、正規雇用の平均時 給の伸びの鈍化が継続し、労働参加率は低下した。今回の数字は、依然として経済の弱体化懸念 を払しょくさせる内容とは言えない。また、9 月 CPI は前年比 1.6%と前月から予想以上に伸びが 鈍化し、約 3 年 7 カ月ぶりの低い伸びとなった。CPI 発表後に市場では来週の BOC 会合での 0.50% 利下げ確率が約 7 割弱まで高まっている。今回の会合での利下げ幅や声明で積極的な利下げ姿勢 を維持するかどうかに注目している。
10 月 14 日週の回顧
ポンドは 9 月雇用・物価データの結果を受けた利下げ観測の高まりで売りに押される動きとな った。ポンドドルは 1.30 ドル割れまで下落し、ポンド円は一時 193 円後半まで弱含んだ。加ドル は、予想比下振れの 9 月 CPI が加ドルの重しとなり、ドル/加ドルは一時 8 月上旬以来の 1.38 加 ドル台まで上昇。加ドル円は一時 107 円後半まで売りに押された。(了)