デイリーレポート 2024年11月11日
November 11, 2024
##【前日の為替概況】】ユーロドル、反落欧州株相場の下落を背景にリスク・オフ
8日のニューヨーク外国為替市場でユーロドルは反落。終値は1.0718ドルと前営業日NY終値(1.0805 ドル)と比べて0.0087ドル程度のユーロ安水準だった。米長期金利の低下などを手掛かりにユーロ買い・ ドル売りが先行すると20時30分過ぎに1.0797ドル付近まで値を戻したものの、アジア時間に付けた日 通し高値1.0807ドルが目先レジスタンスとして意識されると失速した。欧州株相場の下落を背景にリス ク・オフのユーロ売り・ドル買いが出たほか、11月米ミシガン大学消費者態度指数速報値が予想より強 い結果となり、米長期金利が低下幅を縮小したことも相場の重しとなった。前日の安値1.0713ドルを下 抜けると一時1.0687ドルまで値を下げた。
ドイツではショルツ首相率いる与党連合が崩壊したことから、「ユーロ圏経済に及ぼす影響について市 場の解釈が進む中、欧州景気への懸念がくすぶる」との声が聞かれた。また、ショルツ氏はこれまで3 月の総選挙実施を目指す意向を明らかにしていたが、1月の実施を求める圧力が高まっていることを受け て、「早期総選挙の実施時期について話し合う用意がある」との見解を示した。なお、世論調査によると 「有権者の3分の2が早期の選挙実施を望んでおり、経済団体は政治的混乱の終結を求めている」という。
ドル円は続落。終値は152.64円と前営業日NY終値(152.94円)と比べて30銭程度のドル安水準だっ た。米長期金利の指標となる米10年債利回りが4.26%台まで低下すると円買い・ドル売りが先行。20 時過ぎに一時152.14円と日通し安値を付けた。
ただ、売り一巡後は下げ渋る展開に。米ミシガン消費者態度指数が予想を上回ったことや米10年債利 回りが4.31%台まで低下幅を縮めたことが相場を下支えした。市場では「200日移動平均線が位置する 151.68円付近が重要なサポートとして意識されている」との声が聞かれた。
ユーロ円も続落。終値は163.61円と前営業日NY終値(165.25円)と比べて1円64銭程度のユーロ安 水準。独連立政権崩壊でユーロ圏景気への懸念が意識される中、全般ユーロ売りが進んだ。2時過ぎには 一時163.21円と日通し安値を更新した。なお、ユーロポンドは0.8292ポンド、ユーロカナダドルは1.4883 カナダドル、ユーロスイスフランは0.9367スイスフランまで値を下げた。
【本日の東京為替見通し】ドル円、トランプ・トレードが下値を支える底堅い展開か
本日の東京外国為替市場のドル円は、トランプ・トレード(米国債売り・ドル買い)により底堅い展開 が予想されるものの、上値は米10年債利回りの低下や今週発表される米10月消費者物価指数(CPI)な どへの警戒感から限定的だと思われる。
本日の上値の目安としては、日足一目均衡表・転換線の153.01円付近、下値の目安としては200日移 動平均線の151.70円付近を念頭に置いておきたい。
8時50分に発表される日銀金融政策決定会合における主な意見(10月30-31日分)では、石破政権下 での追加利上げに関する見解に注目しておきたい。 特別国会での首相指名選挙では、国民民主党が玉木代表に投じると表明しているため、第2次石破内閣 が誕生する可能性が高まっている。来年7月の参議院選挙に向けて、与野党の攻防が続いていくことにな る。
第1次トランプ政権では、パウエルFRB議長に対して利下げ圧力をかけ、米国の製造業保護のために高 い関税という防波堤を設けながら、ドル安を志向していた。
第2次トランプ政権でも、発言権を求めている米連邦準備理事会(FRB)に対しては利下げ圧力を加え、 高関税(対中国60%、その他10-20%)とドル安を志向すると思われる。
FRBへの利下げ圧力に関しては、パウエルFRB議長はインフレ伸び率の鈍化傾向と労働市場の緩和傾向 を背景に、利下げ路線を邁進中であり、第2次トランプ政権による利下げ要請と整合的だと思われる。
米10月CPIがインフレ鈍化を示していた場合、12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25%の追加 利下げ確率が高まることで、ドル円の上値を抑える要因となる。
懸念材料としては、第2次トランプ政権で関税引き上げ、減税と大規模な財政出動、移民規制などの公 約が実現された場合、物価上昇圧力(トランプ・フレーション)が高まるため、FRBの来年以降の中立金 利水準を目指した利下げ路線の障害となる可能性が挙げられる。
パウエルFRB議長は、今後の金融政策は「データ」次第と述べてきているが、来年以降は「政策」次第 となっていくのかもしれない。
トランプ次期米大統領は、第1次トランプ政権でもドル高をけん制していたが、今年4月にも、ドルが 対円で34年ぶりの高値を付けたことに関して、米国の製造業にとって「大惨事だ」と述べていた。
トランプ次期米大統領は、第1次トランプ政権で通商代表部(USTR)の代表を務めたライトハイザー氏 に再登板を要請した、と報じられている。ライトハイザー氏は第1次トランプ政権で日米貿易協定の交渉 を主導するなど、対日強硬派として知られており、1980年代のレーガン政権のUSTR次席代表として、日 本に対して鉄鋼輸出の自主規制を受け入れさせた。
第2次トランプ政権が、「米国第一主義」を実現させる手段として、関税引き上げと並行して、対人民 元、対円でのドル安誘導「プラザ合意2」に踏み切る可能性には警戒しておきたい。一方で、本邦通貨当 局にとっては、ドル売り・円買い介入に難色を示してきたイエレン米財務長官が退任し、ドル安を志向す る第2次トランプ政権の誕生は好都合なのかもしれない。
【本日の重要指標】※時刻表示は日本時間
<国内>
○08:50 ◎ 9 月国際収支速報
◇ 経常収支(予想:季節調整前3 兆4327 億円の赤字/季節調整済2 兆9863 億円の黒字)
◎ 貿易収支(予想:662 億円の赤字)
○08:50 ◇ 日銀金融政策決定会合における主な意見(10 月30-31 日分)
○14:00 ◇ 10 月景気ウオッチャー調査(予想:現状判断指数47.1/先行き判断指数49.2)
<海外>
○16:00 ◎ 10 月ノルウェー消費者物価指数(CPI、予想:前月比0.5%/前年比2.4%)
○16:00 ◇ 9 月トルコ失業率
○16:00 ◇ 9 月トルコ鉱工業生産(予想:前月比横ばい)
○21:00 ◇ 9 月メキシコ鉱工業生産(季調済、予想:前月比0.4%)
○米国(ベテランズデー)、債券市場が休場
○ポーランド(独立記念日)、カナダ(リメンバランス・デー)、休場
※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。 ※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。 ※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。
【前日までの要人発言】
8日11:59加藤財務相
「トランプ氏の勝利を受け、貿易や金融市場通じ日本経 済・財政などへの影響を注視していく必要ある」
「為替、投機的な動向も含め極めて高い緊張感を持って 注視する」
「行き過ぎた為替の動きに対しては適切な対応をとる」
「為替、ファンダメンタルズを反映して安定的に推移する ことが重要」
「為替、足元では一方向な急激な動き見られる」
8日17:17藍仏安・中国財政相
「6兆元規模の債務借り換えは主要な追加の政策措置」
「銀行の資本増強作業を加速している」
「不動産市場を支援する税制措置が間もなく導入され る」
「2025年に力強い財政政策を実施する」
「中国にはまだ借入を増やす大きな余地がある」
「次の政策措置と景気対策を積極的に計画している」
「隠れ債務の置き換えを直ちに開始する」
8日21:56ピル英中銀金融政策委員会(MPC)委員兼
チーフエコノミスト
「ディスインフレ継続なら追加利下げの余地」
「米国とドイツの政治変動で不透明」
「緩やかな利下げは条件付き」
9日00:55マクルーフ・アイルランド中銀総裁
「政策緩和のペースは慎重に決める必要がある」
「サービスインフレはインフレ目標とより一致し、3%近く になる」
※時間は日本時間
【日足一目均衡表分析】
<ドル円=転換線の回復を目指す展開を期待>
小陰線引け。一目均衡表・転換線153.01 円を下回る水準
で週引けとなった。
上昇余地を残す転換線の回復を目指す展開が期待できる。
下値の堅さを示唆するやや長めの下ひげをともなう足型を
形成していることも、その期待を後押し。151.85 円前後で上
昇中の21 日移動平均線も支えになるとみるが、伸び悩むよ
うであれば、151.70 円付近で推移する200 日移動平均線や上
昇中の一目・基準線151.03 円の下抜けを試すことになるか。
レジスタンス1 153.37(11/8 高値)
前日終値 152.64
サポート1 151.85(21 日移動平均線)
サポート2 151.03(日足一目均衡表・基準
<ユーロドル=転換線付近が重く急落>
陰線引け。一目均衡表・転換線1.0810 ドル付近が重く、
1.0687 ドルまで急落した。低下中の一目・基準線1.0840 ド
ルも重しとなるほか、転換線はほどなく低下角度を強める見
込み。戻しても5 日移動平均線前後にとどまりやすいだろう。
レジスタンス1 1.0778(5 日移動平均線)
前日終値 1.0718
サポート1 1.0650(5/1 安値)
<ユーロ円=低下中の90 日線近辺の重い推移想定>
大陰線引け。163 円前半で低下中の90 日移動平均線を追う
ように下値を広げる動きとなった。本日163.15 円前後へ切
り下がった同線近辺の重い推移が想定できる。反発しても
164.27 円でしばらく横ばいが続く見込みの一目均衡表・転換
線や、やや上に位置する低下中の一目・転換線が上値を抑え
そうだ。
レジスタンス1 164.27(日足一目均衡表・基準線)
前日終値 163.61
サポート1 162.78(10/22 安値)
<豪ドル円=200 日線付近の攻防>
大陰線引け。102 円台の重さを確認後、100 円割れを意識
させる水準まで下落が進んだ。相場の強弱を判断する上の分
岐点である200 日移動平均線付近の攻防となっている。同線
は本日100.57 円前後で推移。上昇余地を残す一目均衡表・
基準線100.75 円や転換線100.97 円を追うような戻りを期待
したいところだが、急落の痛みもあって反発は限定されそう。
レジスタンス1 101.28(11/7-8 下落幅の半値戻し)
前日終値 100.49
サポート1 99.83(11/1 安値)