ウィークリーレポート 2024年11月15日
週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円)
November 15, 2024
ドル先高観、一段と高まる
◆ドル円、トランプトレードへの期待感から堅調
◆ドル円、介入に警戒も可能性は低いとの見方強い
◆ユーロドル、ドル独歩高で下値探る展開続く
予想レンジ
ドル円 154.50-162.00 円
ユーロドル 1.0200-1.0600 ドル
11 月18 日週の展望
ドル円は、トランプトレード継続への期待感、米利下げ観測の後退から引き続き底堅く推移し そうだ。今週は来年から始動するトランプ政権の主要ポストに関する報道が伝わった。国務長官 にルビオ上院議員、国家安全保障担当補佐官にウォルツ下院議員を抜擢するなど、いずれも対中 強硬派のメンバーが選出されたことで外国為替市場では中国人民元売りが活発化。その他通貨に も波及したためドルが全面高となった。また、米大統領選と同時実施された連邦下院選で共和党 が多数派を維持したことも判明し、赤をシンボルカラーとする共和党が大統領職と上下両院を独 占する「トリプルレッド」を達成。トランプ政権が掲げる財政拡大政策が円滑に進むとの思惑が ドル一段高を後押ししている。 また、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が14 日に「経済情勢は極めて良好であり、利下 げを急ぐ必要があるというシグナルを発していない」と発言し、米利下げ観測が後退しているこ ともドル買いを促しそうだ。CME のフェドウォッチによると、12 月の米連邦公開市場委員会(FOMC) での据え置き確率が41%前後まで上昇しており、利下げが見送られる可能性が出てきている。 ここで警戒されるのが政府・日銀による介入だが、「直近の高値である昨年7 月に付けた161.95 円を超えるまでは可能性が低いのでは」との見方が強い。また、トランプ政権による米金利先高 観、衆院選大敗による与党・自民党の弱体化など、ファンダメンタルズ面から見ても妥当な動き であるため、介入を実施することは難しい状況だろう。仮に介入したとしても、状況が変わった わけではないため、すぐに反発する可能性が高そうだ。 ユーロドルは、ドル全面高となるなか下値を模索する展開が想定される。今週発表された11 月 独ZEW 景況感指数にユーロ売りで反応するなど欧州景気指標に対して敏感になっているため、22 日に発表される欧州各国の購買担当者景気指数(PMI)速報値には警戒したい。なお、独与野党は 来年2 月23 日に総選挙を行うことで合意したが、現状では最大野党会派「キリスト教民主・社会 同盟」が支持率で首位に立っていることから、政権交代の可能性が高まっている。
11 月11 日週の回顧
ドル円は、米長期金利の上昇とともにドルが独歩高となった流れに沿った。多少の上下はあり ながらも週後半にかけて強い地合いを維持。FRB 議長のタカ派発言が伝わると156 円台半ばまで 上げ幅を広げ、7 月23 日以来の高値を付けている。 ユーロドルはドル全面高となった影響から軟調に推移。目先のサポートとして意識されていた 4 月16 日の年初来安値1.0601 ドルを下抜けて、昨年10 月以来の安値となる1.0497 ドルまで下 げ足を速めた。(了)
週間展望・回顧(豪ドル、南ア・ランド)
November 15, 2024
ZAR、SARB の金融政策に注目
◆豪ドル、「トランプ・トレード」の影響でさえない動きが続く
◆NZ ドル、PPI はRBNZ の大幅利下げをサポートする内容となるかを見極め
◆ZAR、SARB の金融政策に注目
予想レンジ
豪ドル円 98.00-103.00 円
南ア・ランド円 8.25-8.65 円
11 月 18 日週の展望
豪ドルは上値の重い動きとなりそうだ。豪準備銀行(RBA)のブロック総裁は今週、「金利は十 分に制限的な水準にあり、インフレに確信が持てるまでその水準を維持する」との見解を示した。 RBA は5-6 日に開催された理事会の声明文でも「基調インフレは依然として高すぎる」などと言 及。タカ派的な見解を維持した。市場ではRBA が金融緩和に転じるのは早くても来年前半との見 方が中心のようだが、19 日に公表されるRBA 理事会の議事要旨でも中銀の姿勢を改めて確認して おきたい。 もっとも、足もとの為替市場では「トランプ・トレード」によるドル買いが強まっており、豪 ドルも対ドルでは売りに押される場面が目立った。豪ドル円はドル円の上昇分によってある程度 相殺されたため下値も限られているが、政府・日銀が前回(7 月11-12 日)為替介入を実施した 際の水準も徐々に近づきつつあることは頭に入れておくべきだろう。介入への警戒感がドル円の 上値を抑制することになれば、自然と豪ドル円の下値リスクも高まるため、注意が必要となりそ うだ。 隣国のニュージーランド(NZ)では18 日に7-9 月期卸売物価指数(PPI)の発表が予定されて いる。翌週の27 日には年内最後のNZ 準備銀行(RBNZ)金融政策決定会合が控えているが、次回 会合が2025 年2 月19 日と3 カ月近く期間が空くことから、市場では連続での50bp 利下げや75bp の大幅利下げを予想する声もある。7-9 月期PPI がRBNZ の利下げをサポートする内容となるか注 目される。 南アフリカ・ランド(ZAR)は弱含む展開が予想される。来週は20 日に10 月消費者物価指数(CPI) や9 月小売売上高、21 日に南アフリカ準備銀行(SARB)の金融政策公表が予定されており、市場 の注目を集めるだろう。前回の金融政策決定委員会(MPC)で約4 年ぶりの利下げに踏み切った SARB だが、市場では今回も25bp の連続利下げを実施するとの見方が優勢だ。 SARB の利下げは南ア経済を下支えするとの見方もある一方、足もとで「トランプ・トレード」 によるドル買いが進むなか、対ドルでのZAR 売りを一段と促すことも考えられる。ドル円の状況 次第ではZAR 円にも売り圧力が強まる可能性があり、警戒しておきたい。
11 月 11 日週の回顧
豪ドルは対ドルで軟調に推移。0.65 ドルを割り込んで8 月5 日以来の安値を更新した。対円で は比較的狭い値幅内でのもみ合いとなったが、やや上値の重さが目立った。 ZAR も対ドルでは売り優勢。連日でドル買い・ZAR 売りが進み、週初の17.56ZAR 台から18.39ZAR 台まで大きくZAR 安が進んだ。ZAR 円も対ドルでのZAR 安の影響から8.48 円まで下押すなど軟調 に推移した。(了)
週間展望・回顧(ポンド、加ドル)
November 15, 2024
ポンド、英インフレ指標に注目
◆ポンド、10 月CPI に注目
◆ポンド、英労働党政権と米次期政権との関係性も注視
◆加ドル、10 月CPI で中銀の抑制レンジの下限に迫るかを見極め
予想レンジ
ポンド円 195.50-201.50 円
加ドル円 109.50-113.50 円
11 月 18 日週の展望
ポンドは、英国で賃金の減速傾向が確認された後でもあり、10 月消費者物価指数(CPI)の結 果が注目される。9 月CPI は前年比1.7%上昇と、前回から鈍化を織り込んでいた市場予想から更 に下振れて2021 年4 月以来の低水準を記録した。12 日発表の7-9 月期・賃金上昇率(除くボー ナス)は、前年比4.8%と約2 年ぶりの低い伸び率だった。今のところ、次回12 月にイングラン ド銀行(英中銀、BOE)が開く金融政策委員会(MPC)について、市場は政策金利の据え置きを見 込んでいるが、10 月CPI が英中銀のインフレ目標値2%を下回った水準で伸び悩むようであれば、 金利先安観の強まりは避けられないだろう。そうなると、次のMPC 投票前に11 月CPI が発表され るものの、ポンドの上値は抑制されそうだ。ただ、英中銀チーフエコノミストでもあるピルMPC 委員が「基調的なインフレ圧力は残っている」と指摘していることは気にかけておく必要がある。 同委員は賃金上昇率についても、依然として高すぎるとの見解を示している。 また、米国でトランプ次期政権の陣営が明らかになりつつあるなか、今後の英米関係の行方に も目を向けておきたい。トランプ次期米大統領が掲げた移民政策などがスターマー英首相率いる 労働党の政策と大きな隔たりがあるため、労働党は米民主党とより近い関係にあった。今後はス ターマー首相がトランプ氏と関係構築をどのように図るかが重要となってくる。 加ドルは10 月カナダCPI が材料視されるだろう。前回9 月分は、前年比が1.6%まで鈍化した。 2021 年2 月以来の低い伸び率を記録したことで、その後の金融政策決定会合でカナダ中銀は 0.50%の利下げを決定。カナダCPI は、中銀が1-3%に設定しているインフレ抑制レンジの下限 に近付いている。今回発表されるCPI は、12 月の中銀会合を前にした最後のインフレ指標。短期 金融市場では0.25%の追加利下げを完全に織り込み済みだが、結果次第では2 会合連続の0.50% 引き下げに対する思惑が高まるかもしれない。もちろん、ヘッドラインインフレだけに目を向け るのではなく、政策決定で中銀が重視するCPI 中央値やトリム値(9 月・前年比、それぞれ2.3% と2.4%で前回から横ばい)も注視する必要がある。 なおトランプ米次期大統領が声高に叫ぶ関税引き上げについて、カナダ産石油・天然ガスの分 野には例外が設けられるとの見方が浮上。加ドルにとってはポジティブ材料となりそうだ。
11 月 11 日週の回顧
ポンドは対円で買い先行も198 円半ばを上値に197 円割れまで失速。英賃金の上昇率が減速し たことや失業率(ILO 方式)悪化を受けて下落圧力が強まった。対ドルでは1.29 ドル前半から1.26 ドル前半まで下げ幅を広げた。英雇用データを背景としたポンド売りだけでなく、トランプ・ト レードでドル全面高となった流れに押された。加ドルは対円では109 円後半から111 円半ばまで 上昇。トランプ・トレードで対ドルでは1.4070 加ドル台まで加ドル売り・ドル買いが進んだもの の、堅調なドル円が加ドル円の支えとなった。(了)