デイリーレポート 2023年7月24日

July 24, 2023

【前日の為替概況】ドル円 141.96 円まで急騰、日銀YCC修正観測が後退

21 日のニューヨーク外国為替市場でドル円は 4 日続伸。終値は 141.73 円と前営業日 NY 終値(140.07 円)と比べて 1 円 66 銭程度のドル高水準だった。日本時間夕刻に「日銀は来週 27-28 日の金融政策決定 会合で、長短金利操作(イールドカーブコントロール、YCC)などの金融政策を修正する可能性は低く、 大規模緩和を維持する公算が大きい」との観測報道が伝わり、一時 141.96 円まで急伸した影響が残った。

NY 市場では一時 141.22 円付近まで上げ幅を縮める場面もあったが、下押しは限定的だった。23 時過ぎ には 141.87 円付近まで買われ、142 円を再びうかがう展開となった。

なお、神田真人財務官は円急落について「緊張感を持って注視をしている。過度な変動は望ましくない という観点からあらゆる手段を排除せずに検討する」と述べたほか、日銀の金融政策については「市場で は何らかの修正がある可能性を巡って様々な期待、憶測が広がっている」と指摘した。

ユーロドルは小幅ながら 4 日続落。終値は 1.1124 ドルと前営業日 NY 終値(1.1130 ドル)と比べて 0.0006 ドル程度のユーロ安水準だった。欧州中央銀行(ECB)の利上げ継続観測が後退する中、ユーロ売り・ド ル買いが進行。前日の安値 1.1119 ドルを下抜けて一時 1.1108 ドルまで値を下げた。

ただ、売り一巡後はユーロクロスの上昇につれたユーロ買い・ドル売りが入り下げ渋った。ユーロ豪ド ルは一時 1.6540 豪ドル、ユーロ NZ ドルは 1.8052NZ ドル、ユーロカナダドルは 1.4715 カナダドル、ユー ロポンドは 0.8680 ポンドまで値を上げた。

ユーロ円は反発。終値は 157.68 円と前営業日 NY 終値(155.90 円)と比べて 1 円 78 銭程度のユーロ高 水準。「日銀は来週の金融政策決定会合で YCC 修正を見送る方針」との観測報道が相次ぐと、欧州序盤に 一時 158.05 円と 2008 年 9 月以来約 15 年ぶりの高値を更新した。22 時前には 157.16 円付近まで伸び悩 んだものの、下押しは限定的となり、取引終了間際には 157.82 円付近まで強含んだ。

【本日の東京為替見通し】円売りが優勢な展開か、日米欧の金融政策の乖離観測を背景に

本日の東京外国為替市場では、今週開催される日米欧の金融政策決定会合での金融政策の乖離観測を背 景に、円売り優勢な展開が予想される。

25-26 日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、一連の引き締めサイクルでは 11 回目の利上げ(+0.25% ⇒5.25-50%)、27 日の欧州中央銀行(ECB)理事会では、9 回目の利上げ(+0.25%⇒4.25%)が確実視さ れている。

一方、27-28 日の日銀金融政策決定会合では現状の大規模金融緩和策が維持、すなわち、世界で唯一の マイナスの政策金利(-0.10%)とイールドカーブコントロール(YCC)の現状継続が見込まれている。

米国と日本の金融政策、インフレ率、10 年債利回りは以下の通りとなっている。

【政策金利】 【6 月 CPI(前年比)】 【10 年債利回り】 ・米国:5.00-25% +3.0% 3.8%台 ・日本:-0.1% +3.3% 0.4%台

日銀の YCC に関しては、フォワードガイダンスの文言「機動的に対応」、6 月会合での早期見直しの検 討を求める意見、「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で物価見通しが現在の+1.8%から 2%台へ引 き上げられる可能性という新聞報道が、許容変動幅の拡大観測を台頭させていた。そして、7 日の内田日 銀副総裁や 13 日の早川元日本銀行理事による YCC の許容変動幅の拡大を示唆する発言が、ドル円を 14 日に 137.25 円まで下落させた。

しかし、18 日に植田日銀総裁が「持続的・安定的な2%の物価目標までに距離があるとの認識に変化 がなければ、粘り強く金融緩和を続ける姿勢も変わらない」と述べて、YCC の許容変動幅の拡大観測を打 ち消した。さらに、21 日には、日銀関係筋による「日本銀行は現時点で YCC 政策の副作用に緊急に対応 する必要性は乏しいとみている」との発言が伝えられ、ドル円は 141.96 円まで上昇し、7 日の内田日銀 副総裁の時の安値 142.07 円に迫った。

先週末のドル円の上昇に対して、神田財務官は「緊張感を持って注視をしている。過度な変動は望まし くないという観点からあらゆる手段を排除せずに検討する」と牽制した。

昨年 9 月 22 日のドル売り・円買い介入は、日銀決定会合で金融政策の現状維持が決定され、黒田日銀 総裁(当時)が利上げに否定的な見解を示した後、ドル円が 145 円台まで上昇していた 17 時台に実施された。今回も、28 日の日銀決定会合で現状維持が決定され、植田日銀総裁が金融政策の現状維持を強調 した場合、ドル円は 145 円台に上昇する可能性が高まるため、ドル売り・円買い介入の可能性に要警戒と なる。

なお、7 月 18 日時点(※NY 市場終値:138.83 円)の IMM 通貨先物の非商業(投機)部門取組の円のネ ットショートは、9 万 239 枚だったが、その後の 141 円台までの上昇により、10 万枚を回復していると思 われる。前回介入時、ネットの円ショートは 10 万枚を超えていた。

【本日の重要指標】

※時刻表示は日本時間

<国内>

特になし

<海外>

○07:45 ◎ 6 月ニュージーランド(NZ)貿易収支

○14:00 ◎ 6 月シンガポール消費者物価指数(CPI、予想:前年比 4.4%)

○16:15 ◎ 7 月仏製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値(予想:46.0)

○16:15 ◎ 7 月仏サービス部門 PMI 速報値(予想:48.5)

○16:30 ◎ 7 月独製造業 PMI 速報値(予想:41.0)

○16:30 ◎ 7 月独サービス部門 PMI 速報値(予想:53.1)

○17:00 ◎ 7 月ユーロ圏製造業 PMI 速報値(予想:43.5)

○17:00 ◎ 7 月ユーロ圏サービス部門 PMI 速報値(予想:51.6)

○17:30 ◎ 7 月英製造業 PMI 速報値(予想:46.0)

○17:30 ◎ 7 月英サービス部門 PMI 速報値(予想:53.0)

○22:45 ◎ 7 月米製造業 PMI 速報値(予想:46.1)

○22:45 ◎ 7 月米サービス部門 PMI 速報値(予想:54.0)

○22:45 ◎ 7 月米総合 PMI 速報値(予想:53.0)

○25 日 02:00 ◎ 米財務省、2 年債入札

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。

※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。

※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

【前日までの要人発言】

21 日 11:28 中国外国為替規制当局

「海外投資家は人民元建て資産を買い続けるだろう」 21 日 18:27 神田財務官

「為替市場について、当然緊張感を持って注視してい る」

「過度な変動は望ましくないという観点から、あらゆる手 段を排除せず検討」

※時間は日本時間

【日足一目均衡表分析】

<ドル円=基準線を支持に押し目買いスタンス>

大陽線引け。雲の上で引けているものの、転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線を下回っているため売りシグナルが優勢な展開となっている。しかし、4 手連続陽線で転換線を上回って引けたことで続伸の可能性が示唆されている。目先の上値目処は、145.07 円から 137.25 円までの下落幅の61.8%戻しの 142.08 円処となる。本日は、基準線を支持に押し目買いスタンスで臨み、同線を下抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 2 144.20(7/7 高値)
レジスタンス 1 143.01(7/10 高値)
前日終値 141.73

<ユーロドル=7/20 高値を抵抗に戻り売りスタンス>

小陰線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で引けているため、三役好転の強い買いシグナルが点灯中。もっとも、4 手連続陰線で転換線を下回って引けており、続落の可能性が示唆されている。本日は、転換線 1.1140 ドルを念頭に置き、20 日の高値を抵抗に戻り売りスタンスで臨み、同水準を上抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 1 1.1229(7/20 高値)
前日終値 1.1124
サポート 1 1.1055(日足一目均衡表・基準線)

<ユーロ円=7/20 高値を支持に押し目買いスタンス>

大陽線引け。転換線と基準線は同値だが、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で引けていることで買いシグナルが優勢な展開。抱き線で切り返して転換線と基準線を大きく上回って引けており続伸の可能性が示唆されている。本日は、20 日の高値を支持に押し目買いスタンスで臨み、同水準を下抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 1 158.05(7/21 高値)
前日終値 157.68
サポート 1 156.62(7/20 高値)

<豪ドル円=94.50 円台の雲の上限から転換線が支持帯に>

陽線引け。転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線を下回り、雲の上で引けているものの、売りシグナルが優勢な展開となっている。しかし、4 手連続陽線で転換線を上回って引けており、続伸の可能性が示唆されている。本日は、雲の上限 94.57 円から転換線 94.53 円を支持帯に押し目買いスタンスで臨み、転換線を下抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 1 96.83(7/4・5 高値)
前日終値 95.43
サポート 1 94.53(日足一目均衡表・転換線)