ウィークリーレポート 2024年11月1日
週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円)
November 1, 2024
ドル円、米大統領選挙と FOMC を注視
◆ドル円、米大統領選と FOMC を注視
◆ドル円、首班指名選挙に向けた新たな連立枠組みなどに注目
◆ユーロドル、ユーロ圏の 9 月生産者物価指数や小売売上高を見極め
予想レンジ
ドル円 149.00-155.00 円
ユーロドル 1.0600-1.1000 ドル
11 月 4 日週の展望
ドル円は、5 日の米大統領・上下両院議会選挙の結果や 6-7 日の米連邦公開市場委員会(FOMC) での追加利下げの有無に注目する展開となる。大統領選挙では、トランプ共和党候補とハリス民 主党候補のどちらが勝利しても、両者が減税と拡張的な財政政策を公約に掲げているため、米長 期金利の上昇基調が続き、ドル買い要因。また、トランプ候補が勝利し、上下両院も共和党が勝 利する、いわゆる「レッド・スウィープ」となった場合は、関税引き上げや減税、大規模な財政 出動によるインフレ率の上昇の可能性が高まるため、トランプ・トレード(米国債売り・ドル買 い)がさらに活発化しそうだ。ドル円が 160 円付近まで上昇した場合には、本邦通貨当局による ドル売り・円買い介入の可能性が意識されるか。ただトランプ候補は一方で、米国の製造業を保 護するため、関税の引き上げに加えて、ドル高を抑制する姿勢を示している。財務長官候補のポ ールソン氏も、2025 年末の FF 金利を 2.50-3.00%と予想していたことは留意しておきたい。 さらにトランプ政権誕生の場合、ウクライナへの支援停止やイスラエルによるイランの石油・ 核関連施設への攻撃の可能性が高まることから、引き続き地政学リスクには警戒だろう。また米 格付け会社ムーディーズは、どちらの候補が当選しても米国の財政状況は弱体化する可能性が高 いと指摘。大統領選後に米国の信用格付け引き下げを警告している。
FOMC では FF 金利の 0.25%の追加利下げが見込まれているが、リスクシナリオとしては、トラ ンプ候補が勝利した場合、インフレ期待が上昇することにより金利が据え置かれる可能性がある ことだろう。
日本の政局では、11 日に予定されている特別国会での首班指名選挙に向けて、様々なオプショ ンが想定されるなか、新たな連立政権の枠組みなどに注目しておきたい。 ユーロドルは、ウクライナ戦争の激化懸念やトランプ政権誕生の場合の関税引き上げへの警戒 感から下値リスクが高まりつつある。ユーロ圏 9 月の生産者物価指数や小売売上高を見極め、12 月欧州中央銀行(ECB)理事会での追加利下げの可能性を探る展開となるだろう。
10 月 28 日週の回顧
ドル円は、政治的な不確実性の高まりから日銀の早期利上げ観測が後退するなか、米長期金利 の上昇などにつれて週初に一時 153.88 円まで買われた。ただ、日銀が政策の維持を決定したもの の、展望リポートではタカ派的な文言が維持されたほか、植田日銀総裁の会見もタカ派的だった ことなどから 151.79 円まで反落している。 ユーロドルは、ショートカバー中心の動き。1.0769 ドルで 2 番底を確認した後、独国債利回り の上昇などにつれて 1.0888 ドルまで買戻された。(了)
週間展望・回顧(豪ドル、南ア・ランド)
November 1, 2024
豪ドル・ZAR、米大統領選の影響大
◆豪ドル、米大統領選挙を受けた株式市場の動向に左右
◆豪ドル、RBA は据え置き予想も声明文に注目
◆ZAR、トランプ前米大統領の返り咲きは ZAR 売り要因に
予想レンジ
豪ドル円 98.00-103.00 円
南ア・ランド円 8.40-8.90 円
11 月 4 日週の展望
豪ドルは、国内外の重要イベントの結果を受けて大きく上下を繰り返すことが予想される。豪 州国内では、5 日の豪準備銀行(RBA)理事会に注目。今週 10 月 30 日に発表された 7-9 月期消 費者物価指数(CPI)は前年比で前回の 3.8%から 2.8%へと低下した。しかし、この低下は政府 の補助金により電気料金が 17.3%下落したことなどが要因。トリム平均値はさほど低下していな いこともあり、RBA の最初の利下げは来年前半という市場の予想は変わっていない。おそらく理 事会では据え置きとなるだろうが、声明文に変化が生じるかには注意したいところだ。また、7 日には 9 月貿易収支が発表されるほか、8 日にはジョーンズ RBA 副総裁が講演を予定している。 国外では、5 日の米大統領選挙に注目。ハリス副大統領とトランプ前大統領の争いは拮抗して いる。市場ではいずれの候補になろうとも、減税と拡張的な財政政策を公約に挙げていることで、 米長期金利の上昇とドル買いになるとの予想が高い。もっとも、市場は既にこの路線を織り込ん でおり、選挙結果を受けて更に米金利上昇とドル買いになるかは未知数だ。先週末の衆議院選挙 でも、与党の過半数割れは株安につながるとの予想もあったが、実際には株高・円売りへと反応 したように、予想通りに動意づくかは予断を許さない。豪ドルはリスクに敏感な通貨であり、大 統領選挙後の株式市場の動向には、他の通貨以上に反応する可能性が高い。
なお、NZ からは 5 日に NZ 準備銀行(RBNZ)の金融安定化レポートが公表される。また、6 日に は 7-9 月期の失業率が発表予定。7 日には NZ 政府から 3 カ月金融ステートメントも公表される。 ZAR も米大統領選挙の結果に左右されるだろう。先週行われた BRICS 首脳会議で、ラマポーザ 南ア大統領はプーチン露大統領に「ロシアは味方だ」と伝えるなど、南アはロシアや中国との関 係が密接になっている。ハリス副大統領が勝利した場合には ZAR の値動きは限定的だろうが、ト ランプ前大統領が返り咲いた場合には ZAR は弱含むと思われる。5 月 29 日に、米下院で「米国と 南アの 2 国間関係の全面的な見直し」の決議が行われ、272 対 144 で見直し案が可決されている。 これまでは、バイデン米大統領が反対していることで見直し案が通過していないが、トランプ前 大統領が就任した場合は通過する可能性がある。その場合は、何千もの品目を米国に無税で輸出 することを認めるアフリカ成長機会法(AGOA)の対象から、南アが外される大きなリスクとなる だろう。なお、来週は南アから主だった経済指標の発表は予定されていない。
10 月 28 日週の回顧
豪ドルは上値が抑えられた。小売売上高が弱い結果だったことなどが豪ドルの頭を抑えた。ま た、対円では日銀の展望レポートで「経済・物価見通しが実現していくとすれば、金融緩和の度 合いを調整していく」との見解を示したことも上値を抑制した。ZAR は対円では一時 7 月中旬以 来の水準まで上昇した。もっとも、中期予算政策声明で「今年の財政赤字が対 GDP 比 4.5%から 5.0%に拡大される見込み」と発表されたことが上値の重しになった。(了)
週間展望・回顧(ポンド、加ドル)
November 1, 2024
ポンド、英中銀の政策会合に注目
◆相場全般、米大統領選・FOMC を受けたドルの動きがメイン
◆ポンド、英中銀の政策会合に注目
◆加ドル、10 月雇用統計受けた利下げ見通しに注目
予想レンジ
ポンド円 194.00-200.00 円
加ドル円 107.50-111.50 円
11 月 4 日週の展望
今週、日銀金融政策決定会合と植田日銀総裁の会見を受けて円高に傾いたが、内容に大きなサ プライズはなく、円買いは調整の範疇内と見ている。円相場は引き続き日銀の利上げ時期を探り ながら、衆院選の結果を受けて不安が高まっている政局の動向を見極める動きとなる。来週は相 場全体としては 5 日の米大統領選、6-7 日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果公表を受けた ドルの動きがメインとなりそうだ。
ポンドは 7 日のイングランド銀行(英中銀、BOE)会合に注目。前回 9 月会合では政策金利の据 え置きを決定したが、9 月の消費者物価指数(CPI)やサービス価格の上昇率の伸びが大幅に鈍化 し、市場は来週の会合での 0.25%利下げを織り込んでいる。ベイリーBOE 総裁が「ディスインフ レは予想以上に速い」との見解を示したことで、12 月会合でも追加利下げに踏み切るとの観測が 高まったが、英政府の予算案を受けて短期金融市場では BOE が 11 月に利下げを実施した後、12 月は据え置きの見通しが追加利下げ予想を上回っている。
今週、スターマー労働党政権で初となる予算案が発表されたが、過去 30 年間で最大規模となる 年間 400 億ポンドの増税計画が明らかになった。英政府の財政拡張方針は短期的に経済を加速さ せるが、同時にインフレ率も上昇させ、BOE の政策金利が長期で高止まりする可能性が高まって いる。予算責任局(OBR)は来年のインフレ率見通しを 1.5%から 2.6%に引き上げた。 加ドルでは、8 日に 10 月の雇用データが予定されている。9 月の雇用統計では、失業率が 6.5% と予想外に低下し、新規雇用者数は予想を大きく上回る 4.67 万人増と良好な結果だった。10 月 も改善が続くかどうかに注目したい。さえない結果となれば、カナダ中銀(BOC)の積極的な緩和 姿勢を後押しすることになりそうだ。また、対円では日本国内で日銀の金融政策イベントはこな したが、衆院選を受けた政局となっており、引き続き関連のヘッドラインに左右されそうだ。
なお、マックレム BOC 総裁は今週、「年初来で 4 回実施した利下げの効果が出始めており、今後 数カ月で一段の証拠が確認される」との見通しを示した。また、「経済がおおむね予想通りに推移 すれば、追加利下げに踏み切ることができる」との見解を改めて表明。「利下げを継続することで 家計支出の回復が早まり経済成長が高まる可能性がある」と発言している。
10 月 28 日週の回顧
衆院選で政権与党が過半数割れしたことを受けて、週明けから円売りが先行したが、日銀会合 後に円買いに振れてクロス円は失速。ポンド円は 199 円後半、加ドル円は 110 円後半で上昇が一 服した。ポンドドルは英政府の予算案公表を受けて神経質な動きとなるも方向感は出なかったが、 月末絡みの売りも見られ 1.28 ドル半ばまで下落した。ドルの底堅い動きが続くなか、ドル/加ド ルは 1.39 加ドル半ばまでドル高・加ドル安となった。(了)