BOE、3.75%で据え置き。 利上げ票が「3」に増えた。
今週(7/30)の会合で、イングランド銀行は政策金利を3.75%に据え置きました(採決6対3)。反対した3名はいずれも「利下げ」ではなく0.25%の利上げを主張。ベイリー総裁は「世界情勢はより不確実でインフレ的、国内はより落ち着いている」と、上下双方のリスクに言及しました。図で読み解きます。
利上げ票が2→3に増加
利上げを求める反対票が、3票に増えた
イングランド銀行(BOE)の金融政策委員会(MPC)は、7月30日の会合で政策金利(バンクレート)を3.75%に据え置きました(5会合連続)。採決は6対3。注目すべきは反対者の中身です。反対した3名(グリーン委員・ピル理事・マン委員)が求めたのは利下げではなく、0.25%の利上げ。6月の反対2票から、利上げを求める「タカ派」がさらに増えました。
これは「タカ派的な据え置き(hawkish hold)」と呼ばれます。ベイリー総裁は今回の判断について、「世界情勢はより不確実でインフレ的(米・イラン情勢など)である一方、国内の物価環境はより落ち着いている」と説明。海外発の上振れリスクと、国内の落ち着きの間でバランスを取った形です。エネルギー価格の変動が大きいなか、慎重に様子を見ています。
5.25%の山を下りて、3.75%で一服
BOEはコロナ後のインフレに対し、2021年末から14回連続で利上げ。バンクレートは2023年8月に5.25%のピークに達しました。その後インフレ鈍化を受けて2024年8月から利下げに転じ、2025年12月に3.75%へ。以後は4会合連続で据え置き、下り坂の途中で足を止めています。
利下げサイクルは、6回の引き下げ(合計1.5%)でいったん停止しました。市場はかつて2026年中のさらなる利下げを見込んでいましたが、物価再燃リスクとタカ派的な票割れを受けて、むしろ利上げを織り込む動きに転じています。「次は上か、下か」が読みにくい、難しい局面です。
物価は鈍化、でも「サービス」が粘る
直近のCPI(消費者物価)は前年比+2.8%まで鈍化しました。目標2%に近づきつつありますが、BOEは「年後半に再び上昇する」と警告。中東情勢に絡むエネルギー高が時間差で波及するためです。賃金を反映するサービスCPIも+3.2%と粘り強く、物価が目標へ完全に戻りきらないリスクが残ります。
足元の物価は落ち着きつつあるものの、BOEは先行きの上振れを警戒します。エネルギー価格は前回会合以降に下落したとはいえ、なお高く変動が大きいまま。労働市場では失業率が5.0%へ上昇し、景気減速の兆しも見えます。物価の再燃リスクと景気の弱さの綱引きのなか、委員会は据え置きで様子を見つつ、利上げを求める声も無視できない——難しい局面が続いています。
国債を「売る」中央銀行 — 量的引き締め
BOEは主要中銀のなかでも踏み込んだ量的引き締め(QT)を進めています。満期到来を待つだけでなく、保有する英国債(ギルト)を市場で能動的に売却しているのが特徴。2025年10月からの1年間で、保有残高を700億ポンド削減する計画です。
利上げを求める反対票が3票に増えたことで、市場では英国債(ギルト)利回りの上昇圧力が意識されます。QTによる需給の緩みも、長期金利を押し上げる一因です。金利を据え置きつつ、バランスシート面では引き締めを続ける——その複合効果が市場に効いています。
誰が決める? — MPCの「9人」
金融政策は、金融政策委員会(MPC)の9人による一人一票の多数決で決まります。総裁・副総裁らBOE内部の5人と、外部から任命される外部委員4人で構成。FRBやECBと違い、各委員の投票がそのまま票数として公表されるのが大きな特徴です。
この透明性ゆえに、票割れそのものが強いメッセージになります。票の流れを追うと、3月9対0 → 4月8対1 → 6月7対2 → 7月6対3と、利上げを求める「タカ派」が毎回一歩ずつ増えてきました。反対が3票に達したことは、委員会のインフレ警戒の高まりを映すもの。あと1〜2票動けば多数派が変わりうる情勢で、市場は利上げ再開の可能性を意識し始めました。議事録(minutes)も同時公表され、議論の中身まで読めます。
2026年 MPCカレンダー
MPCは年8回開催。うち2・5・8・11月の会合では、詳細な経済見通しをまとめた金融政策報告書(MPR)が公表されます。今回の決定は7月30日。次回は9月17日です。
決定は英国時間の正午に、議事録とあわせて公表されます。次回9月17日の会合では、海外発のインフレ上振れリスクと、落ち着きつつある国内物価という相反する材料を、委員会がどう判断するかが注目されます。反対票がさらに増えれば、利上げが一段と現実味を帯びます。
為替・市場への影響、用語ミニ解説
ポンドは主要通貨の一つで、BOEの金利はポンド相場を左右します。タカ派的な据え置きを受け、ポンドは対ドル・対ユーロで底堅く推移。英国の金利は主要国のなかで米国に次ぐ高さで、利回りを求める資金を引き寄せる一方、住宅ローン負担などの重荷にもなります。