デイリーレポート 2023年7月27日

July 27, 2023

【前日の為替概況】ドル、全面安 FOMC は利上げ決定も引き締めサイクル終了観測が台頭

26 日のニューヨーク外国為替市場でドル円は 3 日続落。終値は 140.24 円と前営業日 NY 終値(140.90 円)と比べて 66 銭程度のドル安水準だった。米連邦準備理事会(FRB)は今日まで開いた米連邦公開市場 委員会(FOMC)で、市場予想通り 0.25%の利上げを実施。声明では「追加の情報と金融政策への意味を 引き続き評価する」としたうえで、「徐々にインフレ率を 2%に戻すために適切とみられる追加的な金融 政策の引き締めの程度を決めるに当たり、金融政策の度重なる引き締め、金融政策が経済活動とインフレ 率に及ぼす影響の遅れ、および経済と金融の動向を考慮する」との前回会合までの表現を踏襲した。

ただ、パウエル FRB 議長が FOMC 後の会見で「将来の利上げについてはデータを重視したアプローチを とる」「9 月利上げはデータ次第」「今後も会議ごとに決定を下していく」と発言すると、米金融引き締め 長期化観測が後退し米金利が低下。全般ドル売りが優勢となり、一時 139.93 円と日通し安値を更新した。 ユーロドルは 7 営業日ぶりに反発。終値は 1.1086 ドルと前営業日 NY 終値(1.1055 ドル)と比べて 0.0031 ドル程度のユーロ高水準だった。NY 時間に入るとしばらくはもみ合いの展開が続いていたが、パウエル FRB 議長が会見で次回会合での金利据え置きの可能性に言及すると、米金利の低下とともにドル売りが優 勢となった。4 時過ぎには一時 1.1107 ドルと日通し高値を更新した。

なお、市場では FOMC の結果について「FRB は追加利上げの可能性を残した。フォワードガイダンスに 変更はなかった」との見方があった一方、「FRB の今回の利上げサイクルは終了したようにみえる」「FRB による利上げは打ち止めになる可能性が高い」との声が聞かれた。

ユーロ円は 3 日続落。終値は 155.48 円と前営業日 NY 終値(155.78 円)と比べて 30 銭程度のユーロ安 水準。欧州株相場の下落を背景にリスク回避的な円買い・ユーロ売りが先行すると、21 時前に一時 155.15 円と日通し安値を更新した。ただ、売り一巡後は徐々に買い戻しが進み、155.71 円付近まで下げ渋った。 安く始まった米国株が底堅く推移したことも相場を下支えした。

NY ダウは 13 日続伸し、昨年 2 月以来約 1 年 5 カ月ぶりの高値を更新した。13 連騰は 36 年半ぶり。

【本日の東京為替見通し】ドル円、動きづらい展開か 本日から明日の日銀会合を見据えて

本日の東京外国為替市場のドル円は、本日から明日にかけて開催される日銀金融政策決定会合の結果待 ちで、動きづらい展開が予想される。

ドル円は昨日、FOMC で金融引き締め継続にも関わらず一時 139.93 円まで売られた。市場は日銀会合で の大規模金融緩和の継続を予想しながら、140 円台で待機することになる。 FOMC では全会一致で第 11 次利上げ(+0.25%)が決定され、FF 金利誘導目標が 5.25-50%まで引き上 げられた。パウエル FRB 議長は「データ次第で 9 月利上げがある可能性」に言及しつつも「利上げの可能 性も、利上げなしの可能性もある」と述べたことで、米国債利回りが低下。為替相場では、ドル全面安の 展開となっている。

今回の日銀会合では現状維持が予想されている。見通しの背景には、今月 18 日の植田日銀総裁の発言 「持続的、安定的な 2%のインフレ達成にはまだ距離がある」や 21 日の記者レク記事「日銀、金融政策 維持の公算 YCC 変動幅据え置きの可能性、YCC 副作用に対応の緊急性乏しい」などがある。

FRB が予想通りに利上げを決定した後、日銀が予想通りに現状維持を決定するのならば、ドル円は上昇 トレンドを続けるはずだ。しかし現状は、21 日の記者レク記事を受けた高値 141.96 円からパウエル FRB 議長発言を受けた安値 139.93 円まで下落しており、21 日の安値 139.75 円に迫っている。 市場は、FOMC 声明やパウエル議長の発言の中に、利上げサイクルの終了の可能性を見出した模様だ。 日銀決定会合や植田総裁の発言に対しても、同様の穿った見立ての可能性があることで、予断を許さない 状況が続くのかもしれない。

昨年 9 月を振り返ると、21 日に FOMC で 0.75%の利上げが決定され FF 金利誘導目標が 3.00-25%に引 き上げられ、ドル円は 144.70 円まで上昇した。22 日の日銀会合で大規模金融緩和策の継続が決定され、 15 時半からの会見で、黒田日銀総裁(当時)が「当面金利を引き上げることはない」と述べたことで、 145.90 円まで続伸した。そして、17 時半過ぎに、本邦通貨当局による過去最大規模のドル売り・円買い 介入が断行されている。

【本日の重要指標】

※時刻表示は日本時間

<国内>

○08:50 ◇ 対外対内証券売買契約等の状況(週次・報告機関ベース)

○日銀金融政策決定会合(1 日目)

<海外>

○10:30 ◇ 4-6 月期豪輸入物価指数(予想:前期比▲0.8%)

○15:00 ◇ 8 月独消費者信頼感指数(Gfk 調査、予想:▲24.7)

○18:30 ◇ 6 月南アフリカ卸売物価指数(PPI、予想:前月比 0.5%/前年比 6.0%)

○21:00 ◇ 6 月メキシコ失業率(季節調整前、予想:3.00%)

○21:00 ◇ 6 月メキシコ貿易収支(予想:11.50 億ドルの赤字)

○21:15 ☆ 欧州中央銀行(ECB)定例理事会、終了後政策金利発表(予想:4.25%に引き上げ)

○21:30 ☆ 4-6 月期米国内総生産(GDP)速報値(予想:前期比年率 1.8%)

◎ 4-6 月期米個人消費(速報値、予想:前期比年率 1.3%)

◎ 4-6 月期米コア PCE(速報値、予想:前期比年率 4.0%)

○21:30 ◎ 6 月米耐久財受注額(予想:前月比 1.0%/輸送用機器を除く前月比横ばい)

○21:30 ◎ 前週分の米新規失業保険申請件数/失業保険継続受給者数(予想:23.5 万件/175.0 万人)

○21:30 ◇ 6 月米卸売在庫(予想:前月比▲0.1%)

○21:45 ☆ ラガルド ECB 総裁、定例記者会見

○23:00 ◎ 6 月米住宅販売保留指数(仮契約住宅販売指数、予想:前月比▲0.5%/前年比▲15.9%)

○28 日 02:00 ◎ 米財務省、7 年債入札

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。

※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。

※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

【前日までの要人発言】

27 日 03:02 米連邦公開市場委員会(FOMC)声明

「最近の指標は、経済活動が引き続き緩やかなペース で拡大していることを示している」

「雇用の伸びはここ数カ月間堅調で、失業率は低いまま だ」

「インフレ率は引き続き高止まりしている」

「米国の金融システムは健全で強固だ」

「家計や企業の信用状況の引き締まりが経済活動、雇 用、インフレの重しになる可能性がある」

「これらの影響の程度は引き続き不透明だ。委員会は引 き続き、インフレのリスクに大いに注視している」

「委員会は雇用最大化と長期的な 2%のインフレ率の達 成を目指す」

「これらの目標を支援するため、委員会はフェデラルファ ンド(FF)金利の目標誘導レンジを 5.25-5.50%に引き 上げることを決定した」

「委員会は追加情報と金融政策への影響を引き続き評 価する」

「徐々にインフレ率を 2%に戻すために適切とみられる 追加的な金融政策の引き締めの程度を決めるに当たり、 委員会は金融政策の度重なる引き締め、金融政策が経 済活動とインフレ率に及ぼす影響の遅れ、および経済と 金融の動向を考慮する」

「さらに、以前発表された計画で説明されている通り、委 員会は保有する米国債およびエージェンシーローン担 保証券の削減を続ける」

「委員会は、インフレ率を 2%の目標に戻すことに強く取 り組む」

「金融政策の適切な姿勢を評価するに当たり、委員会は 今後もたらされる経済見通しに関する情報の意味を引 き続き監視する」

「もしも委員会の目標の達成を妨げる可能性があるリス クが生じた場合、委員会は金融政策の姿勢を適切に調 整する準備がある」

「委員会の評価は、労働市場の状況、インフレ圧力、イ ンフレ期待、金融と世界の動向を含む幅広い情報を考 慮する」

「今回の金融政策決定は全会一致」

27 日 03:35 パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長

「住宅セクターは回復したが、2022 年の水準を大幅に下 回る」

「経済活動は緩やかなペースで拡大」

「将来の利上げについてはデータを重視したアプローチ をとる」

「引き締めの完全な効果はまだ感じられない」

「FOMC はインフレ率 2%の達成に強くコミット」

「一部のセクターでは引き締めの影響が見られる」

「長期的なインフレ期待は依然としてしっかりと安定して いる」

「高インフレは重大な困難をもたらす」

「インフレ率 2%達成のプロセスには長い道のりがある」

「名目賃金の伸びは若干緩和の兆しがある」

「1 会合おきに利上げするとの決定はない」

「データが正当化するなら 9 月の利上げはあり得る」

「9 月利上げの可能性も、利上げなしの可能性もある」

「FOMC は累積的な引き締めを行うが、遅れは考慮され る」

「今後も会議ごとに決定を下していく」

「インフレ抑制はトレンドを下回る成長を意味する可能性 が高い」

「6 月の消費者物価指数の減速は歓迎だが、それは 1 カ 月だけ」

「ヘッドラインのインフレがこれほど下がったことは良い こと」

「スタンスがより制限的になるにつれ、リスクが増大す る」

「FOMC はコアインフレ率の低下を望んでいるが、依然と して高水準にある」

「コアインフレは依然としてかなり高い」

「当面の間、金利を高水準に維持する必要」

「FOMC は今年中に利下げしないだろう」

「FOMC は賃金インフレをターゲットにしていない」

「幾人かのFOMCメンバーは来年の利下げを予想すると 発言」

「FRB スタッフはもはやリセッションを予測していない」

「2025 年頃まで 2%のインフレ目標の達成はないだろう」

※時間は日本時間

【日足一目均衡表分析】

<ドル円=三羽烏で雲の中へ、転換線が支持水準>

陰線引け。一目・雲の上限が昨日 139.90 円台から本日は140.69 円まで水準を上げ、明日以降は 141 円台に乗せる見込 み。転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線を下回って いるため売りシグナルが優勢な展開。3 手連続陰線(三羽烏) で基準線は下回った。しかしながら転換線を上回って引けて おり、反発の可能性が残されている。本日は 139.80 円台の 転換線を支持に押し目買いスタンスで臨み、同線を下抜けた 場合は手仕舞い。

レジスタンス 2 141.96(7/21 高値)
レジスタンス 1 141.16(日足一目均衡表・基準線)
前日終値 140.24
サポート 1 139.83(日足一目均衡表・転換線)
サポート 2 139.11(7/20 安値)

<ユーロドル=昨日届かなかった転換線を抵抗に戻り売り>

陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を 上回り、雲の上で引けているため、三役好転の強い買いシグ ナルが点灯中。抱き線で切り返し、7 手ぶりに陽線を作った。 しかしながら転換線を下回って引けており、反落の可能性が 示唆されている。 本日は昨日届かなかった 1.11 ドル半ばの転換線を抵抗に 戻り売りスタンスで臨み、同線を上抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 1 1.1149(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 1.1086
サポート 1 1.0977(7/11 安値)け

<ポンド円=7/24 安値を支持に押し目買いスタンス>

陰線引け。転換線は基準線を下回っているものの、遅行ス パンは実線を上回り、雲の上で引けているため買いシグナル が優勢な展開となっている。タスキ線で反落したものの転換 線を上回って引けており、反発の可能性が示唆されている。 本日は 181 円前半の転換線と後半の基準線を意識しながら の値動きか。戦略としては 24 日の安値を支持に押し目買い で臨み、同水準を下抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 1 182.52(7/21 高値)
前日終値 181.49
サポート 1 180.77(7/24 安値)

<NZ ドル円=基準線を抵抗に戻り売りスタンス>

陰線引け。雲の上で引けているものの、転換線は基準線を 下回り、遅行スパンは実線を下回っているため、売りシグナ ルが優勢な展開。2 手連続陰線で転換線を下回って引けてお り、続落の可能性が示唆されている。 本日は、転換線 87.45 円を念頭に置き、基準線を抵抗に戻 り売りスタンスで臨み、同線を上抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 1 87.97(日足一目均衡表・基準線)
前日終値 87.05
サポート 1 86.45(日足一目均衡表・雲の上限)