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🇪🇺 ECB(欧州中央銀行) / 2026年7月会合・金融政策インフォグラフィック

ECB、金利を据え置き。 戦争の影響を見極める。

7月23日の理事会で、ECBは3つの主要金利を据え置きました(預金2.25%)。6月の約3年ぶりの利上げに続く一服で、イラン戦争がユーロ圏経済に及ぼす影響を見極める構えです。HICP(消費者物価)は6月に2.8%へ鈍化しました。図で読み解きます。

政策金利(預金ファシリティ金利)
0.00
2026年7月23日 決定
3金利を据え置き
6月利上げ後の一服(預金2.25%)
政策金利(預金ファシリティ)
2.25%
6/11利上げ→7/23に据え置き
物価目標
2.0%
HICPベース・対称的な目標
消費者物価(HICP・6月)
+2.8%
5月の3.2%から鈍化
サービスHICP(6月)
+3.2%
なお高めの粘着インフレ
01

利上げを一服 — 戦争の影響を見極める

THE HOLD

6月に約3年ぶりの利上げに踏み切ったECBは、7月23日の理事会で3つの主要金利をすべて据え置きました(預金ファシリティ2.25%)。連続利上げには進まず、いったん一服イラン戦争がユーロ圏経済とインフレに及ぼす影響を見極めるための「時間稼ぎ」の据え置きです。

追い風となったのが物価の落ち着きです。6月のHICP(消費者物価)は前年比+2.8%と、5月の+3.2%から鈍化。エネルギー価格の伸びも和らぎ始めました。ラガルド総裁は従来どおり、今後の決定は「会合ごとにデータに基づいて判断し、特定の金利経路にはコミットしない」と強調。物価上振れと成長下振れが同居する不確実性のなか、慎重に様子を見る姿勢です。

「データ次第」の姿勢: ECBは6月の利上げが一段落したことを確認しつつ、追加利上げにも利下げにも扉を閉じていません。新たなスタッフ経済見通しは9月10日の会合で公表されます。物価がさらに鈍化すれば利下げ再開の議論が、逆に戦争でエネルギーが再燃すれば追加利上げの議論が、それぞれ動き出す可能性があります。
02

マイナス金利から、4%の山、そして反転

POLICY RATE

ECBは長くマイナス金利(−0.50%)を続けていましたが、コロナ後のインフレに対し2022年7月から急ピッチで利上げ。預金金利は2023年9月に4.00%のピークに。その後8回の利下げで2.00%まで低下し、6月に約3年ぶりの利上げで2.25%へ反転。今回7月はこれを据え置きました。

預金ファシリティ金利の推移単位:%。−0.50%→4.00%→2.00%→2.25%、そして据え置き
出所:欧州中央銀行の政策決定より作成(2026年7月23日決定を反映)

わずか1年強でマイナス金利から4%超へ駆け上がり、その後ゆるやかに下りてきた金利が、6月に再び上を向きました。ECBは2.00%を「景気を熱しも冷やしもしない中立的な水準」とみており、物価の再加速を受けてその上へ一歩踏み出した形です。7月の据え置きは、その水準でいったん立ち止まり、情勢を見極める局面に入ったことを示します。

03

物価は2.8%へ鈍化 — でもまだ目標の上

INFLATION

6月のHICP(統一消費者物価)は前年比+2.8%と、5月の+3.2%から鈍化しました。エネルギー価格の伸びが+8.7%へ和らいだのが主因です。ただし、賃金を反映するサービス物価は+3.2%と依然高く、物価はなお目標2%を上回ったまま。ECBが据え置きで様子を見た背景です。

物価は目標2%からどれだけ離れているか単位:%/前年比。点線は目標2.0%(対称的)。6月分
出所:Eurostat/ECB(HICP, 2026年6月・速報)。目標はECBの公表値

物価は目標へ向けて少しずつ低下しつつありますが、サービスの粘り強さが残ります。ECBスタッフの見通し(6月時点)では、物価上昇率は2026年に3.0%、2027年に2.3%、2028年に2.0%へ低下する見込み。9月の会合で示される新たな見通しが、利下げ再開か追加利上げかを見極める次の手がかりになります。

04

ECBには「3つの政策金利」がある

THREE KEY RATES

日米の中央銀行が主に1つの金利を動かすのに対し、ECBは3つの主要金利を持ちます。なかでも、銀行がECBに資金を預けるときの「預金ファシリティ金利(2.25%)」が、いまの実質的な政策金利(市場金利を誘導する基準)です。

ECBの3つの主要金利(金利の回廊)単位:%。2026年7月時点(3金利は据え置き)。預金ファシリティが下限=実質の政策金利
出所:欧州中央銀行「Key ECB interest rates」(2026年7月時点)

限界貸付ファシリティ(2.65%)は銀行がECBから翌日物で借りるときの上限金利、主要リファイナンスオペ金利(2.40%)はその中間です。6月に0.25%引き上げたこの3つの金利を、7月は据え置きました。3つが市場金利の「天井・中間・床」をつくる回廊(コリドー)を形づくります。

05

誰が決める? — 政策理事会の「21票」

STRUCTURE

金融政策は、約6週間ごとに開かれる政策理事会で決まります。出席するのは27人——ECB本部の理事6人と、ユーロを導入する21か国の中銀総裁。ただし投票権は21票に限られ、総裁は毎月輪番で投票します(2026年1月にブルガリアが加わり21か国に)。

投票権「21票」の内訳理事6人(常に投票)+ 各国総裁から15人(毎月輪番)=21票
理事 6人(常任)各国総裁から 15人(毎月輪番)
出所:ECBの投票ルールにもとづき作成(概念図)
理事(ECB本部)6人=常に投票各国中銀総裁=15票を輪番で分担

総裁の輪番には経済規模に応じた重みがつきます。ドイツ・フランス・イタリア・スペイン・オランダの上位5か国は4票を、その他16か国は11票を、それぞれ毎月持ち回りで分け合います。全員が議論に参加し、決定は多くが全会一致に近い形(コンセンサス)で行われます。

06

2026年 政策理事会カレンダー

SCHEDULE

金融政策の理事会は年8回、約6週間ごとに開かれます。うち3・6・9・12月の会合では、ECBスタッフによる経済・物価の見通し(プロジェクション)が公表され、市場が特に注目します。直近は7月23日。次回は9月10日(見通し公表)です。

2月
5
据え置き
3月
19
据え置き見通し
4月
30
据え置き
6月
11
+0.25%利上げ見通し
直近
7月
23
据え置き
9月
10
次回見通し
10月
29
12月
17
年内最終見通し

決定は中央ヨーロッパ時間14時15分に発表され、14時45分から総裁の記者会見が行われます。9月10日の会合では新たなスタッフ経済見通しが公表されます。物価がさらに落ち着けば利下げ再開の議論が、逆に戦争でエネルギーが再燃すれば追加利上げの議論が、それぞれ動き出す可能性があります。

07

為替・市場への影響、用語ミニ解説

IMPACT & GLOSSARY

ユーロは、ドルに次ぐ世界第2の通貨。ECBの金利はユーロ相場を大きく左右します。今回の据え置きはほぼ織り込み済みで、ユーロ・ドルの反応は限定的でした。日本に対しては、ユーロ圏の金利が高くユーロ高・円安の地合いが続いています。

主要5中銀の政策金利(2026年7月時点)単位:%。米国はFF金利の中央値。日米欧の金利差が為替を動かす
出所:ECB・FRB・日銀・BOE・RBAの政策金利より作成
約6.3兆€
ユーロシステムの総資産。2022年の約8.8兆ユーロのピークから、量的引き締め(QT)で大きく縮小。APP・PEPPの償還で、資産は「測定可能で予測可能なペース」で減り続けています。
ユーロシステムの総資産の推移(四半期末)単位:兆ユーロ。2022年の約8.8兆ユーロのピーク後にQTで縮小
出所:欧州中央銀行 週次バランスシートより四半期末ベースで作成(概数)
20か国超が1つの金利を共有する——ECBは「多様な経済をひとつの政策でまとめる」難しさを抱える。
預金ファシリティ金利銀行がECBに翌日物で資金を預けるときの金利。現在のユーロ圏の実質的な政策金利で、市場金利の「床」となる。
HICP(統一消費者物価指数)ユーロ圏共通の物価指標。ECBはこの前年比上昇率を「2%」に保つことを目標にしている。
APP/PEPPECBの資産購入プログラム。APPは平時、PEPPはコロナ危機対応の国債等の買い入れ。これらの縮小が量的引き締め(QT)。
輪番投票・フラグメンテーション各国総裁が毎月持ち回りで投票する仕組み。財政の弱い国の金利が跳ねる「分断」リスクにはTPI等で対応する。
為替・金利の見方: 利上げや「タカ派」的な情報は、一般にユーロ高・域内金利上昇の材料。ただし実際の相場は米欧金利差・地政学・他指標で決まります。本ページは教育目的の解説で、投資助言ではありません。