デイリーレポート 2023年7月31日

July 31, 2023

【前日の為替概況】ドル円 141.18 円まで上昇、日米株価指数の上昇でリスク選好の円売り優勢

28 日のニューヨーク外国為替市場でドル円は 5 営業日ぶりに反発。終値は 141.16 円と前営業日 NY 終 値(139.48 円)と比べて 1 円 68 銭程度のドル高水準だった。米連邦準備理事会(FRB)が金融政策を判 断するうえで重視している 6 月米個人消費支出(PCE)価格指数(デフレーター)で変動が激しい食品と エネルギーを除くコアデフレーターが前年比 4.1%上昇と予想の 4.2%を下回り、賃金インフレの動向を みる上で重要な 4-6月期米雇用コスト指数が前期比 1.0%上昇と予想の 1.1%上昇を下回ったことが伝わ ると、FRB による現在の利上げサイクルが終了するとの観測が高まり、米国株相場が底堅く推移。投資家 のリスク志向が改善し、全般円売りが優勢となった。ナイト・セッションの日経平均先物が大証終値比 370 円高の 3 万 3140 円まで上昇したことも相場の支援材料となり、アジア時間に付けた高値 141.07 円を 上抜けて一時 141.18 円まで値を上げた。

なお、東京市場では荒い値動きだった。日銀が今日まで開いた金融政策決定会合で、長短金利操作(イ ールドカーブ・コントロール、YCC)の運用を見直したことが伝わり、短時間で 141.07 円から 138.07 円 まで急落する場面があった。

ユーロドルは反発。終値は 1.1016 ドルと前営業日 NY 終値(1.0979 ドル)と比べて 0.0037 ドル程度の ユーロ高水準だった。欧州時間発表のユーロ圏各国の 4-6 月期国内総生産(GDP)速報値が底堅い結果だ ったことを受けて、ユーロ圏経済の過度な悪化懸念が後退し、ユーロ買い・ドル売りが先行。この日発表 の米経済指標がインフレ圧力の高まりを示さなかったこともユーロ買い・ドル売りを促し、一時 1.1047 ドルと日通し高値を更新した。

ユーロ円は 5 日ぶりに大幅反発。終値は 155.42 円と前営業日 NY 終値(153.12 円)と比べて 2 円 30 銭 程度のユーロ高水準。ユーロドルの上昇につれた買いが入ったほか、米国株や日経平均先物の上昇を背景 にリスク・オンの円売り・ユーロ買いが出た。アジア時間の高値 154.91 円を上抜けると一時 155.60 円ま で上値を伸ばした。アジア時間に付けた日通し安値 151.42 円からは 4 円超の上昇となった。

【本日の東京為替見通し】ドル円、日米 10 年債利回りの動向に連れた値動きか

本日の東京外国為替市場のドル円は、日米の 10 年債利回りの動向に連れた値動きが予想される。 28 日の日銀金融政策決定会合でのイールドカーブコントロール(YCC)の柔軟化措置を受けて、東京市 場は 141.07 円まで急騰した後、138.07 円まで急落した。欧米市場では、138 円台から 141.18 円まで上昇 して高値圏で引けている。

ドル円の変動要因の一つである日米金利差の観点からは、米 10 年債利回りがパウエル FRB 議長が 9 月 FOMC での利上げ休止の可能性を示唆したことで 3.9%台で伸び悩み、日本国債 10 年物利回りが YCC の柔 軟化措置を受けて 0.5%を超えていることは、ドル売り・円買い要因となる。しかし、日米株価動向の観 点からは、株価上昇はリスク選好のドル買い・円売り要因となる。最近は、海外投資家が日本株の買い越 しとセットで円売りを行ってきたことで、日経平均株価とドル円相場が連動してきている。

日銀金融政策決定会合のハト派要因(円安要因)は、以下の通りとなる。 ・金融政策である短期金利運用は「マイナス 0.1%」に維持した ・金融政策ではない長期金利を運用する「YCC」の許容変動幅の目途は±0.5%に維持した ・展望リポートでの 2024 年度の消費者物価指数見通しを+1.9%へ 4 月の+2.0%から下方修正した

タカ派要因(円高要因)は以下の通りとなる。 ・指し値オペ水準を「0.5%」から「1.0%」を引き上げた ・展望リポートでの 2023 年度の消費者物価指数品見通しを+2.5%へ 4 月の+1.8%から上方修正した

日本の財務省の為替政策は、ボラティリティーを抑制するとの名目で、145 円以上のドル高・円安を阻 止する意向が窺える。28 日の植田日銀総裁の会見では、為替市場のボラティリティーを抑制する、との 発言があり、財務省の為替政策と日本銀行の金融政策がボラティリティー抑制で歩調を合わせたことは、 ドル円の 145 円以上の上昇を抑制する可能性に留意しておきたい。

10 時 30 分に発表される 7 月中国製造業購買担当者景気指数(PMI)は 48.9 と予想されており、6 月の 49.0 からの悪化が見込まれている。ネガティブサプライズだった場合は、豪ドル円の売りがドル円の売 りに波及する可能性に警戒しておきたい。

【本日の重要指標】

※時刻表示は日本時間

<国内>

○08:50 ◇ 6 月商業販売統計速報(小売業販売額、予想:前年比 5.4%)

○08:50 ◎ 6 月鉱工業生産速報(予想:前月比 2.4%/前年比 0.3%)

○14:00 ◇ 7 月消費動向調査(消費者態度指数 一般世帯、予想:36.2)

○14:00 ◇ 6 月新設住宅着工戸数(予想:前年比▲0.5%)

○19:00 ◇ 外国為替平衡操作の実施状況(介入実績)

<海外>

○10:00 ◇ 7 月 ANZ 企業信頼感

○10:30 ◎ 7 月中国製造業購買担当者景気指数(PMI、予想:48.9)

○15:00 ◇ 6 月独輸入物価指数(予想:前月比▲0.8%/前年比▲10.7%)

○15:00 ◎ 6 月独小売売上高(予想:前月比▲0.3%/前年比▲0.4%)

○17:30 ◇ 6 月英消費者信用残高(予想:13 億ポンド)

○17:30 ◇ 6 月英マネーサプライ M4

○17:30 ◎ 4-6 月期香港域内総生産(GDP)速報値(予想:前期比 0.6%/前年同期比 3.5%)

○18:00 ☆ 4-6 月期ユーロ圏 GDP 速報値(予想:前期比 0.2%/前年比 0.5%)

○18:00 ☆ 7 月ユーロ圏消費者物価指数(HICP)速報値(予想:前年比 5.3%)

○18:00 ☆ 7 月ユーロ圏 HICP コア速報値(予想:前年比 5.4%)

○21:00 ◎ 6 月南アフリカ貿易収支(予想:50 億ランドの黒字)

○21:00 ◎ 4-6 月期メキシコ GDP 速報値(予想:前期比 0.6%/前年比 3.2%)

○22:20 ◎ グールズビー米シカゴ連銀総裁、講演

○22:45 ◎ 7 月米シカゴ購買部協会景気指数(予想:43.4)

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。

※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。

※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

【前日までの要人発言】

28 日 11:33 鈴木財務相

「日銀の政策判断に関してはコメントしない」

「日銀には、適切な金融政策の運用を期待している」

「米連邦準備理事会(FRB)や他の中銀の金融政策を注 視している」

28 日 17:44

「YCC 運用見直し、具体的政策は日銀に委ねられるべ きものである」

「日銀には引き続き政府と連携し、物価安定目標の持続 的・安定的な実現に期待」

「YCC 運用見直しの為替市場への影響についてのコメ ントは控えたい」

「為替市場は基本的にはファンダメンタルズに沿って動 く」

28 日 12:31 日本銀行声明

「必要なら躊躇なく追加緩和」

「長短金利操作の修正を決定」

「10 年物国債利回りの操作を柔軟化」

28 日 15:38 植田日銀総裁

「YCC の運用柔軟化、賛成多数で決定した」

「粘り強く金融緩和を継続する必要がある」

「経済・物価をめぐる不確実性は極めて高い」

「日本経済の現状、緩やかに回復していると判断」

「経済・物価の上下のリスクに機動的に対応」

「必要があれば躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じ る」

「0.5-1.0%では機動的に過度な金利上昇圧力を抑制」

「1%への上昇は想定していないが念のための上限とし て 1%とした」

「1%を超えて金利が上昇しないように連続指値オペを 実施する」

「基調的な物価 2%へ距離があるとの判断は変えていな い」

「物価上振れが顕在化してからの対応は後手に回り混 乱する」

「今回の決定は金融緩和の持続性を高めるための措 置」

「YCC の修正は政策正常化に踏み出す動きではない」

「短期金利引き上げにはまだ大分距離がある」

「YCC 柔軟化で国債買い入れが減るかは分からない」

「為替をターゲットにしていない」

「緩和の副作用について、今回は為替市場のボラティリ ティも含め考えている」

「金融市場のボラティリティを抑える」

28 日 16:09 ミュラー・エストニア中銀総裁

「2023 年下半期には食品価格の上昇が緩和される可能 性が高い」

「短期的な GDP 見通しは数カ月前より悪化」

「これまでの利上げは明らかに効果を上げている」

28 日 21:37 ナーゲル独連銀総裁

「必要な限り、十分に高い金利を維持する必要がある」

※時間は日本時間

【日足一目均衡表分析】

<ドル円=転換線を支持に押し目買いスタンス>

陽線引け。転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線を 下回り、雲の上で引けているものの、売りシグナルが優勢な 展開。しかし、4 手連続陰線の後、抱き線で切り返して転換 線を上回って引けており、続伸の可能性が示唆されている。 本日は、転換線を支持に押し目買いスタンスで臨み、同線 を下抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 2 143.01(7/10 高値)
レジスタンス 1 141.96(7/21 高値)
前日終値 141.16
サポート 1 140.02(日足一目均衡表・転換線)
サポート 2 138.07(7/28 安値)

<ユーロドル=転換線を抵抗に戻り売りスタンス>

陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を 上回り、雲の上で引けているため、三役好転の強い買いシグ ナルが点灯中。しかし、孕み線で反発したものの転換線を下 回って引けており、反落の可能性が示唆されている。 本日は、転換線を抵抗に戻り売りスタンスで臨み、同線を 上抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 1 1.1092(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 1.1016
サポート 1 1.0865(日足一目均衡表・雲の上限)

<ポンド円=基準線を支持に押し目買いスタンス>

大陽線引け。転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線 を下回り、雲の上で引けているものの、売りシグナルが優勢 な展開となっている。しかし、孕み線で反発して転換線を上 回って引けており、続伸の可能性が示唆されている。 本日は、基準線を支持に押し目買いスタンスで臨み、同線 を下抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 1 182.52(7/21 高値)
前日終値 181.41
サポート 1 180.17(日足一目均衡表・基準線)

<NZ ドル円=上昇中の転換線を支持に押し目買いスタンス>

下影陰線引け。転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実 線を下回り、雲の上で引けているものの、買いシグナルが優 勢な展開。3 手連続陰線の後、雲の中へ下影を伸ばした孕み 線で反発して、転換線を上回って引けており、続伸の可能性 が示唆されている。 本日は、上昇中の転換線を支持に押し目買いスタンスで臨 み、同線を下抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 1 87.98(7/25 高値)
前日終値 86.99
サポート 1 86.47(日足一目均衡表・転換線)